体温や基礎代謝が向上、精神的なストレスのからの開放……。
筋肉を動かすことは、身体的にも精神的にも健康的な生活を送るための大きな要因です。
最近の研究では、筋肉だけでなく皮膚と筋肉の間にある“筋膜”にも注目が集まっています。
今までそんなに注目されなかった筋膜ですが、健康において重要な役割があることが分かってきました。
今回はそんな筋膜についてのお話です。
参考記事)
・Mysterious Neglected Part of Our Body Is Vital to Our Health, Scientists Discover(2023/12/29)
参考研究)
・The membranous layer of superficial fascia: evidence for its widespread distribution in the body(2006/12/28)
運動が骨や筋肉の健康にどのような効果をもたらし、脂肪を減少させるのかは長年の研究課題です。
近年になり、注目度の低かった筋膜に対する関心も高くなっており、今まで未解明だった役割が明らかになってきました。
筋膜は主にコラーゲンでできており、筋肉や臓器、血管や骨など体の多くの領域に存在します。
体の表面に最も近いのは表層筋膜で、皮膚の下の脂肪層の間にあります。
次に、筋肉、骨、血液を覆う深部筋膜があります。
それぞれの筋肉は筋膜に包まれ、筋肉の収縮を助けて力を生み出し、硬さに影響を与えることにより筋肉の働きを助けています。
また、アキレス腱と足底の関係のように、筋膜は筋骨格系を通じた力の伝達も助けます。
同様に、胸部の筋肉から前腕の筋肉群と筋膜の関係も、同じような力の伝達を行います。
その他、体の他の領域にも同様の筋膜結合鎖があります。
筋膜の使いすぎ(筋膜炎)や怪我などによって筋膜が損傷してしまうと、それを要因とする機能の低下によって力を上手く伝達したりすることができなくなります。
筋膜の損傷は修復に長い時間がかかります。
これはおそらく、筋膜が腱と同様の細胞 (線維芽細胞) を持ち、血液供給が限られているためと考えられます。
特に表面に近い筋膜層には、皮膚に次いで2番目に多くの神経があることが示されています。
筋肉の筋膜内層は、手術による痛みやスポーツ、運動、加齢による筋骨格損傷にも関連しています。
筋骨格系の痛みを抱える人の最大 30% は、筋膜に関与しているか、筋膜が原因である可能性があります。
病気の筋膜 筋膜は損傷を受けるだけでなく、筋肉内で感染症が移動する経路となることもあります。
重篤な場合には、死んだ筋膜の組織を除去し、健康な組織を保存するための手術が必要になることがよくあります。
また筋膜は、壊死性筋膜炎などのより深刻な健康状態に関与することもあります。
まれではありますが、急速に体内に広がり、最悪の場合死に至る可能性がある重篤な細菌性疾患です。
この状態はほとんどの場合細菌、特にA群連鎖球菌または黄色ブドウ球菌によって引き起こされます。
このように病気とも深い関係がある筋膜ですが、これまでは見落とされることが少なくありませんでした。
その理由のひとつは、画像技術を使用して筋膜を確認するのが困難だったことが挙げられます。
最近では、MRI および超音波画像処理などによって、病理学的変化を視覚化することができるようになりました。
筋膜とそれが日常の健康に果たす役割については、まだ大いに研究の余地があります。
しかし、それまでアスリートやスポーツ選手の怪我と考えられてきた筋膜の損傷も、これからの時代では健康に深く関係するとして、注目を浴びていくことになるでしょう。
【参考ScienceAlertより】