今回は暗号資産取引所であるバイナンス取引所で信用取引(Margin Trading、本文中ではマージン取引、マージン口座という表現)を使って暗号資産を売買する方法、言い換えると自らの資金を担保にお金を借りて売買する方法を解説していきたいと思います。
大まかな説明として、現在バイナンスでは「3倍」か「5倍」の信用取引が可能となっており、例えば1BTCを持っていたとすると、3倍の信用取引の場合2BTC分を借金して合計3BTCのポジションを持てる、5倍の信用取引の場合4BTC分の借金をして5BTC分のポジションを持てることとなり、利益を最大化、または、他のポジションのリスクをヘッジ/回避するような手法として用いられます。
※メモ:信用取引(Margin Trading)と先物取引(Futures Trading)は少し似ていますね。信用取引がお金を借りて取引をする(レバレッジ倍率は3~5倍)のに対して、先物取引は差金決済で取引をするため価格差からの損益のみの支払い/受け取りとなるため少額でレバレッジをかけてポジションを持てる(レバレッジ倍率は最大125倍)ということになります。
目次
バイナンス信用取引(マージン取引)の紹介
マージン取引口座の開設方法
マージンウォレット(Margin Wallet)の紹介
マージン取引ページの紹介
マージン口座の各種履歴(注文、取引、借り入れ、清算 etc)
ロングとショートの違い
マージンレベル(Margin Level、証拠金水準)の計算
信用取引(マージン取引、Margin Trading)は信頼できる第三者からお金を借りることで自己資金にレバレッジをかけて取引できる手法です。そうすることで投資家は保有ポジションを大きくすることができます。
自己のポジションを大きくすることで得ることができる利益を大きくできる一方、自分が考えている方向とは逆の方向に価格が動いた際には大きな損失が出ることに注意が必要です。
3倍、5倍の信用取引が可能ですが、特に5倍の信用取引では最大の借金額が1BTCまでと制限がかかっているようです。通常3倍に設定していただき、ここぞというときに5倍に設定していただくのが違和感ないかと思います。
ここからはバイナンス取引所の表現に合わせて信用取引を「マージン取引」として説明させていただきます。信用口座はマージン口座・マージンウォレットと呼ばせていただきます。
マージン取引を始めるにはバイナンスに登録済みのアカウントから
1. 右上の「Wallet」ボタンから「Margin Wallet(マージン・ウォレット)」を選択
2. 中央のボタンから「Open margin account」を押してマージン口座を開設する
必要があります。また、マージン口座開設には2段階認証(Google2段階認証ツール、またはSMS)を済ませている必要があります。
簡単な事例を通してマージン・ウォレットを紹介していきたいと思います。
以下では、本記事作成のためにBTCを0.012単位保有、3倍レバ取引で最大限XTZを買ってみた(BTCを担保にUSDTを借りてXTZを購入)という場合のウォレットの表示例となります。
①左側のMargin Wallet(マージンウォレット)が選択されていることを確認してください。
②ページ上部では総資産とレバ倍率=3倍と表示されています。
・総資産/Total Balance…合計保有資産
(=0.012BTC+0.024BTC分のXTZ±損益)
・総負債/Total Debt…借金額
(=0.024BTC分のUSDT)
・自己資本/Account Equity…総資産-総負債
(=0.012BTC̟±損益)
・損益/Profit and Loss(PnL)…USDT建ての含み損益。デフォルトで過去1日分の損益を表示
③ページの右側ではマージンレベルが表示されていますが、マージンレベルの計算式は以下の通りとなり、次項で詳しく説明します。
マージンレベル=総資産/総負債+利息
(マージンレベル=(0.012+0.024)/0.024=1.5倍が3倍レバ取引で最大限レバ取引をした場合の初期マージンレベルで、ここに含み損益と利息が含まれて計算されます)
④ページ下部では「Funds」および「Positions」として保有しているすべてのポジションおよび借金をして買っている資産の詳細が表示されます。
