以前の記事で、「鍛えた筋肉は老後になっても裏切らない」という記事を書きました。
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トレーニングで得た筋核は減少せず、長い間トレーニングをしていない期間があっても、再度運動を始めることで元の筋肉に戻りやすいという旨の記事です。
ラットや昆虫を用いた動物実験では、若年期に獲得した筋核が維持され、高齢となってからも運動とともに筋肉の肥大が見られたことが示されています。
高齢でも運動をする意味があるということですね。
今回のテーマは、そんな高齢者が運動することのメリットについての研究です。
筋核の有無に関係なく、運動することが記憶力の維持につながるという研究結果が報告されました。
参考記事)
・Brain Boost Linked to Exercise Can Last Several Years, Scientists Find(2024/07/19)
参考研究)
高強度インターバルトレーニングはHIITと略され、日本でも「20秒全力で動き10秒休む」というトレーニングスタイルであるタバタ式トレーニンが有名です。
クーンズランド大学の研究から、少なくとも半年間HIITを行う習慣がある高齢者は、脳機能が最大5年間維持改善される可能性があることが発表されました。
運動と脳の健康との関連性は過去に何度も示唆されていますが、本研究では、認知機能の改善にどれくらいの運動が必要なのかに焦点を絞って研究を行いました。
認知障害のない65〜85歳の男女151人が対象となっており、脳卒中、心臓または脳手術または脳外傷の既往歴がなく、運動中に心臓に不調をきたさないと判断された者のみが選出されました。
また、タバコやアルコールの習慣がある者に加え、カフェイン過剰摂取(1日4杯以上のコーヒー)など変数に影響を与える者も除外されました。
対象者は、低強度トレーニング、中強度トレーニング、高強度インターバルトレーニング(HIIT)のうち1つにランダムに割り当てられました。
それぞれのトレーニングは監督付きのもと、6ヶ月間にわたって続けられました。
認知機能(海馬)検査は、採血と一緒に毎月行われ、研究開始から最大5年間継続されました。
脳のMRIスキャンは、開始時と6ヶ月と12ヶ月で撮影され、6ヶ月後のスキャンではHIITグループだけが海馬機能の有意な改善を示しました。
HIITグループは、年齢による脳の体積の減少低下や、他のグループでは見られない神経ネットワーク間の機能的接続性の改善を示しました。
過去に行われたマウスを対象とした研究では、運動が幹細胞の成長を活性化することによって認知機能の低下防止、学習と記憶に関連する脳の領域(海馬)のニューロンの産生を増加させる可能性があることが分かっています。
今回、人間においても同様の効果がもたらされていると考えられており、高強度nトレーニングが脳機能の改善に大きな影響を与える考えられます。
クイーンズランド大学の神経科学者ダニエル・ブラックモア氏は、「たとえ、彼らが設定した運動プログラムに追いついていなくても、信じられないほどの認知能力の改善を見ることができた」と述べています。
身体反応と組み合わせた脳スキャンは、人間の認知能力改善に大きなヒントを与えてくれましたが、脳がどのようなメカニズムで恩恵を受けているかについて知るためには、より綿密な分析が必要です。
チームは、運動だけでなく遺伝的要因などについても認知や健康に関する研究を進め、脳の健康を維持、向上するために何が必要かを模索していきたいとしています。
この研究は、Aging and Diseaseにて詳細を確認することができます。