9歳の時。
俺は
クリスマスに買う物を
おもちゃ屋に選びに行った。
この時すでに
買いたいおもちゃが決まっていた。
それは
当時はやったロボットアニメの
「ダイオージャ」
この「ダイオージャ」は
全長50㎝位あるプラモデルだった。
なぜ俺は
既に買いたいおもちゃが
決まっていたのか。
それは
毎日おもちゃ屋に通い
欲しい玩具を
ずっと眺ていたから。
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俺は
欲しいおもちゃがたくさんあった。
でも
お小遣いが少なくて
とても玩具なんて
自分のお金で買えなかった。
しかし
欲しい欲求が抑えられず
毎日おもちゃ屋に行き
おもちゃをずっと眺めていた。
当然そんな事をしていれば
店員にも覚えられる。
そんなある時
俺は
店員に話しかけられた。
「いつも玩具をずっと眺めているけど
欲しいおもちゃが買えないの?」と。
その時の俺の返答は
「いつか買う」
とだけ店員に伝えた。
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俺の当時のお小遣いは
たったの1月「500円」
その500円を貯金せず
毎回ガンダムカードと
300円のガンプラに
使ってしまった。
たった500円しかもらえないから
2,3日で無くなってしまう。
でも
ガンダムカードとガンプラの
欲しい欲求か抑えきれず
あっという間に全部使ってしまった。
そんな事をしているから
全然お小遣いなんてたまらない
なのに欲しい玩具がたくさんあるが
お小遣いは
たったの500円しかくれない。
そんなもどかしい欲求が抑えきれず
毎日おもちゃ屋に行き
欲しい玩具をずっと眺める日々が続いた。
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そんな日々が続いていたが
クリスマスは
特別だった。
親がお金をくれて
クリスマスプレゼントを買ってくれる。
俺は
待ちに待ったこの日の為に
毎日おもちゃ屋に通い詰め
クリスマスに買う物を決定していた。
そしてクリスマスの1週間前
既に買う事を決めていた
「ダイオージャ」のプラモデルを買った。
でも買ったプラモデルは
持ち帰らない。
それは
このおもちゃ屋が
クリスマスにサンタクロースの格好をし
配達してくれるサービスがある!
俺は
そのサンタに
おもちゃを持って来てもらいたくて
配達の予約をした。
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そして
サンタクロースの配達予約をしたら
別途配達料金500円が必要と言われてしまう。
ダイオージャのプラモデルは
「3500円」
でも俺は
500円分余計にお金が無く
この500円が払えずに
メソメソし始めてしまった。
それを見たおもちゃは
なら毎日通い詰めて眺めている程
欲しい物みたいだから
特別に配達料金タダにしてあげるよ
そう言われて俺は
一気に嬉しくなり
サンタクロースと一緒に
天空を舞う気分になった。
そして俺は
無事欲しいおもちゃを買い
サンタクロースに
持って来てもらえる事になる。
帰り道は
もうエデンの園を
スキップして宙を舞うように帰って行った。
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家に到着し
母親には
配達料金を無料にしてもらった事は
内緒にした。
それは
また母親が
俺がまた貧乏人みたいな事して
恥ずかしい気持ちになると感じたからだった。
それに俺は
ただでさえ街の人達に
変人扱いされているクソガキだ。
なのに
こんな事を話したら
絶対またブチ切れられそうで怖い。
この事は
誰にも言わず
墓まで持って行こう
そう心に誓ったのだった。
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そして
クリスマス当日。
夜7時頃
サンタクロースの配達人が
あの大きな「ダイオージャ」を持って
俺の家に来た!
母親が玄関を開けると
サンタクロースが
「メリークリスマス!」
そう言って現れた!
俺は
その声を聞き
すっ飛んで玄関に向う。
そして
「ダイオージャ」のプラモデルを
抱きしめるように受け取った!
俺は
超絶嬉しくて
玄関でダイオージャを抱きしめたまま
しばらく立っていた。
そうしたら
サンタクロースが
「君にだけ今回特別のプレゼントだよ!」と
何やら余計な事を言いそうな雰囲気で話しかける。
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母親は
サンタクロースの
この言葉を聞き
「なぜ特別なの?」と聞きいた。
そうしたらサンタが
「本当は配達料金がかかるのだけど
お金がないみたいだったから
特別にタダで持ってきてあげたんだよ」
サンタは
そう言い
母親に秘密にしていた事を
全部ばらしやがった!
その話を聞いた母親は
顔を真っ赤にして
「すいません!そのお金今払います!」
と叫んだ。
そして母親が慌てて
お財布を取りに行こうとした。
でもサンタクロースに
「ちょっと待って!今回はこれで良いのですよ」
と言われ止められた。
この時
母親は
「何でこの子だけ特別のなの?!」
そうサンタに質問した。
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この質問にサンタクロースは
「毎日おもちゃ屋に通ってきて
欲しい玩具を何時間も眺めているもんね」
そう母親に伝えやがった!
母親は
顔をさらに真っ赤にして沸騰しそうになる。
そして母親が俺に
「まるで貧乏人がよだれを垂らして
物乞いしてるみたいじゃない!」
そう言われて叱られてしまった。
しかし母親の方は
俺の行動が恥ずかしすぎて
頭がパニックになっている様だった。
この時
「このブラックサンタめ!」
「秘密を全部ばらしやがって!」と
サンタに怒りを感じた。
そして俺は
母親にぶっ飛ばされる恐怖が湧いてきた。
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その後このブラックサンタは
俺の頭をなでで
「やっと欲しい物が手に入って良かったね」
そう言い去って行った。
そして俺は
顔を真っ赤にした母親ににらまれ
リビングで思いっきり叱られてしまった。
「もうあんな恥ずかしい事
絶対やったらダメ!!」と。
でも俺は
目の前にずっと欲しかった「ダイオージャ」があり
それが凄く嬉しくて
母親の恥の事なんてどうでもよかった。
そして俺は
今後も自分の欲求の
わがままを満たす為
おもちゃ屋に通い続ける。
まだまだたくさんある
欲しい玩具を
いつか手に入れる事を夢見て。