「Funds」…ここではBTC1単位を担保にUSDTを2単位借りて同額分XTZを買っていますので、BTC及びXTZがプラスの値(資産)、USDTがマイナスの値(負債)と表示されています。
「Positions」…借金をしているUSDTとXTZの現在の価格と清算価格(Liquidation Price)までの値幅%を表示しています。この事例では-45%下がったら強制清算となりますでしょうか。
また、このページで「利息をBNBで払う(Using BNB for Interest)」というボタンがありますが、クリックすると利息が5%割引きされます(BNBをマージンウォレットに保有しておく必要があります)。
マージン取引を行うにはマージンセクションを選択する必要があります。
以下の通り通常の取引画面から「M」と記載のある箇所をクリックしてください。
取引画面は以下の通りとなっています。確認時点で4種類の注文方法があるようですね。②~⑤の注文方法を押さえてしまいましょう。またこの画面から直接売買することで自動借り入れ、返済を行うことができます。
①「マージン取引」での注文
②「指値(リミットオーダー)」一定の価格と数量を決めて発注します。
③「成行(マーケットオーダー)」価格は決めずにすでに板に出ている注文から自分の注文を約定させます。
④「OCO」2つの注文を同時に出しておいて、どちらかが成立したら、どちらかをキャンセルするという注文です。すでに買いポジションを持っている場合は高値で売り注文を出しておく(利確)いっぽうで、ある程度下がったら(ストップ価格にヒットしたら)ストップ価格より下の値段で売り注文を発注する(損切り注文を履行する)という形で利確を狙いつつ損を最小限に抑えるような形で使えます。
⑤「逆指値(ストップリミットオーダー)」一定の価格にヒットしたら(ストップ価格にタッチしたら)、指値注文(リミットオーダー)を発注する注文手法です。
手数料は現物の場合と同様で約定代金に対して 0.1% となります。
BNBを使って手数料を払う場合は割引などがありますが詳しくは手数料一覧表をご参照ください。
また、マージン取引を行う際は、
「Borrow」ボタンから借り入れ
「Repay」ボタンから返済
を行います。特に返済を行う際は自分がどの通貨を借りているかを意識しながら返済しないと借金が返済されませんので、マージンウォレットを注意深く見ながら、借りている通貨と対象となる取引ペアを意識して売買してください。
(マージンウォレットからRepay/返済ボタンを探して返済するのもありです🙆)
マージン取引の各種履歴を確認するにはページ上部から「Margin Order(マージンオーダー)」ボタンをクリックします
⑥オープンオーダー/Open Orders 未約定の注文一覧
⑦注文履歴/Order History 注文履歴。3か月単位でしか閲覧不可
⑧取引履歴/Trade History 実際に約定した取引履歴。 3か月単位でしか閲覧不可
⑨借入履歴/Borrowing 借り入れ履歴
⑩返済履歴/Repayment 借り入れの返済履歴
⑪資金移動/Transfers 主に現物口座とマージン口座での資金の移動履歴
⑫利息/Interest 利息履歴。1時間毎にどの程度利息が発生したか表示されます
⑬マージンコール/Margin Calls マージンコール=追証通知の履歴
⑭強制清算/Liquidation History 強制清算の履歴
大部分の人はわかっているかもしれませんが、ロングとショートという言葉について説明しておきます。現物取引の場合は単純に買いから入って、売るしかないので買いと売りという言葉で問題ありませんが、信用取引の場合は売りからポジションを持つことも可能なのでロング/ショートという言葉が使われます。
ロングは上がると思っているトークン以外のトークンを借りて、上がると思っているトークンを購入。その後トークンの価値が上がった場合トークンを売却してローンを返済することで利益が出ます。
例:1BTC持っている場合、さらに2BTC分のポジションを持ちたい
➡1BTCを担保に2BTC分のUSDTを借りてBTCを購入。3BTCのポジションになり、その後BTCの価値が上がった場合にBTCを売却してUSDTを返済。
ショートは下がると思っているトークンを借りて売ります。そうすることでトークンの価値が下がった場合に利益を出すことができ、買い戻し&借りたトークンを返済することで利益が出ます
