こんにちは、「世界一簡単なカードゲーム販売の教科書」著者、後藤寛です。
NTFが一気に流行り始めた事で、クリスペプレーヤーが最近増えてきています。
その証拠に「クリスペ」とTwitterで検索すると始めましたツイートがたくさん出てきます。
ただ同時に、クリスペ引退をツイートする人も結構います。
理由はいろいろあるかと思いますが、その理由の一つに「自分のデッキで全然勝てない」事があります。
現在クリスペは強いデッキが固定されがちで、環境トップを取れるデッキタイプだと1~3強くらいのイメージです。
特に今だと青デッキがかなり強い状態です。
またレジェンドカードの圧倒的な強さもあり、レアカードがないとなかなか勝てないゲームでもあります。
対戦に勝てないと面白くない=引退しようと考えるのはゲームとして仕方ない事です。
ただ、元カードショップ店長かつ15年以上のTCGプレーヤーである私からみると、クリスペは全然面白く今後伸びる可能性の高いDCGです。
また環境の問題も公式やプレーヤーの努力で改善していくと確信しています。
今回の記事では遊戯王・デュエマの初期・暗黒期を直接見てきた私が、現状のクリスペ環境と今後について考察していきます。
私は22歳の頃に遊戯王の魅力に取りつかれ、カードに関わる仕事をしたくて静岡から上京してカードショップに勤め始めました。
貯金300万円を溶かしつつ3年の下積みを経て社員になり、カードショップの店長を数年勤めました。
現在は独立して物販(カードショップではない)を行つつ、リアルTCGプレーヤーとして遊戯王・デュエマ・ポケカなどプレイしています。
トレカ好きが高じて2020年にカードゲーム販売の書籍も出版しました。
Amazonランキングで1位取りました^^
私がカードショップに勤め始めた2005年頃は、
・遊戯王は1キルデッキ連発でじゃんけんゲーム状態
・デュエマは不死鳥編の不調でシングル取りやめを検討するほどの暗黒期
・ポケカはパック販売のみで、シングル取り扱い店舗は少ない
・ムシキング、ガッシュベルカードゲームは終了直前
と、現在のトレカバブルが信じられないほどヤバイ状態でした。
なぜこの話をしたのかというと、現在のクリスペ引退を考えている人が増えている理由が、当時のTCGの状況とちょっと似ているからです。
今がTCG全盛期と言っていいほど盛り上がっているので、クリスペも現状を超えて一気にも盛り上げる可能性が十分あります。
実は現在のクリスペ環境は、2006年前後のデュエマ環境に似ています。
当時のデュエマは青単(青文明単体デッキ)が非常に強く、その理由はドローカードの豊富さと進化クリーチャーの速攻がえげつないほどかみ合っていたからです。
その代表カードが「アストラル・リーフ」です。
アストラル・リーフ VR 水文明 (2)
進化クリーチャー:サイバー・ウイルス 4000
進化:サイバー・ウイルス1体の上に置く。
このクリーチャーが出た時、カードを3枚引いてもよい。
進化クリーチャーは特定のクリーチャーの上に重ねて出せる代わりに召喚時すぐ攻撃できるカードです。
クリスペに変換すると以下のテキストになります。
コスト2
4/4
ビースト
速攻
召喚時:自分の場のビースト一体をこのカードに変化させる。
このクリーチャーが場に出た時、カードを3枚引いても良い
どうです?
DDT(誰がどう見てもぶっ壊れ)ですよね?
