今日は比較的真面目な記事です。
昨年12月のクリスペAMAに関して、事前に以下のような質問をしました。
現在クリスペは、運営の工数を削減し、ユーザー側に運営を委ねていくいわゆる「DAO化」を目指していく経営方針ないし運営方針だと認識しています。ただ、システムを前提とするBCGである以上、運営がなにもしないというのも理論的に不可能だと思われます。
そこで質問ですが、運営の考えるゴールとしての「DAO化」とは、運営の役割がどの範囲で、ユーザーに委譲された範囲がどの範囲である状態のことをいうのでしょうか。また、その状態を実現するために、今どのような段階にあり、今後どのような段階を経ていくことを計画されているでしょうか。
こうしたビジョンが明確に示されれば、シルバー発行権の廃止やギルドリーグの廃止などの個々のパーツについても説得力が出てくると思いますのでお伺いしています。
これに対し、AMAでは以下のような回答がなされました。
「DAO化の方針なんですけど、運営の役割っていうのは、ゲームがプレイできる状態を保つこと、ですね。つまりどういうことかというと、常に、まあ例えると息をし続けている状況、死なないようにすることですね。運営のやる範囲っていうのは、たとえばサーバーのメンテナンスだったり、不正アクセスだったりの対処とか、コラボだったりするんですが、などの運営にしかできないことが、運営の範囲、役割であると考えています。対してユーザーのほうの役割ですけど、クリスペの価値を高めていくと言うことでして、例えばユーザーの側でできることはというと、今回新しく発表させていただいたカードの環境の調整だったり、新規の施策などの提案をしていただいたりだとか、クリスペスキャンみたいなツールの開発だったり、クリスペNFTを活用した新たなコンテンツの開発だったり、二次創作というのが最近ちょっといろいろクリスペしてる方でも見られるようになってきたんですけど、こういう二次創作によるクリスペの世界観の拡大をしていただくことによって、クリスペの価値を高めていく、そのホルダー、自分の持っているカードの価値を高めるという意味でもしていただきたいなと。運営の役割の中にもコラボがありますので、こちらの方もクリスペの価値を高めることに繋がると思っています。運営は運営のできる、運営にしかできないことでクリスペの価値を高めています。ユーザーはユーザーでできることでクリスペの価値を高めていっていただけたらなと思っております」
※ ソースとなるAMAの録音は、しゅーあいすさんのこちらの動画から!!
さて、以下の記事は、僕が質問した意図と現時点での僕の見解を示すものです。
何回かに分けて書こうと思います。
上記運営からの回答は、極めて限られたAMAの時間内に回答するということを考えればやむを得ないものだと思いましたし、むしろ方向性としては、個人的には好意的に受け止められるものでした。したがって、以下の記事は上記運営の回答を批判する主旨ではないことをまずはじめに断っておきます。
クリスペの運営は「DAO化」を目指していると宣言されています。
さて、そもそも「DAO」とは「Decentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)」の略であり、中央集権的な権力機関を持たず、一元化されたリーダーシップのないメンバー所有のコミュニティをいうものとされています。
この方向性自体は、後述するとおり、私自身の自由主義的な政治信条とも相まって、私にとって非常に魅力的なものに思えています。他方で、デジタルカードゲームという性質上、ビットコインのような純粋な意味での「DAO」の実現は不可能なように思え、きちんとクリスペにおける「DAO化」を定義しておかないと、個々の施策が目指すものが明確にならない(その結果、ユーザーの信頼を失う)と思われました。そこで、「DAO化」とは、運営がいかなる役割を発揮し、ユーザーがいかなる役割を発揮するのかはきちんと定義しておかなければならないと考えました。
また、この間、「DAO化」を指向したものと思われる、工数削減を主要な目的とした政策が進められており、得心のいくものからそうでないものもあったので、どういう姿を思い描いているのかを尋ねたくて、上記の質問をしました。
さて、本題に移る前に、そもそも運営の「DAO化」の方針自体についてから、議論の余地があるかも知れません。「DAO化」を定義する前に論理的な順番が適切でないかも知れませんが、まずはそのことについて述べておきたいと思います。
私自身は、運営の権限や工数を縮小して、ユーザー主体のコミュニティを作っていく方向性それ自体には、大賛成です。
