一度発症したら、根本的な治療法がないとされるアルツハイマー病。
脳に異常起きた場所に、アミロイドβというタンパク質の蓄積していることから、この物質がアルツハイマー病の主たる原因だと考えられてきました。
しかし、1部の科学者はこの考えは実は間違っている可能性があると主張しています。
今回は、そんなアルツハイマー病についての最近の見解についてのお話。
2023年3月31日にScience Alertに掲載された記事からまとめていきます。
参考記事)
・Alzheimer's May Not Actually Be a Brain Disease, Expert Says(2023.3.31)
・Alzheimer’s might not be primarily a brain disease. A new theory suggests it’s an autoimmune condition.(2022.09.20)
参考研究)
・β-Amyloid is an Immunopeptide and Alzheimer’s is an Autoimmune Disease(2021.11.21)
カナダのグレンビル研究所は2022年4月の研究から、アルツハイマー病は脳疾患ではなく、脳内の免疫異常が原因ではないかという声明を出しました。
何年もの間、科学者たちはアミロイドβと呼ばれる謎のタンパク質の形成を防ぐことによって、アルツハイマー病を治療しようと考えてきました。
新薬であるアデュカヌマブも、アミロイドβの除去を促進する目的で開発されてきました。
しかし、クレンビル研究所のドナルド・ウィーバー博士の仮説では、アミロイドβは脳内の免疫系の一部として正常に生成される分子であり、脳が何らかの外傷を負ったり、細菌が進入した場合に、免疫の応答に重要な役割を果たすものだとされています。
体のあらゆる臓器に見られる免疫システムは、細胞と分子の集まりであり、それぞれがお互いに機能し損傷を修復し、外部の侵入者から人体を保護します。
誰かがつまずいて転倒すると、免疫系が損傷した組織の修復を助け、誰かがウイルスや細菌に感染すると、免疫システム上、これらの微生物の侵入者と戦います。
これと同じプロセスが脳内にも存在します。
頭部外傷があると脳の免疫システムが傷を修復し、脳に細菌が入ると免疫システムがそれを反撃します。
ウィーバー博士は、アミロイドβがこれら脳内の免疫反応に重要な役割を果たすと考えています。
しかし、ここが大きな問題となります。
細菌の膜と脳内細胞の膜の両方を構成する脂肪の分子が非常に似ているため、アミロイドβは、細菌と脳細胞を区別できずに、本来守るべき脳細胞も誤って攻撃してしまいます。
この誤認が脳細胞機能の喪失につながり、最終的には認知症に至ります。
このため、アミロイドβを除去することは、脳内を侵食する菌抑える働きをなくしてしまうことに繋がるため、効果的ではないことがウィーバー博士の研究では示唆されています。
最近では、アルツハイマー病の自己免疫理論に加え、様々な理論が現れ始めています。
ある学者は、アルツハイマー病は、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの異常によるものだと考え、ある学者は特定の菌による脳感染だと考え、またある学習は亜鉛、銅、鉄などの金属を異常に摂取したことからくるものだと考えています。
しかし、これまでアミロイドβが悪という考えに一辺倒だったアルツハイマー病の見方が見直され、新たな研究に対する追い風となっているのは確かです。
・アルツハイマー病は脳の免疫疾患の可能性がある
・アミロイドβは本来、脳の免疫機能に関わりのあるタンパク質
・アルツハイマー病の研究に対して新たな視点が加わる傾向にある
ちなみに、アミロイドβ説を強く印象付けた2006年の研究(A specific amyloid-β protein assembly in the brain impairs memory)も、実は捏造データに基づいたものではないかという可能性が報告されています。
新しい視点を持って、新たな打開になればいいですね!
身内にアルツハイマー型認知症を患っている者がいるため、アルツハイマー病となるとどうしても気になってしまいます。
現在も治療法は見つかっていませんが、こういった記事を見ていると、自分も気をつけようと言う気になります。
これからの人生の中で、有効な治療法が見つかることを期待しています。