コスト2でパワー4の速攻持ちなだけでも厄介なのに、3枚ドロー効果までついてます。
ここに青文明の豊富なドローカードやバウンスカードの存在が加わったことで、デュエマは青単一強と言ってもいい地獄の環境が生まれました。
TCGの開祖であるMTG(マジック・ザ・ギャザリング)からの伝統で、青は以下の要素が強い文明です。
・ドロー
・バウンス(場のカードを手札に戻す)
・前衛(ブロッカー)が多い
・高守備力
クリスペも例に漏れず、上記と同じ特徴を持っています。
青デッキ(というか青文明)が強くなる理由として、上記の特徴の中でも特にドローがカードゲームのシステム的な強さと直結しているからです。
カードゲームは手札を消費して展開するゲームなので「手札の多さ=強さ」となります。
そのため、ドローカードで手札が増えやすい青文明は常に安定した実力を維持できます。
青文明はその分パワーが小さかったり除去カードの少なさでバランスをとっているのですが、逆を言えばそういったカードが多くなると青は手の付けられない強さを発揮します。
そして青文明がまさにその「手の付けられない」状態になり始めています。
青文明のゴールドカードには、青文明なのに他文明に近い効果を持つカードが多数存在します。
それらのシナジーが非常に高く、攻防共にレベルが高いデッキとなっています。
その中の3枚を例として紹介します。
青
コスト3
3/3
種族 フェアリー
速攻
ターン終了時:このユニットを手札に戻す
3コストでパワー3を持つ速攻ユニットです。
ターン終了時に手札に戻るデメリットを持っているのですが、実際は場に残らないので破壊されないメリット能力になってしまっています。
クリスペには相手ターンで妨害できるカードやハンデス(手札を捨てさせる)カードがほとんどないため、トリトンを破壊できる手段がほぼありません。
前衛持ちで防ごうにもタフネスが3と高く、トリトンでこちらの前衛持ちを倒されて手札に戻られ、タフネス回復される事態になります。
速攻持ちユニットの中でも屈指の安定性を持つカードと言えます。
青文明
コスト4
スペル
攻撃力5以下の相手ユニット1体を破壊してその体力に等しい値味方リーダーを回復する
攻撃力5以下のユニットを破壊してその体力分リーダーを回復させるカードです。
このカードで前衛もちユニットはほぼ除去できるので「トリトン」との相性も抜群。
さらに回復能力もあるので、こちらが速攻でLPを削ってもこのカードで回復されてジリ貧というのはよくある展開です。
青文明自体が前衛が多く長期戦になりがちなので、最後の一押しをこのカードで妨害されたことが何度もあります(泣)。
青文明
コスト6
6/6
種族 ソルジャー
ターン終了時:他の全てのユニットを−3/−0する
このユニットが場にある限り、他のすべてのユニットはターン終了時パワーが3下がります。
低コスト大量展開をメインとするデッキの場合、「フローズンスピア」を出された瞬間に機能停止状態に陥ります。
全体デバフのため自分のユニットも対象になりますが、6/6あるこのカードで殴れば問題ありません。
タフネス6なので除去も困難で、白天使や緑ビーストのような大量展開+パワーアップカードで攻めるデッキには天敵中の天敵です。
なお「フローズンスピア」が2体いる場合はお互いが効果対象になるため、毎ターン「フローズンスピア」はー3、他はー6下がります。
私は相手に上記の状態にされてお互い攻撃も展開もできず、相手のデッキ切れで勝利するという世紀の凡戦をしたことがあります。
青デッキのもう一つの強みとして相手のデッキ枚数を0にして勝利する、いわゆるデッキデス(デッキ破壊)ができる点です。
クリスペではデッキ枚数が0になると自動的に敗北するため、「ハンプティ・ダンプティ」などの相手にドローさせるカードを連発して相手のデッキを0にする戦術が取れます。
青文明
コスト1
1/6
種族 魔法使い
召喚時:相手はカードを3枚引く
召喚時に相手にカードを3枚引かせるカードです。
この効果自体はデメリットでしかないですが、他の相手にドローさせるカードと合わせて加速度的に相手のデッキを削れます。
さらに「ドライブリコール」などの自分ユニットをバウンスするカードを合わせ、さらにドロー加速させて勝負を決めます。
青文明
コスト2
スペル
味方ユニット1体を手札に戻す
現在クリスペには墓地のカードをデッキに戻すカードがなく、デッキデスより早く相手を倒す以外の手がないのが現状です。
デッキデスは立派な戦術ですが、対戦相手にとってはストレスが溜まる負け方でもあり、ゲームへのモチベーションが下がるのも事実です。
実際デュエマでデッキデスが環境を席巻し、引退者も増える事態になりました。
この対処は簡単で、デッキを回復する汎用性の高いカードを開発すればOKです。
デュエマでは「悠久を統べる者 フォーエバー・プリンセス」など、墓地のカードを全てデッキに戻す効果を持つカードが登場して沈静化しました。
悠久を統べる者 フォーエバー・プリンセス
火/自然文明 (8)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター/エイリアン
8000
スピードアタッカー
W・ブレイカー
相手がコストを支払わずにクリーチャーを出した時、そのクリーチャーを持ち主のマナゾーンに置く。
