6歳の時。
俺が住んでいた三郷団地でお祭りが開催される事となった。
この時三郷団地中にお祭りに垂れ幕が張られて、一気にお祭り気分になる。
この団地は、超巨大団地で、当時人口が23,000人ほど住んでいた。
この団地1周するのに、大人でも半日以上かかる巨大団地。
この団地全体にお祭りの垂れ幕が下がり団地全体がお祭りの雰囲気になる。
そして団地の中央にある広場には、大きな盆踊り壇上が作られる。
そこから団地全体に屋台のお店が広がっていく。
この団地全部がお祭り会場になる。
俺は、このお祭りの雰囲気が大好きで、毎年ワクワクしていた。
学校でも、お祭りが開催される時になるとお祭りの話題でいっぱいになる。
男子は、もっぱら食べ物の話をしていた。
女子達は、占い師に占ってもらう事や、似顔絵かきの事等の話題。
この頃の男子と女子の温度差は激しく、お祭りでも共通の話題が全然ない。
しかも男子は、1人1人の思いが強く全然お祭りの内容が共通しない。
でも、その言い合いすら楽しかった。
ある日。
俺と弟は、母親と一緒に美容院に来ていた。
美容院でカットするのは、母親だけなので俺と弟は近くで遊ぶ事にした。
俺と弟は、目の前に建築途中の盆踊り壇上があったのでそこで遊んでいた。
追いかけっこをして、壇上に登ったり、壇上の下に潜ったり。
結構危険な遊びをしていた。
そして俺と弟が壇上の下に潜って遊んでいた時、事件が起きた。
弟が壇上の下の鉄骨で足を滑らせて転んでしまったのだ。
この時、転んだ位置が最悪の場所だった。
そこは、ボルトの先端が長く飛び出ていた所だったのだ。
その長く飛び出たボルトの先端に弟は、こめかみを当ててしまった。
そうしたら血がダラダラ出て、頭蓋骨を貫通したのかと思う位だった。
でも、自力で立ち上がれるのを見て、死んではいない事にホッとした。
俺は、弟を即美容院にいる母親の所に連れて行った。
それを見た母親は、奇声を上げてびっくりしてしまっていた。
美容院にいた客も店員も、一緒に驚いていた。
そして、まだカットの途中だったが急いでそのまま病院に連れて行った。
病院では、緊急患者と扱われ緊急治療室にすぐに連れられて行った。
そして数分後、何事も無かった様に弟は、治療を済ませて出てきた。
頭には、包帯が巻かれていたが、出血は完全に収まっている。
俺も母親も、歩ける姿を見てホッとしていた。
でも弟は、頭痛がするというので家に帰り寝る事にした。
この時母親は、美容院のカットの途中だったのを思い出した。
そして母親は、とりあえず美容院を終わらせてくる事にした。
その間、俺が間留守番して弟を見ている事となった。
この後弟は、すぐに寝てしまった。
そして俺も一緒にすぐに寝てしまった。
目が覚めると、丁度夕飯の支度の途中だった。
弟は、何故か元気に部屋中歩き回って遊んでいた。
こめかみから凄く出血して痛がっていたのに、もう元気になっている。
おれは、大丈夫なのか聞いてみたら、全然大丈夫になったと言っていた。
俺は、子供ながらに弟の生命力の凄さに驚いた。
お祭りの日。
我々家族は、全員浴衣を着てお祭りに出かけた。
弟の頭の包帯は取れたけど、傷跡が残っている。
でも今日は、お祭りの日だから気にせず楽しむ事にした。
俺と弟は、1番大好きな綿菓子を買ってもらい超ご満悦になった。
そしてスモモも買ってもらい顔中真っ赤にして食べていた。
そして金魚すくいもやりに行った。
でも、俺は金魚すくいが苦手で、案の定1匹も取れない。
弟の方を見ると、何だかたくさん金魚が取れている。
俺は、弟が4匹位取っているのを見て、凄い才能だと感心した。
この後射撃にもいってきた。
目の前に煙草があったから俺は、父親の為に取ってあげようと思った。
でも、全然当たらない。
たしか5回位やって合計50発位打ち込んだ気がする。
それでやっと煙草が取れて、超ご満悦になった。
でも当時の煙草は、120円だったのに俺が射撃で消費したお金は、200円。
たばこ代より高くついてしまった。
この後、お祭り会場を回っている内に、疲れて母親におんぶしてもらった。
そしてそのまま眠ってしまった。
でもこの時、うっすらとお祭りのにぎやかの音が耳に聞こえてくる。
それが、何だか凄いワクワク感が味わえて幸せな子守唄になった。