ーどうして山に登るんですか?どうして電子ゴミを集めてるんですか?どうして偉くなりたいんですか?どうして起業するんですか?どうして恋をするんですか?どうして男と寝るんですか?どうして御朱印なんか集めてるんですか?
ー何かに取り憑かれた人に、上記のような心無い質問をぶつけたことはありますか?あるでしょうね。お前も人間だもんな。あのな、山がな、そこに山があるんや。あのなボウズ、まだわからんやろけどなあ、女は海や、そして山でもある。ふたつの山と、暗い茂みの先に深い深い谷があるんや。魔の山。おぼえときなよ。ワークアウトは自己破壊、男と女は魔の山を反対方向から登って降りる。
ーで、たまにいるじゃないですか、スタンプラリーみたいに男の子と寝る女。小さい子がさ、浜松町まできてて、小さい子がこんなとこくるなよ。何のため?って、ポケモンのスタンプラリーなんだってさ。わざわざ浜松町で降りて、すごい微妙なポケモンのスタンプ押してんの。すごいうれしそうに。なんだっけ、ブーバー?話逸れちゃった。具体的には終電過ぎた新宿のゴールデン街にいます。どうして?男をとっかえひっかえするのって不衛生じゃない?人んちに泊まるのいやじゃない?新宿のラブホって高くない?関係ないか。
ーあのね、寂しいわけじゃなくて、人肌が恋しいわけでもなくて。世の中の男の数だけ一晩で完結するひとつひとつ別の夜があるとしたら、それってアラジンの、アラジンだっけ?アラビアの、千夜一夜物語みたいじゃない?わたしが悪い王様で、裸にさせて、男の子から一晩のストーリーを聞いて、つまらなかったら捨てるの。その男の子とは、LINEは登録するけど次の日の朝タリーズかミスドでコーヒー飲んでバイバイしたあとブロックしちゃう。1回きりでよくて、2回目は会いたくなくて。だって2回目会うときは知ってるひとだし、知ってる人の前で裸になるのはナンセンスだよ。多分なんだけど、これは比喩なんだけど、その一晩で、わたしの心の御朱印帖にポンとその子のスタンプを押したことになるの。その夜のことは忘れちゃうかもしれないけど、もしかしたら男の子のスタンプを1000個集めたら神様がわたしを赦しくれて、出来損ないのわたしを人間にしてくれるかもしれないって思ってるの。不思議の国のアリスだっけ?ちがう、オズの魔法使いか。心がないロボットがいたでしょう?あの子はいいよね、魔法使いのところにいけば心がもらえて。今ってもう平成じゃない。心をもらう方法がそれしかわからないの。だからだと思う。あなたは生まれた時から心を持ってた?わたしにはそれがなかったから、だから男の子のスタンプを集めてるんだよ。男の子そのものに興味?みんないい人だし、怖い人もいるけど、わからないな。ポケモンだって色んな種類がいるじゃん。今って何匹いるの?500くらい?えっ、800…。
ー今?わたしの御朱印帖?うーん、どれくらい埋まったんだろ、わからないけど、今夜で最後になるといいなって、毎回祈ってるかも。