6歳の時の1月4日。
この日は、お店のお正月休みが終わり、開店し始める日。
俺は、1日に貰ったお年玉で、おもちゃを買いに行けずヤギモギしていた。
でもやっと、おもちゃ屋のお正月休みが終わり、買う事が出来る。
やっと、欲しいおもちゃが、手に入る!
俺は、その事を思うと、朝から興奮していた。
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欲しいおもちゃは「トライダーG7」の超合金。
お年玉で買う物は、年末の新聞に入っていた広告を見て、決めてあった。
俺はこの日、朝食を済ませ、即おもちゃ屋に向かった。
おもちゃ屋の開店は、10時。
でも俺がおもちゃ屋に付いたのは、9時。
開店時間を間違えたのではなく、おもちゃが欲しくて、来てしまった。
俺は「トライダーG7」が欲しくて、いてもたってもいられなかったのだ。
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俺は、開店時間より、1時間も前に来てしまったから待つ事になる。
そしてまた、自販機の下をシャッターの棒であさり、100円玉を取る。
そのお金で、大好きなコーンスープを買って、待つ事にした。
なぜ俺は、自分のお年玉を使わなんだろう・・・。
それは、ジュースとは、自販機の下からとったお金で飲む物だからである!
俺は、もうこれが日常だった。
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寒い冬の朝、開店前の1時間を、ベンチでコーンスープを飲んで待った。
そしたら、昨日の朝もここで会った、同じクラスの女子が来た。
その子は「岸」さん。
俺と同じ、お年玉で、おもちゃを買いたい女子だった。
その子は、おもむろに俺の隣に座り「ジュース飲みた~い」と言ってくる。
その目は(自販機の下からお金取った事、先生にチクるぞ)と言っていた。
俺は「わかったよ」と返事をし、また自販機の下からお金を取って買った。
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我々は、ベンチで開店時間がくるまで、2人で待つ事になった。
俺は、岸さんに「昨日言ってた、大きなクマを買いに来たの?」と尋ねた。
そうしたら「この玩具屋に1つだけある、1番大きなクマを買う」と答た。
そう言えば、玩具屋に奥に、1つだけ物凄く大きなクマが飾られている。
俺は(きっとあのクマを買うんだ!)と思い、凄く驚いた。
この時、岸さんは、まるで店ごと買い占める感じがして、ビックリした。
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開店の時間が近づいてきて、我々は、シャッターの前に立っていた。
店が開いたら、即効欲しい物が買いたくて、2人とも興奮していた。
もう開店が待ちきれず、2人ともシャッターに大の字で、へばりついた。
そして開店時間、内側からシャッターが開き始める。
この時、我々2人は、シャッターが開いても、大の字のまま硬直していた。
それを見た、おもちゃ屋のおばさんが「フギャー!」と声を出し驚いた。
その拍子に、おばさんは、しりもちをついてしまった。
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おもちゃ屋のおばちゃんは、ビックリした顔で、我々に話しかけてきた。
「ゆーくん!きーちゃん!そこで何してるの( ゚Д゚)?!」と。
俺は「ゆーくん」、岸さんは「きーちゃん」と呼ばれていた。
でも我々2人は、そんな言葉を無視して、おもちゃ屋に飛び込んだ!
そして、おばさんの足にしがみつき「お年玉でおもちゃ頂戴!」と叫んだ。
店の中は、まだ真っ暗で、開店準備さえもしてない状態だった。
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おもちゃ屋のおばさんは、開店前なのに、快くおもちゃを売ってくれた。
俺は「トライダーG7」の超合金。
岸さんは、お店で1番大きい、クマのぬいぐるみ。
我々は、おばさんにお年玉袋ごと渡して、会計の計算をしてもらった。
そして無事、念願の欲しいおもちゃを、買う事が出来た。
しかし、ここで大問題が発覚した。
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岸さんのクマのぬいぐるみが大きすぎて、子供じゃ持てないのだ。
多分、1m50㎝位ある、大きなぬいぐるみだったはず。
当然、岸さんの身長や体格より、はるかに大きい。
それを見たおばさんは「お母さんに電話して、来てもらおう」という。
でも岸さんは「自分で家まで持って行く!」と言い、クマを離さない。
おばさんもその頑固さに負けて「なら、気を付けてね」と言い、諦めた。
そして我々は、おもちゃ屋の入り口で別れ、それぞれの家に向かった。
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岸さんは、自分より大きいぬいぐるみを抱えて、家まで歩き始めて行った。
俺は、そんな岸さんの事が心配になり、少し見ていた。
しばらくしたら岸さんが「ゆーくん!ちょっと来て!」と遠くから叫ぶ。
俺は、何だろうと思い、走って向かった。
そしたら、突然ぬいぐるみを、俺の頭の上に乗せてきた!
岸さんは「それ持って、家まで来て」と言う!
俺は、思わず「マジか( ゚Д゚)?!」と叫び、ビックリしてしまった。
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岸さんは「ゆーくんのおもちゃ持つから、私のクマ持ってきて」と言う。
俺は、仕方なくぬいぐるみを頭に抱えたまま、岸さんの家に向かった。
岸さんの家に向かう途中、近所のおばさんと出会う。
そしたら「ゆーくん、ぬいぐるみなんて買うんだ~」と言われてしまった。
そして、近所のおばさんが、そそくさと立ち去って行く。
俺は、この時、おばさんの心の声が聞こえた。
(ゆーくん、男の子なのに女の子のぬいぐるみ買う子なんだ~)と。
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俺は、この時(違う!違うんだ!これには深い訳が!)と心の中で叫んだ。
そして、この状況がもの凄く恥ずかしくなり、顔が真っ赤になってしまう。
俺は、この状況を打開しようと岸さんの方を、ちらっと見た。
しかし、岸さんが持てる大きさのぬいぐるみじゃない。
仕方なく、恥ずかしさを我慢し、岸さんの家まで持って行く事にした。
そして、やっと岸さんの家に到着した。
ここまで来るのに、まさに拷問だった。
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岸さんの家に到着したら、母親が出てきた。
岸さんの母親は、俺のこの恥ずかしい状況を、すぐ理解してくれた。
そして「クマさん持って来てくれてありがとう」とお礼を言ってくれた。
その後、クマを持ってきたお礼に、岸さんの家で、ケーキを食べられた。
俺は、ケーキが大好物で、もの凄く嬉しくてたまらない。
この時、気が済むまでお腹いっぱいケーキを食べられ、超ご満悦になった。
そして昼前、岸さんに「またよろしくね!」と言われ、やっと帰宅できた。
でも、岸さんの「またよろしくね!」が、嫌な予感がしてならなかった。