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思い出「弟への讃美歌」

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  • 鈴木穣
  • 2020/10/05 03:25

 

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【毒わさび】

3歳の、とある1月の土曜日

弟が生まれて親戚一同、お祖母ちゃんの家にお祝いに来てくれた。

この時、お寿司や、お酒のおつまみや、お赤飯が出ていた。

でも俺は、この時全部初めての物ばかりで、食べるのに戸惑っていた。

俺は、誰かの膝の上に乗り、何でも良いから食べさせてもらいたかった。

でも、みんな弟を交代で抱っこしていて、誰もかまってくれない。

なんだか寂しくなって、お祖母ちゃんの膝の上に強引に座ってしまった。

そして「何か食べたい!」と頼み、マグロの握りを食べさせてもらった。

俺は、そのマグロの握りを思いきって、1口で口に入れてしまう。

その味は、もの凄く美味しく感じた。

特に酢飯が、感動するほど美味しかった。

しかし次の瞬間、気を失う程の辛さを感じ、大声で「辛い!」と叫んだ。

わさびが入っていたのだ。

俺は、思わず全部一気に飲み込んでしまった。

でも、その辛さは全然なくならない。

水を飲ませてもらったけど、更に辛くなり、あまりの辛さで意識が遠のく。

それを見ていた親戚のおばちゃんが、急いで牛乳を持って来てくれた。

その牛乳を飲むと、一気に辛さが引いてくれて、正気が戻ってきた。

あの時の辛さは、マジで死ぬかと思った。

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【雪の女王】

しばらくして、辛さが完全に引いた俺は、また何かを食べたくなってきた。

今度は、わさびが無いのが良いと、強くお願いした。

そして食べたのが、かんぴょう巻き。

これは、わさびが入ってなく、甘くて凄く美味しい。

俺は、このかんぴょう巻きが猛烈に好きになってしまった。

この時、かんぴょう巻きだけを、とにかく食べまくってしまった。

もう美味しくて手が止まらない。

そして、おなか一杯になり、ご満悦になった。

その後、みんな弟ばかりかまっていて、全然相手をしてくれない。

俺は、また寂しくなって、テレビを見る事にした。

見た番組は、昔の実写映画の「雪の女王」

外国の映画だったが、日本語の吹き替えがされていた。

しばらく見ていると、だんだん内容が怖くなってくる。

特に後半の、雪の女王が正体を現した時、猛烈に怖かった。

でも俺は、そのまま泣かずに頑張って雪の女王を見続けた。

しかし、とうとう怖さに耐えられなくて泣き出してしまう。

そしたら母親が「番組変えればいいじゃん」と言って、変えてくれた。

見た番組は、雪の女王が凄く怖すぎて忘れられず、全く覚えてない。

俺は、そのまま泣き疲れて寝てしまった。

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【ざわめく雪が降る日】

この後、家のざわめきで目が覚めてしまった。

夜1時を過ぎた頃、親族一同べろべろに酔っぱらっていた。

親族の子達もいたけど、みんな眠っていた。

この日は、お祖母ちゃんの家に、全員泊まっていくらしい。

今日は土曜日で、明日休みだから気が済むまで騒げた。

我々親族は、全員集まると13人になる。

当時のおばちゃんの家は大きく、全員泊まっていける広さがあった。

布団も、きちんと13人分揃っている。

俺が目を覚めた時、大きな広間に布団を敷き詰め、寝る準備をしていた。

俺は、このざわめきで、すっかり目が覚めてしまった。

お祖母ちゃんにもう全然眠たくないと伝えたら、散歩に行こうと言う。

でも外に出てみると、雪が降り始めていた。

その状況を見て、寒いから散歩は、やめようと言う事になった。

でも俺は、散歩に行きたいと駄々をこねてしまう。

そうたら明日、雪だるまが作れると言うので、楽しみになり寝る事にした。

そして家に戻り、お祖母ちゃんと一緒に布団に入ったが、全然寝れない。

その事をお祖母ちゃんに伝えたら、親戚の子達に内緒で、バナナをくれた。

俺は、そのバナナを1本食べたらお腹いっぱいになり、すぐに眠くなった。

おかげでこの日は、再度寝る事が出来た。

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【雪だるまの美学】

翌日。

朝目覚めたら、みんなまだ寝ている。

でも親戚の子達は、2人起きていた。

俺は、雪だるまを作れることが楽しみで、外に出てみた。

そうしたら、予想通り、雪が足首くらいまで積もっている。

俺が外に出たら、起きてた2人の子達も外に出てきた。

そして我々は、早速雪だるまを作る始めた。

俺は、とにかく大きな雪だるまを作りたくて、必死に雪を転がした。

でも、雪を転がして大きくしていくと、重たくて転がらない。

仕方ないので、納得いく大きさじゃないけど、転がせる限界ので諦めた。

親戚の子達は、3歳年上の子達だったので、俺より大きな雪玉を作った。

うらやましく思ったが、俺ではこれ以上大きくできず、諦めた。

そして上部は、自分で持ち上げられる限界の大きさまで雪を丸めて乗せた。

完成した雪だるまに、土で目と鼻を付けて、落ちてた木の枝で手を付けた。

完成した雪だるまは、なかなか満足いく出来栄えだ。

親戚の子達は、さらに大きな雪だるまを作っていた。

でも、もう大きな雪だるまは、諦めていたのでうらやましくない。

俺は、自分で作った雪だるまが、超芸術的に見えた。

そして、ご満悦になり、しばらく眺めてしまった。

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【2度目の正月】

この後、親戚の子達と、雪合戦みたいな雪の掛け合いをして遊んだ。

そして、飽きたら家に入り、みんなでアニメを見ていた。

そうしていると、大人達もみんな起き始めて、慌ただしくなる。

やっと朝ごはんの時間だ。

俺は、お腹が空いていたので、ごはんが楽しみだった。

でも朝ご飯をみたら、全部昨日の夜の残りが出揃っている。

わさび付きの、お寿司まで出てる。

かといって、卵握りや、かんぴょう巻きは、全部みんなで食べて無い。

残りは、みそ汁と、漬物と、わさび付き握りのみ。

大ピンチだ。

でも、なんと!お祖母ちゃんがワサビだけ取っくれた。

おかげで、なんとか残りのお寿司を食べる事が出来た。

もし、わさびが付いていたら、朝食を食べられない所だった。

朝食が済んだら、みんな帰宅準備を始めた。

そして我々は、今年2度目のお正月を満喫し、疲れきって帰っていった。

帰りの電車の中、俺は弟を抱っこさせて貰った。

やっぱり体全体が、ゴムみたいに柔らかくて、すぐに壊れそうで怖い。

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