日本でもタンパク質豊富な食べ物として知られている卵。
卵は高コレステロール食品として健康に悪いと考えられてきたこともあり、食べ過ぎは良くないと言われた過去があります。
しかし、近年の研究で、その認識が大きく変わりつつあります。
カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究チームは、卵が脳の健康を保つ可能性があり、さらに血中コレステロール値を下げる働きがあることを発見しました。
この研究は、食事と健康の関係について再評価を進める新たな一歩となっています。
以下の研究を基に、今回のテーマとしてまとめていきます。
参考記事)
・Study Finds Eggs Might Protect Brain Health And Lower Cholesterol(2024/11/15)
参考研究)
・Egg Consumption and 4-Year Change in Cognitive Function in Older Men and Women: The Rancho Bernardo Study(2024/08/19)
研究チームは、1988年から行われている健康的老化に関する研究から890人の男女のデータを分析しました。
このデータには、中高年層を対象に行われた4年間の認知機能テストが含まれており、短期記憶、長期記憶、その他の認知スキルに関する情報が記録されています。
特に注目されたのは、週に2~4個の卵を食べることが血中コレステロール値の低下と関連していた点です。
また、卵の摂取が女性の短期および長期記憶の維持に寄与している可能性も示されました。
この研究により、卵が単なる高コレステロール食品ではなく、認知機能や心血管の健康に対してポジティブな影響を与える可能性があることが明らかになりました。
分析の結果、女性のグループでは、卵を頻繁に摂取する人ほど記憶力の低下が緩やかであることがわかりました。
一方、男性についてはこの関連が見られなかったものの、別の年代のデータを用いた再分析では、卵を多く食べる男性が認知機能テストで高得点を出す傾向が報告されています。
これらの結果は、性別やその他の要因が影響を及ぼしている可能性を示唆しています。
たとえば、ホルモンバランスやライフスタイルの違い、さらには卵の調理方法や摂取量などが考慮されるべきです。
こうした複雑な相互作用を解明するためには、さらなる研究が必要です。
過去数十年にわたり、医療機関や健康専門家は、卵、バター、クリームなどの高コレステロール食品を避けるよう推奨してきました。
これらの食品が血中コレステロールを増加させ、心血管疾患のリスクを高めると考えられていたためです。
しかし、最近の研究では、動脈のプラーク形成の主な原因は、飽和脂肪、砂糖、ナトリウムであり、コレステロールそのものではないことが明らかになってきました。
多くの高コレステロール食品は飽和脂肪を多く含むため、その区別が曖昧だったことが指摘されています。
一方、卵や貝類は飽和脂肪が少なく、調理方法によっては健康的な選択肢となり得ます。
卵は、低脂肪で高タンパク質、栄養密度が高い食品です。
さらに、以下のような健康に寄与する成分が豊富に含まれています。
1. タンパク質とアミノ酸
神経細胞の構造と機能を維持し、認知機能をサポートする
2. カロテノイド
抗酸化作用を持ち、記憶力や認知能力を向上させるとされている
3. コリン
神経伝達物質アセチルコリンの前駆体であり、学習や記憶に重要な役割を果たす
研究では、コリン摂取量が多い人ほど認知機能テストで高得点を得ていることが確認されています。
この研究の結果は、卵の健康効果に関する新たな知見を提供しますが、すべての疑問に答えているわけではありません。
例えば、卵をどのように調理するのが最も効果的か、どのくらいの摂取量が適切か、他の食品との組み合わせが影響を与えるのかといった点について、さらなる調査が必要です。
また、個々の体質や健康状態によって、卵の摂取が逆効果になる場合もあります。
例えば、糖尿病や特定の心血管疾患を持つ人には慎重な摂取が求められることなどです。
そのため、卵の健康効果を全面的に受け入れる前に、医療専門家との相談が重要です。
・卵を週2~4個食べると血中コレステロールが低下し、特に女性では記憶力の維持に役立つ可能性がある
・卵は高コレステロール食品だが、飽和脂肪が少なく、健康に良い影響を与える可能性がある
・コリンやカロテノイドなどの成分が脳の健康を支える働きをすることが注目されている