例:1BTC持ってる場合、2BTCの価値分のXRPのショートしたい。この時のXRPの値段は0.00002XRP/BTC。10万XRPをショート。
➡XRPが下がると思っているので1BTCを担保に2BTC分の10万XRPを借りて売却、後々XRPの価値が下がった時に10万XRPを買戻せば利益。
最後に、マージンレベル(証拠金水準)の話をしておきます。
各マージンレベルにおいてできることできないこと、マージンコール(追証通知)、ポジション強制清算などが発生するので注意が必要です。公式としては以下の通りで計算されます。
そしてこの公式に基づいて以下の図のようにマージンレベルがシステム的に計算され、ウォレット画面で表示されます。視覚的には緑色が安全、黄色が注意、赤がやばいレベルと覚えてください笑
特に単純な事例として、3倍レバの場合、1BTCを持っていて2BTC分を借り入れて他の資産を購入した場合、マージンレベル=3BTC/2BTC=1.5がマージンレベルのスタート地点となります。お金が増えていけば数値は上がっていくし、お金が減っていくと数値が下がっていきます。
マージンレベル>2
取引、追加借り入れ、資産の他ウォレットへの転送(トランスファー)可能
1.5 <マージンレベル≦2
取引および追加借り入れはできますが、マージンウォレットから他ウォレットに資金を移動(トランスファー)することはできません
1.3 <マージンレベル≦1.5
取引はできますが、追加で借りることはできず、マージンウォレットから現物ウォレットに資金を移動することもできません
1.1 <マージンレベル≦1.3
システムがマージンコール(追証通知)を発動し、メール、通知欄において、追加で証拠金を差し入れるよう連絡をとります
マージンレベル≦1.1以下
システムは強制清算エンジンを発動し、メール、通知欄での連絡を通じて、すべての資産が清算されて利息とローンが返済されることを通知します
(*クロスマージンモードと独立マージンモードがありますが、クロスマージンモードの場合対象となるすべての資産の清算、独立マージンモードの場合その資産に関連する資産・負債・利息のみが清算されます)
以下ではマージンレベルの簡単な事例を紹介したいと思います。
1.ロングする事例
BTC建てでBNBが上がると予想して、上がった場合、予想に反して下がった場合の各マージンレベルと各マージンレベルでどんなことが起こるのか(マージンコール、強制清算)、また最終的な損益を表しました。なお、利息はここでは考慮していません。
2.ショートする事例
BTC建てでXRPが下がると予想して、下がった場合、予想に反して上がった場合の各マージンレベルと各マージンレベルでどんなことが起こるのか(マージンコール、強制清算)、また最終的な損益を表しました。なお、利息はここでは考慮していません。
上記ではレバレッジ比率3倍の事例をメインに取り上げましたが、レバ倍率5倍になると各マージンレベル(証拠金水準)で発生するイベントが違ってきますので、注意が必要です。
マージンレベル>2
取引、追加借り入れ、資産の他ウォレットへの転送(トランスファー)可能
1.25 <マージンレベル≦2
取引および追加借り入れはできますが、マージンウォレットから他ウォレットに資金を移動(トランスファー)することはできません
1.15 <マージンレベル≦1.25
取引はできますが、追加で借りることはできず、マージンウォレットから現物ウォレットに資金を移動することもできません
1.05 <マージンレベル≦1.15
システムがマージンコール(追証通知)を発動し、メール、通知欄において、追加で証拠金を差し入れるよう連絡をとります
マージンレベル≦1.05以下
システムは強制清算エンジンを発動し、メール、通知欄での連絡を通じて、すべての資産が清算されて利息とローンが返済されることを通知します
以上でマージンレベル(証拠金水準)の話は終わりです!!
マージンデータとして借り入れ可能な資産、対応取引ペア、年間利息、クロスマージンの場合の限界借入額、独立マージンモードに対応している資産、価格インデックスはマージンデータ(こちら)で確認できます。
マージン口座の損益履歴として過去の損益をグラフで確認する機能は取引分析(こちら)をご利用ください。
いかがでしたでしょうか。
また感想、ご不明な点などあれば追記などさせていただければと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。