経済を地理学の観点から掘り下げた面白い本。地理学には自然地理学(気候、地形、川、海など)、人文地理学(政治、宗教、文化、人口動態など)の2種類ある。本書では各国の資源や時事問題に触れて簡潔に説明されており読みやすい。
筆者は所々歴史に触れて国の情勢を述懐することがあり、歴史が地理と密接につながっていることを説いている。タテ(歴史や将来といった時間軸)とヨコ(国内と世界の変化や潮流)の世界観で物事を考えることの重要性について改めて感じた。
石油資源や鉱石資源といった、現代の工業に欠かせない資源を紹介することが多い。筆者曰く、輸入量が石油と鉱石の輸出量が多い国は先進国または発展している傾向にあるらしく、その理由として原料を加工して付加価値の高い製品に変換して輸出し高く売るためだと述べている。つまり技術力の高さを表している。
意外だったことが、各国の発電方式。例えば、ブラジルは年間降水雨量が世界平均より高く山も多いため、高低差を利用した水力発電がブラジル全体の発電量の90%を超えている。
また、アイルランドは火山地帯であり地熱発電と水力発電(どういう原理で活発なのか忘れた)でほとんどの電力を国内で供給できていることに驚いた。
本書のすごい点はまだある。アフリカ諸国の一部について言及されているからだ。ダイアモンドや白金族関係の記述が散見される。ここで中国の台頭がある。中国はアフリカの経済成長や政治に関心を寄せ、数々のアフリカ諸国に投資し、外交上味方に付ける作戦でもある。事実アフリカ諸国で台湾を中国の領土として認めていない国はアフリカで2カ国だけらしい。中国はしたたかだ。
また筆者は内戦が起こらず、銅資源が豊かなザンビアが投資に向いているため、おすすめされていた。本書の第一版が2017年なので、流石に古い情報だと思うが。
また日本の人口について記述がある。これから日本は確実に少子高齢化が進んでいく。先に少子化が加速し、ゆっくりと高齢化が進行するメカニズムらしい。人口は生産力を表す代表的かつ単純な指標になる。また日本は貿易依存度が15%であり、裏を返せば85%は内需依存型である。国内需要と人口増加で経済成長を遂げた。
人口減少を考え国内生産も減るとなると、日本の将来は国外労働者が増えるだろう。まあミクロな視点で自分の身近ではそんな変化はないのだが。いずれパラダイムシフトが起きるだろう。
総じて、自分の知らないことがいっぱいあり、経済と地理の密接な関係がとても面白かった。たくさん書くと長引くのでここまでとする。
学生時代に地理の授業をダラダラ受けるより、この本を渡された方が地理に興味を持てていた。