理由は分解すればいくつかに分けることができますが、一言でいえば「中央集権は非効率的だ」というところにあります。これは私自身の自由主義的な政治信条によるところは大きいですので異論は覚悟した上で、簡潔な意見表明を試みます。
まず、中央集権の無駄です。中央に権力が集中すればするほど、中央にかかるコスト(主に人件費)は増大します。人件費を負担するのは市民ないしクリスペの文脈で言えば会社ですが、(ここではアセット発行の経済的意義というような各論的な問題はさておいて)要するに同じパイを食い合う関係だと仮定すると、運営側が食うパイの量が相対的に増大する一方では、市民が食えるパイの量は減っていきます。必要以上のことを、運営側がコストをかけて行う必要はありません。
もう一つは、市民の力です。中央にいる何人かのメンバーが考えることより、大勢の市民が格別に、あるいは知恵を出し合ってある程度集団的に、考えて実行されることの集合の方が優れているだろうということです。優れているというよりも正統性というほうが的確なのかも知れませんが、市民が自由を行使する範囲が大きいということは望ましいことです。
もちろんこれらはバランスの問題です。我々が委託した政府が完璧な仕事をこなし、我々がいくら集まってもなしえない功績を成し遂げることができるような理想的な政府が想定できるのならば、中央集権は魅力的です。ですから、それがどの程度期待できるかによって、中央集権が良いかどうかは格別の場面によって違ってくるという議論はあり得そうです。
しかし、我々はそこに期待できるでしょうか。
私は、世界においても、そしてこのゲームにおいてもそんなことは到底期待できないと思ってしまっているため、この記事を書いているということになります。
上述したAMAでの答えを、シンプルに切り取ると「運営にしかできないことが運営の役割」「ユーザーの役割はクリスペの価値を高めていくこと」ということでした。
私は、この答えにとても共感を持ちました。
「運営にしかできないことが運営の役割」というのは、要するに、運営の守備範囲を最小限にしようということの明言だからです。DAO化否定派とは意見が違うと思いますが、この方向性は、前述のとおり、私は賛成です。
同時に、この答えは、「DAO化」を目指すのであれば当たり前すぎる答えであって、問題の本質はその内実であろうという感想を持ちました。
要するに、「DAO化」を目指すのであれば運営にしかできないことが運営の役割であることは当然であって、「運営にしかできないこと」がどの範囲であるかが本質的な問題であろうということです。
私の質問は、どの範囲が「運営にしかできないこと」であると考えており、どの範囲がユーザーに移譲されたことなのかを問うものであったと言い換えても良いと思います。そこを具体的に言語化できない限りは、個々の政策が右往左往してしまいかねません。
ゴールがはっきりすれば、そのゴールをいつ達成するのかから遡って、いつまでにこれを達成して、そのためにどの程度の時間的コストがかかるから、このくらいの労力をここに割いて・・・とやるべきことが見えてくる上、かつ、それが目標に向かって一貫したものになるはずです。もしゴールがあまりにも先にありすぎるならば、道しるべのような中間目標を設定すればそれの積み重ねで同じようにできるはずです。
こうしたゴールとこれに向けた道のりがしっかりと定まっていれば、現在の立ち位置を確認することができるはずです。僕が「その状態(DAO化のこと)を実現するために、今どのような段階にあり、今後どのような段階を経ていくことを計画されているでしょうか」と聞いたのは、その趣旨です。
隠しもせずにいえば、クリプトスペルズ運営チームが、このあたりの目標を明確に持った上で各施策を実行しているのか正直疑問に思うことがありました。やっていることが付け焼き刃的に見えることもありましたし、(工数を下げたい意向は伝わってきますが)どう優先順位を立ててやっているのかもよくわからず、「ロードマップ」なるものが開示されても近視眼的なパーツの紹介であるなど、一貫した説得力を感じていませんでした。ですから、この質問をさせていただいた次第です(繰り返しますがAMAの短い時間でこれに答えることは不可能ですので、質問への回答を批判する趣旨ではありません。また、もしきちんと意識して実行されているのならば、大変申し訳なく思います)。
もしも運営がこの投稿をちらっとでも見ていて、共感してくださるなら、どこかでこういう話をお伺いしたいなと思っています。
というわけで、なぜ自分がこの質問をしたかの背景にこれだけの紙面を使ってしまいましたので、今日はこのあたりで筆を休めたいと思います。
ここまでは抽象的な話になってしまいましたが、
パート②で「DAO化」のゴールはどこにあるべきかという僕自身の意見
パート③で、②を踏まえた現在の施策の個人的評価
について述べようと思っています。書く時間があれば。。。