このクリーチャーがどこからでも自分の墓地に置かれる時、かわりにこのクリーチャーと自分の墓地を山札に加えてシャッフルする。
全てのデッキに入るカードではないですが、「対策カードがある」というだけで大会上位になる事が難しくなりました。
結果デッキデスは「ハマると強いが対策カードがあると勝つのは絶望的」な地雷デッキになり、いい感じに落ち着きました。
クリスペでも上記のようなカードが出れば地雷デッキの一角に落ち着くでしょう。
カードゲームにおいて上位デッキが固定されると以下の問題が起きます。
・既存プレイヤーのカード離れ
・新規プレイヤーが付いていけずやめてしまう
・ゲーム自体存続の危機に
一つづつ解説します。
特定のデッキやカードでしか勝てなくなるため、本来ファンであるプレイヤーも離れてしまいます。
例えば青1強の環境になってしまうと他の文明を好きで使っているプレイヤーはなかなか勝つことができず、最終的に引退するでしょう。
どれだけそのカードゲームが好きであっても、勝てなければ続ける意欲がなくなりからです。
最初はカードゲームに興味を持って始めた新規プレーヤーも、やがて特定のデッキやカードがないと勝てない事実に気づきます。
新規プレーヤーは既存プレーヤーほどそのゲームに愛着がないので止めるのも早いです。
現在は娯楽がたくさんあり、離れる決断も早くなっているので重大な損失といえます。
既存・新規プレーヤーが離れればゲーム自体に勢いがなくなって売上も落ち、最終的に待っているのはゲームのサービス終了という最悪の事態です。
クリスペはプレーヤーも増えているしゲームとして面白いので当分心配ありませんが、今後環境が固定され続けるとそうなる可能性も考えられます。
「そんな事ありえない」と考えているかもしれませんが、実は2006年のデュエル・マスターズがその自体に直面していました。
日本TCG界のトップ3に君臨し続けている「デュエル・マスターズ」ですが、2006年にはシングル取り扱い終了を考えるほどの暗黒期を迎えていました。
理由は「不死鳥編」と呼ばれる新シリーズが不調で売上が下がった事と、既存プレーヤーと新規プレーヤーのカード資産の格差が開きすぎたことが原因です。
「不死鳥編」はデュエマ20年以上の歴史でも類を見ないほど収録されているカードパワーが低く、買っても強いデッキにならないものばかりでした。
パックを買う理由がなく、不死鳥編は現在でもシリーズ最低売上記録を更新中です。
さらに当時はまだTCG市場が発展途上だった事もあり、強力・人気カードの再録が全然されない状態。
そのため昔のカードを持っている既存プレーヤーが圧倒的に強く、新規プレーヤーは全く勝てないためすぐやめてしまう悪循環に陥っていました。
結果パックもシングルカードも全く売れず、メーカー・カードショップ・プレーヤー全員が頭を抱えるお通夜状態だったのを記憶しています。
TCGとDCGは販売方法が全く異なりますが、カード環境問題は共通しているのでクリスペも同じ事態にならないとは限りません。
ただクリスペは運営によりカード修正や展開をしっかり行っているので、プレーヤーも一緒に運営していく事でいい環境に変えられると考えています。
クリスペをデュエマ暗黒期の再来にしないために私が考えているのは以下です。
・強すぎるカードの修正(エラッタ)
・カードプール増加による環境の多様化
一つづつ解説します
TCGでは強すぎるカードは禁止・制限カードにしてバンス調整を行います。
また効果の一部修正(エラッタ)を行う事も有効です。
幸いクリスペでは毎月カードの修正投票を行っているので、そちらに参加して少しでもいい環境を全員で作るようにしましょう。
かつては1~3強状態が続いていた遊戯王やデュエマの大会ですが、現在は多種多様なデッキが活躍する良環境となっています。
これはカードプールが増大した事で今まで弱かったデッキや種族が強化され続けたことにより、どのデッキでも一定の強さを発揮できるようになったためです。
特に遊戯王はカードパワーインフレが進んだ結果、「そこそこ安定して戦えるファン・ネタデッキ」が増えたことも要因です。
カードのインフレは悪印象を持たれがちですが、「ネタデッキでも一撃必殺のコンボがあるから勝てる」というプラス効果があることがわかりました。
クリスペはまだ始まって3年なのでカードプールが少ないですが、各色のカードが増えれば苦手なデッキへの対策ができ、自然とデッキタイプも多様化していくでしょう。
ただDCGはTCGほどカードプールは増大しませんし、ブロックチェーンゲームの場合は(資産的な面から見ても)さらに少なくなります。
なので修正を交えつつ追加されるカードでバランスを整えていく事になるでしょう。
もちろんせっかく手に入れた強力カードが下方修正されるのは不満があると思います。
ただ環境が固定されてプレーヤー激減→サービス終了になる事に比べたら全然マシです。
カードは長く愛されるほど価値もアップするので、長い目で見ていきましょう^^
何度か書きましたがクリスペはDCGとして面白いので、バランス調整や新カード展開を継続すれば長く愛される良ゲーになります。
私も1プレーヤーとして、カードゲーム専門家として新たに生まれたブロックチェーンカードゲームを発展させていきたいと考えています。
まあ要するに…。
やろうぜ、クリプトスペルズ!
ユーザー名:キン肉マン3世
ID:069121