6歳の時
幼稚園の卒業式で
ブラスバンド演奏をした。
俺が通っていた幼稚園は
三郷団地にある「天使幼稚園」
この幼稚園は
2年間だけの幼稚園で
「年少組」「年長組」しかなかった。
年長組の卒業する時
年下の年少さんに
お兄ちゃんらしい所を見せようという企画で
ブラスバンド演奏をする事になった。
演奏する曲は
トルコ行進曲。
当時このトルコ行進曲を
幼稚園のレコードで
初めて聞いた。
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このトルコ行進曲を聞いた時
「マジでこんな難しい曲やるのか( ゚Д゚)?」
「絶対無理!」
と言うのが正直な感想だった。
でも先生がやると言うから
やらざる得ない。
そして先生が楽器を色々出してきた。
そこにあった楽器は
「木琴」「トランペット」「鉄琴」等
たくさんある。
この楽器の中でも
「トランペットなんて
どう考えても幼稚園時じゃ無理だろ」
と感じてしまった。
しかし先生は
誰かにやらせるという。
そこで白羽の矢が立ったのは
1番太ってる「早川君」だった。
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早川君は
我々と比べると
体格が2倍位ある大きい子だった。
俺は
早川君を見て
「確かに彼ならトランペットもできそうだ」
そう確信できた。
早川君は
大太鼓を希望していたが
先生の強い要望で却下されてしまった。
そして渋々
早川君は
トランペットを引き受けてくれた。
早川君は
先生に吹き方を教わって吹いてみたら
いきなりトランペットの音を出しやがった!
我々は
早川君の次元が違う能力に驚愕してしまった。
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この時みんな口をそろえて
「スゲ━━━━━ヽ(゚Д゚)ノ━━━━━!!!!」
の大合唱!
この事に早川君は
気分良くなったのか
今後の練習に気合が入りまくっていた。
そして俺が選んだ楽器は
「木琴」
理由は
曲が難しすぎて
どの楽器を選んでも同じに感じ
適当に選んでしまった。
木琴を選んだ俺は
音符にカタカナが書かれた楽譜をもらった。
その楽譜は
想像以上に分厚い。
俺は
「トルコ行進曲を最後まで演奏するなんて
絶対無理!」
と諦めてしまった。
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木琴を選んだ子は
全員で6人いた。
そして俺は
生まれて初めての木琴をやり
木琴のキチガイみたいな手の動きに
今後の練習で悪戦苦闘する事になる。
でも練習していく内に
同じメロディーが
繰り返されている事に気が付いた。
その事に気が付き俺は
とりあえず最後まで
木琴の演奏が出来るようになった。
でも
木琴の両手を使う演奏は
想像以上に難しい。
手の動きを最後まで覚えても
次の音を考えながら叩いているので
リズムが遅くノリも悪い。
しかも遠くでは
トランペットの音が
「パオーン!パオーン!」うるさくて
木琴の音が聞こえず集中できない。
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そして俺は
数日間木琴を練習したのち
何とか楽譜を見ないで出来るようになった。
しかし
リズム感が悪くノリも悪いまま。
同じ木琴のやっている子を見ると
凄く上手に軽やかに
木琴のメロディーを奏でている。
なんか俺だけ浮いている気がしたが
もう翌日本番で
これ以上どうしょうも無く諦めた。
しかし
トランペットの早川君の演奏を聞いたら
「ブオーン!パオーン!プギャー!」
と聞こえる。
早川君も
とりあえず曲を最後まで覚えたようだが
明らかに下手くそだった。
でも
トランペットが出来る早川君の姿を見ると
驚異的な身体能力な事は
変わり無く別格だった。
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そして演奏当日。
俺は
この時初めて知った事があった。
それは
グランドを行進しながら演奏する事!
俺は
この話を聞いて
「え?なにそれ!聞いてないんだけど!」と
めちゃくちゃ焦った!
ただでさえ演奏する事だけで一杯一杯なのに
更に行進しながら演奏するなんて
歩きながら俺は
どこにぶっ飛んで行くか解らない。
俺は
テンパって青ざめたが
もうやるしか無く
覚悟を決めた。
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そして演奏が開始して
グランドを歩き始めた。
案の定俺は
まっすぐ歩けず左右に移動して
軽やかなステップを踏み始める。
この時
もう必死で木琴だけに集中してたから
行進は
無心で周囲の子にについて行くしかなかった。
こんな状況で演奏しているから
自分でも解るくらい音程をミスり
もう頭がパニック状態。
しかし何とか
最後まで木琴をやりきる事が出来た。
演奏終了後俺は
もう何が何だか解らず
地獄から解放された間満載だった。
この時俺は
「終わった…何もかも終わった(*´Д`*)」と
物凄い安堵感に包まれていた。
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この演奏会に
みんなの母親も見に来ていた。
このあと俺は
母親の所に行き
抱っこしてもらった。
そうしたら母親が今日は
「迎えに来れないから
直接いつもの料理教室に1人出来て」
と言われた。
俺は
返事をしてクラス部屋に戻り
お弁当を食べて楽器を片付けた。
木琴を片付ける時
今度は
「もっとちゃんとできたら良いな」
と願いを込めた。
そして幼稚園の時間が終わり
母親との約束どおり
料理教室に向かう。
料理教室に入ると
いつもの良い匂いが立ち込めてきた。
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料理教室に入ると
母親達がみんなで
俺の大好きなお菓子を作っていた!
俺は
お菓子がたくさん食べられると思い
速攻母親の所に向かう。
そこには
おいしそうなドーナッツがあるでわないか!
そして目を輝かせて
ドーナッツを食べ始めた。
この時
食べながらふと母親を見ると
母親が初めて見るお母さんと
仲良く話している。
母親に俺は
「このおばさん友達なの?」
と聞いてみた。
そしたら母親が
「今日知り合った岸さんと言うお友達よ」
と言うので
とりあえず挨拶をしておいた。
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そしたら岸おばさんの脇から
女の子がひょこっと出てきたので
この子にも「こんばんわ」と
挨拶しておいた。
でもこの子は
俺の事をじっと見たまま何も言わない。
なんだか不思議に思い俺は
ドーナッツをとって
「俺の母親のドーナッツ食べてみて」と
その子に渡してみた。
そしたらその子は
無言でドーナッツを取り
その子が俺にも
自分の母親が作ったドーナッツをくれた。
そしたらその子が俺に一言
「木琴下手くそ…」と言ってきた!
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俺は
一番気にしていた事を言われ
更に目撃されていた恥ずかしさのあまり
「ビェ──・゚・(。>д<。)・゚・──ン!!」となる。
その瞬間
頭の中が真っ白にり
白目向いて気を失いそうになってしまった。
俺は
メソメソし始め泣きそうになるが
女の子の前なので
泣く事が恥ずかしくて必死に我慢していた。
俺がこの時感じていた事は
「何でこの子が同じ幼稚園の子なの(´;ω;`)」
「何で俺の木琴姿見ていたの(´;ω;`)」
「何で最初の挨拶がとどめの一撃なの(´;ω;`)」
俺は
初めて会った岸さんと言う女の子に
この挨拶代わりの洗礼を受け
とてもショックだった。