ジャンクフードやファストフードが体に良くないということは、これまでの研究で数多く証明されてきました。
高糖質による血糖値の不自然な上昇と、それに伴う酸化ストレスや炎症マーカーの増加。
食物繊維不足や栄養素の不足による腸内細菌の変化など、身体にとって好ましくない影響が様々見られます。
また、質の悪い油などによって生成された化学物質(ヒドロキシノネナール等)が脳に深刻な影響を及ぼすことも指摘されているなど、美味しさの裏に百害があることが明らかになってきています。
今回のテーマはそんなジャンクフードと脳への影響についての研究です。
以下にまとめていきます。
参考記事)
・Too Much Junk Food Could Cause Lasting Damage to The Brain(2024/04/21)
参考研究)
・Western diet consumption impairs memory function via dysregulated hippocampus acetylcholine signaling(2024/03/15)
2024/04に発表された南カリフォルニア大学による動物を対象とした研究では、ジャンクフードを食べることで成長してきたラットは長期に渡って記憶障害が残るということが示されました。
研究では、ラットに生後26日から56日までの間、ポテトチップスやチョコでコーティングされたピーナッツバターカップ、高果糖コーンシロップなどの高脂肪で甘い食べ物を与えました。
研究の対象となった期間は、脳が著しく発達するタイミングで、人間では思春期に相当する時期です。
また、対照グループにはジャンクフードの代わりに健康的な食事を与えました。
その後に行われた記憶力テストでは、健康的食事で育てられたグループは、数日をまたいだ探索タスクを実施した際、数日前と物体の位置が同じか違うかを認識することができました。
一方、ジャンクフードで育てられたグループは、数日前に探索した場所において、新しい物体があるかどうか、物体がわずかに動いたかどうかを識別できませんでした。
これらの記憶障害は、ジャンクフードグループの食事を、健康的な食事に切り替えた(30日間)後でも持続しました。
この結果から、若い頃から高脂肪で甘い食事を与えられたラットは、長期的な記憶障害を引き起こす可能性があることが判明しました。
これは、単糖類や飽和脂肪を多く含む食事が、記憶に関与する動物の脳の重要な神経伝達物質であるアセチルコリンの働きを阻害するためと考えられます。
ジャンクフードを摂取したグループは、記憶と空間情報の固定化に関する脳領域である海馬にて、アセチルコリンを輸送するタンパク質のレベルが低下していることが発見されました。
記憶課題の成績が低かった動物はアセチルコリンシグナル伝達が損なわれている傾向が高く、海馬の細胞にアセチルコリンの放出を促す薬剤を使用することで、動物の記憶能力が回復したことも示されました。
南カリフォルニア大学の神経学者スコット・カノスキー氏は、「私たちの他の最近の研究や他の論文も判明していることは、ラットがジャンクフードを食べて育った場合、長期的にも消すことができない記憶障害が残るということだ」と述べています。
最近の研究でも、不健康な加工食品の食事とアルツハイマー病とのリスクとの関係や、そのメカニズムの一つとして、アセチルコリンによる記憶障害の関連性が指摘されています。
他の研究では、特定のジャンクフードを食べることで脳の食欲制御が損なわれる可能性があり、糖分と脂肪の多い食品を摂取することによる肥満の問題も示唆されています。
これらの研究に共通するのは、こういったジャンクフードなどの食品は、時々食べる程度にしたとしても記憶に影響を与えることが多いということです。
幼少期や青年期に脂肪分や糖分の多い食品を摂取することは、大人になってからの脳機能に影響を与える可能性があります。
しかし注意しなければならないのは、人間当てはめた場合にこのメカニズムがどう機能しているのかを解明することは困難であり、動物実験の延長の結果であるという認識が必要であるということです。
しかし、過去に行われた同様の趣旨の研究から、ジャンクフードを避けることを意識することは、健康を得るための大きな要因となることは間違いないでしょう。
この研究の詳細は、Brain, Behavior, and Immunityにて確認することができます。