7歳の時。
生まれて初めて
東京タワーに行ってきた。
東京タワーに行く事は
前日に突然言われた。
しかも父親が
2人で行こうと言う。
俺の父親は
ちゃきちゃきの江戸っ子で
俺の中では
怖いイメージが板についていた。
その父親が
超ご機嫌でニコニコしながら行こうと言う
俺は
そんな父親と2人で行くなんて
怖いから少しためらってしまった。
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父親は怖い
しかし
東京タワーに行きたい気持ちが勝り
「うん!行きたい!」と返事をした。
行く日は
確か7月最後の日曜日だった。
俺は
父親に「何でいきなり東京タワーに行くの?」
そう聞いてみた。
そしたら
「ボーナスが出たんだ」と言う。
俺は
「なるほど
それで嬉しくて勢が余り
東京タワーに行こうと言ったんだ」
そう勝手に解釈した。
でも
その嬉しさを
俺の為に使ってくれる事に感謝した。
「これだけ父親がご機嫌なら
当日怒られて嫌な思いをせずに済みそうだ」
そう感じた。
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当日
電車で東京タワーに向かった。
道中
景色が綺麗でずっと飽きずに眺めていた。
父親は
きっと俺と話す時間が欲しくて
俺と2人で行きたかったのだろう
でも俺は
ほとんど学校の事や
友達の事を話した記憶がない。
多分
学校も友達も上手く行ってなかったから
何も話したくなかったのだろう。
そして
景色をずっと眺めて移動していたら
東京タワーの最寄り駅に到着した。
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敷地に入り
だんだん東京タワーが近づくにつれ
興奮が増す。
「でもきっと
東京タワーになんて直接触れるような
道筋になってないだろうな」
そう思っていた。
しかしそれは
大きな間違いだった!
東京タワーに到着したら
直接東京タワーに触れられるじゃないか!
俺は
凄く感動して東京タワーの鉄骨に触り
「ペロ」と舐めて
東京タワーを味わった!
その味は
ペンキに排気ガスがしみ込んで
ちょっとほろ苦い
今と言う時代の味がした。
「う~んマンダム(´Д`)」
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そして我々は
早速展望台に上ってみた。
その展望台から東京の街並みが一望でき
俺は
まるでミニチュアな街並みに凄く驚いた。
この景色で1番感じた事は
「ここでウルトラマンが戦って
怪獣がこの街を破壊するんだ!」
そう感じてしまう。
当時まだ
都庁ビルなんて無く
サンシャイン60が1番高いビルだった。
俺は
父親にねだり有料の大きな双眼鏡で
街並みを見てみた。
そこには
ミニカーが沢山走っていて
小人がワサワサと動いている。
まるで玩具の世界を見ているようだった。
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俺は
凄く楽しい気分になり
展望台の中を1人で走り回り
色々見てみた。
東京タワーの展望台に
建設資料館があり
覗いてみる事にした。
中に入ると
色々な建設道具や
難しい文字が書かれていて良く解らん。
建設費が30億円とか
建設日数が1年半とか
携わった人数が22万人とか
色々書かれていた。
でも
今考えるとこの数字は
色々と異常だ。
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まず建設費がたったの30億?!
しかも建設日数がたったの1年半?!
携わった人数が22万人もいるの?!
今の時代から考えると
色々あり得ない数字だ。
当時の
勢いと根性だけで突っ走っていた時代感が
よく解る数字だと思う。
その中でも俺が理解できた事がある。
それは
頂上の組み立てをする時
地上から持ち上げた鉄骨を
命綱無しの鳶職人が組み立てたと言う事だった。
よくあんなに高い所で作業できたと
当時の俺は
その恐怖感が理解できた。
この気持ちを解りやすく
インテリ風に言うと
「お前らバカじゃねーの!?」
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お昼になり俺は
父親に
展望台のレストランで
食事をしたいとねだった。
そうしたら
「お金が無いから
おにぎりを作ってもらってきた」
と言われる。
俺は
展望台のレストランで食事が出来なくて
超ガッカリした。
そして父親に
「東京タワーを降りると大きな公園があるから
そこで食事をしよう!」と言われ
その公園で食事をする事になった。
その公園は
大本山僧上寺の公園。
そこに家から持ってきたゴザを敷いて
ピクニックをしてしまった。
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周りにを見ると
我々しかピクニックしている人がいない。
何か恥ずかしいけど
ここで食事をするしかなかった。
食事が終わり我々は
帰る前にお寺にお参りしに行く事になった。
お寺につき俺が願った事は
世界平和ではなく
「おかね頂戴」
俺は
「神様なんだからきっと願いを叶えてくれる」
そう確信した。
そして我々は
家に帰る事にした。
帰り道
俺は
疲れてしまい
ずっと寝てしまっていた。
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帰り道の事は
よく覚えて無いけど
確か父親におんぶされてて
目が覚めたら家で寝ていた。
目が覚めて1番最初に感じた事は
「お土産買い忘れた!」だった。
でも
お土産は
父親が買って来てくれていた。
それは
エッフェル塔のキーホルダーだったけど
俺と父親は
これが東京タワーだと勘違いしていた。
それを見て
「何かショボいし」
「何かがおかしい」
そう感じた。
でも俺は
それが東京タワーと信じて
ランドセルに付けて学校に通った
学校で東京タワーに行った事を話したが
みんなは
あえてエッフェル塔のキーホルダーの事に
触れないでいてくれた。