記憶や推論などの認知機能な喪失を特徴とする認知症は、世界でおよそ5500万人が苦しむの疾患です。
これまでもいくつか認知症についての記事を書いてきましたが、今回はその症状が前もって分かるかもしれないということに関する記事です。
2023年5月5日付でScience Alertに掲載された記事からまとめていきます。
参考記事)
・Simple Tests Predict Dementia Risk in Older Women Years in Advance(2023.5.5)
参考論文)
食事の有無の忘れや名前の忘れなど、典型的な認知症の症状は、時間の経過と共にゆっくりと現れます。
しかし、診断の10年以上前に、認知症が発見される可能性があることが最近の研究では分かってきました。
オーストラリア エディス コーワン大学の研究者らは、握力と身体の動作についての研究と認知症の発症についての関係性を調査しました。
この研究では70代の約1200人の女性を対象に、専用の握力メーターによって握る力をテストされ、その後、椅子から立ち上がって3メートル歩き振り返って椅子に座る動作を確認しました。
1998年に実施され、5年後にもう一度テスト。
その後14.5年間、健康状態の記録を追跡しました。
その間、女性の17%近くが認知症で入院しているか、認知症に関連した原因で死亡していました。
観察研究では、原因と結果を示すことはできませんでしたが、研究者は握力と可動性、および10年以上後に発生した認知症の間に関係性を発見しました。
握力又は可動性が低いと分類された女性は、そうでない女性に比べて、認知症で入院するか死亡するかの可能性が2倍以上高いことが分かりました。
また、これらの傾向は、アルツハイマー病の遺伝的要素や認知症のタイプ、研究開始時に測定された心血管疾患のリスクスコアなど、他の危険因子とは無関係でした。
エディス コーワン大学のMarc Sim氏は、「握力と動作性のテストは臨床診療では一般的に行われていませんが、どちらも安価で簡単なスクリーニングツールです」と述べています。
認知症に特徴的な神経機能の低下には、認知および運動の要素が含まれる可能性があります。
握力を測ることは、認知症を発見する上で現在知られている危険因子の心血管疾患、炎症などの代理的な尺度になる可能性があります。
筋機能の検査を組み込むことは、認知症の発症を防ぐことを目的とした予防プログラムの恩恵を受ける可能性が高い個人を特定するのに役立つことが期待されています。
2050年までに、認知症患者の数は世界で1億5200万人に達し、推定される費用はおよそ1兆米ドルになると予想されています。
認知症の危険要因として、運動不足、社会的接触の少なさ、幼い頃から教育を受けていないこと、高血圧、糖尿病、聴覚障害、喫煙、肥満、うつ病、過度のアルコール摂取、外傷性脳損傷、大気汚染などが挙げられています。
これらの中で個人的に防ぐことができるものもたくさんあります。
どれも気をつければ、認知症のリスク低減だけでなく、生活での満足度が上がるものでもあるので、今後意識していきたいリストでもありますね。
・握力の低い高齢者はそうでない高齢者と比べると、認知症のリスクが2倍近く高い
・握力の低下は認知症の前兆かもしれない
・筋機能と認知症には深い関係があることが示唆される
大抵のことは運動で解決するということをよく耳にします。
畑仕事をしなくなった高齢者が、認知機能を低下させてしまうというのもよくある話です。
こういった研究を知る度に、人間は運動することを前提として作られた生き物なのだと感じます。
筋肉がつくかどうかはまた別の話ですが、運動自体は健康的な体を維持するために続けた方がいいことは明白ですね。
今後も運動を取り入れながら日々を過ごしていきたいと思います。
これに関連して、若いころの筋トレが老後でも影響することをまとめた記事もあるので、良ければそちらもどうぞ!
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