体を絞って理想の体型にする……。
口では簡単ですが実際行動するとなるととても難しいものです。
摂取カロリーよりも消費カロリーを多くすれば、よりスリムな体型を維持することは可能であり、そのためのダイエット法は多種多様に存在します。
脂肪を減らすことを第一としてダイエットをする方も多いかと思いますが、そんな脂肪を減らすと同時に筋肉なども減ってしまうこともデメリットの一つとして挙げられます。
今回はそんなダイエットについての研究のお話。
無理なダイエットは体を悪くするかもしれません。
参考記事)
・You Lose More Than Fat on a Diet, And The Consequences Are Serious(2023/0
参考研究)
・Dynamic changes in energy expenditure in response to underfeeding: a review(20221/10/4)
・Resistance training conserves fat-free mass and resting energy expenditure following weight loss(2008/03/6)
ダイエットをすると、脂肪だけでなく筋肉も失われていきます。
体力や筋力だけでなく代謝にも様々な影響及ぼします。
体重を減らすには、カロリー不足になる必要があります。
摂取カロリーを消費カロリーより少なくするか、消費カロリーを摂取カロリーよりも多くするかのどちらかです。
カロリーが不足した状態になると、身体は体内に貯蔵されたグリコーゲンをエネルギーとして使い果たします。
グリコーゲンは食べた炭水化物に由来するグルコースが紐状に繋がったものです。
炭水化物は体の主なエネルギー源であるため、体がすぐに使わなかったブドウ糖は、後にエネルギーとして使うために蓄えられます。
しかし、炭水化物分子は水と結合しやすいため、グリコーゲンは蓄える時に筋肉にも水分を蓄えることになります。
グリコーゲンを使い切ると、体内の水分も大量に放出されます。
これが“水太りと”呼ばれるの原因です。
それまで溜まっていた体内の水分が放出されるため、ダイエットのし始めに体重がかなり減ったと感じるのもこのためです。
しかし、脳などすべての組織が脂肪をエネルギーとして使えるわけではありません。
そのため、カロリー不足の時には脂肪の代わりに筋肉が代謝されるようになります。
摂取したタンパク質は筋肉に蓄えられます。
体はこの蓄積された筋肉のタンパク質をグルコースに変換し、エネルギーにすることができます。
そうなると、筋肉組織そのものが失われることになります。
これは代謝を低下させることと深く関係しており、せっかく体重を減らしたとしてもまた体重が戻ってしまうという結果をもたらしてしまいます。
カロリー不足になった際、筋肉がどれだけ減少するかは様々な要因が考えられます。
かつて、脂肪が多ければ多いほど、カロリー不足で減る筋肉は少ないと考えられていましたが、現在ではその考えは否定されており、痩せ型でも肥満型でもダイエット中にかなりの割合で筋肉が失われることが分かっています。
また、黒人は白人に比べてカロリー不足で筋肉量が減る傾向があるという研究結果もあり、民族性や遺伝が関係していることも示唆されています。
いくつかの研究では、遺伝的変異はそれまでの食事の変化に関連しており、それらの伝統的に食べられてきた食事が、最終的にどのくらいの筋肉量を失うかを決定する大きな要因になることも考えられています。
通常体重の10%を減らした場合、そのうち20%前後が筋肉など脂肪以外の部分となります。
また、減量中に何を食べるかによって筋肉がどれだけ減るかが決まると考える人も多く、一般的にはタンパク質をたくさん食べることで筋肉が減りにくいと考えられています。
低炭水化物ダイエットも脂肪の減少を促進すると言われています。
しかし、様々なタイプのダイエットと比較した研究によると、逆の考え方である低脂肪高炭水化物のダイエットでも同等かそれ以上の脂肪燃焼効果をもたらすようです。
これまで述べてきたことを踏まえると、体重を減らしながら筋肉の減少を多少なりとも防ぐ唯一の方法は、運動をすることに加え、タンパク質を含む食事をしっかりとることです。
運動は筋肉の成長を促しますが、このプロセスはタンパク質が十分に供給されてなければ起こりません。
通常成人は筋肉量を維持するために1日に体重1kgあたり0.8gのタンパク質を摂取することが推奨されます。
しかし、運動は筋肉に余計な負荷をかけるため、減量中に筋肉を維持するためには、体重1kg当たり1.2〜1.5gのタンパク質を摂取することが推奨されます。
ただ、タンパク質の摂りすぎ(1日に2.5g以上)は注意が必要です。
体が使う以上のタンパク質を摂取すると、代謝に悪影響を及ぼし、グルコースをエネルギーとして利用できなくなる可能性があるからです。
また腎臓や肝臓への負担が大きくなり、それらの臓器の障害など深刻な健康問題につながる危険性もあります。
そのため、減量を試みる際に最も重要なことは、食事や生活習慣の変化がどれだけ持続可能であるかということです。
短期間の間だけ我慢をしながら急激なダイエットをするよりも、継続できるダイエットの方法を見出し、少しずつ続けることが健康的な体重のコントロールにつながります。
中でも日に数分歩くことや、数回の腕立てやスクワットなどすぐにできる軽い運動などを徐々に取り入れることが大切です。
やってはいけないのは無理に体重を減らすために、長い間絶食するということです。
絶食を続けることで、身体が食事から摂取するエネルギーをより蓄えるようになり、元の生活に戻った時にさらに痩せにくくなる可能性があります。
そして最も怖いのが、エネルギーを蓄え代謝が少なくなった身体は、元の代謝に戻らなくなるかもしれない危険性があることです。
運動をしながら体重1kg当たり1.2〜1.5gのタンパク質を摂取し、健康的なダイエットを心がけていくと良いと思います。