2020年8月20日。
空軍のAI戦闘機VS人間の模擬戦が行われました。
結果、AIの完全勝利。
人間対AIの試合は、5回戦行われました。
5戦中3戦は、人間側が1分間も生きていられませんでした。
試合形式は、実際に空中戦を行ったわけではありません。
これは現実の飛行感覚と全く同じに作られたシュミレーター上での戦です。
今回の模擬戦にあたり、8個のAIが参戦しました。
武器は、バルカン砲のM61のみ。
ミサイルの使用はしません。
戦闘機も「F16」の同じ性能の機体1種類のみ。
今回の試験は、近距離戦のドッグファイトのみを行いました。
8個のAI中、勝利したAIは「ヘロン・システムズ」と言うAI。
このAIが勝利した要因は、他のAIと全く違う点があったからです。
このAIも他のAI同様、反復学習で学ぶ「深層強化学習」で作られました。
他のAIは最初、戦闘機の基本性能が組み込まれていました。
でもこのAIは、最初から戦闘機の基本性能は組み込まれませんでした。
つまり、戦闘情報が「0」の状態から学んで成長しました。
このAIは、戦闘機の情報が全く最初は、飛ぶ事すら出来ませんでした。
でも、しばらく深層学習を続けたら他のAI性能を遥かに超えてきました。
他のAIは、基本性能の情報が邪魔して制限をかけてしまったのです。
更に、性能で最も違いが現れたのは、判断力。
他のAIは、1秒間に50回もの判断をしなければなりませんでした。
でもこのAIは、1秒間に10回しか判断しなかったのです。
つまり1回の判断の正確さが、他のAIよりも遥かに正確だったのです。
ヘロンのAIは、F16での戦闘時に最大の性能を発揮しています。
他のAIより動きが滑らかで、優位な位置取りを常にしていました。
そして、他のAIをバッタバッタ撃墜していき人間への挑戦権を獲得します。
これは、F16の性能のおかげでもあります。
F16は、過去F35との模擬戦で打ち負かした強力な戦闘機でもあります。
このF16とAIのシンクロ率も非常に良かったのでしょう。
いよいよ人間とAIの戦闘になります。
人間のパイロットは、2000時間以上の飛行経験を持つベテランパイロット。
人側は、身元を隠して戦闘に挑みました。
人は、VRヘッドセットをつけてコンピュータの中にいるAIに挑みます。
ルールはバルカンのM16のみを使用でき相手のHPを削り切った方が勝者。
1回戦目、高度4880m地点からスタート。
人間が曲線的な動きをするのに対し、AIは凄く鋭角な動きをしてきます。
AIがこの動きをした時点で勝負は決まっていました。
あっという間に人側は後ろに付かれバルカン砲でHPを削られてしまいます。
しかも人側は、バルカン砲を1発も当てる事が出来ませんでした。
結果、79秒で撃墜されてしまいます。
人がこんな動きをしたら、きっとGで押しつぶされているでしょう。
2回戦目、開始高度3700m地点からスタート。
AIは、またしても鋭角な動きをしてきます。
人側も今度は、果敢に攻めますがAIの動きについていけません。
しかもAIは、人間の動きを先読みしてバルカン砲を当ててきます。
結果、59秒で人側が負けてしまいます。
3回戦目、高度2260mからスタート。
今回は、高度が低いせいか動きすぎると高度が下がってしまいます。
激しく動き、双方が高度400mを切る場面も出てきました。
人側は、低高度で更に高度が下がる動きをしないように訓練されています。
それは、墜落の危険が非常に高まるからです。
でもAIは、命の危険性なんて全く気にしない鋭角な動きをしてきます。
低高度帯で人側は、動きに制限がある為一方的に後ろに付かれしまいます。
そして開始53秒で撃墜されてしまいました。
4回戦目、開始高度4250mからスタート。
AIの動きは、3回戦目の低高度より遥かに鋭角な動きをしてきます。
もう完全に、一方的な試合になっています。
人間側がどう動いてもAIは、常に後ろ側に付き攻撃してきます。
結果、52秒で人間側が撃墜されてしまいました。
5回戦目、開始高度4350mからスタート。
これまで圧倒的なAIに対して人側は、戦闘方法を変えました。
降下しながらAIとの距離を取り、時間稼ぎをする戦法です。
相手が勝てない場合、時間をかけて逃げ回るのがマニュアルだからです。
時間を稼げば、それだけ味方の救援が来る可能性が高くなります。
そして敵のミスも誘えます。
人間側は、高度が低くなったら大きく円運動をしてAIとの距離を取ります。
でもAIは、人間側の動きに対して即判断を修正し後ろに回り込みます。
そして、バルカン砲を打ち即撃墜してしまいました。
人間側は、負けてしまったが165秒という生存時間の最長記録を作った。
このAIは、人間が165秒も生き続けた事が想定外だったかもしれません。
でも結果、人間はAIに1度も勝てませんでした。
今回の模擬戦は、人間側の完敗で終わりました。
対等な条件なのに人間側は、AIに対し1度も有利な状況になれなかった。
しかも1分以上生き残れたのは、2回のみ。
うちの1回は、逃げに徹したものでした。
なぜ人間は、AIに勝てなかったのでしょう。
人間は空中戦の時、相手との衝突を避ける為に常に150mの距離を取る。
そのように訓練されて体が覚えているのです。
でもAIは、そんな安全策を取る必要が無くどんどん距離を締めてます。
低高度では、人間側は墜落しない様に無理な動きを控えます。
でも当然AIは、そんなの気にしなくて良いので凄く無謀な動きが出来ます。
人間側は、攻撃する時も自分に当たらない様に旋回角度が制限されます。
対Gも人間側には、限界があるので動きに制限があります。
でもAIは、そんなの全く気にする必要が無い事が勝利に繋がりました。
AIの能力が人間より勝っている事がこれで証明されました。
AIは、状況判断して動くまでにナノミリ秒で判断します。
でも人間は、状況判断するのに数秒かかります。
もう、これほどAIと人間の処理速度が違えば勝てる訳ありません。
つまりAIに勝つためには、AIでないとダメだと言う事です。
人は長い時間訓練をして経験を積まないと戦闘機をうまく操縦できません。
でもAIは、プログラムをコピーすれば無限に即戦力を作る事が可能です。
最近までの戦闘機用AIは、非常に性能が悪い物でした。
まともに飛ぶ事が出来ず、戦闘前に勝手に墜落していました。
なので空軍は、AIに対して否定的でした。
でも、今回の模擬戦でAIが完全勝利しAIに対する意見も180度変わります。
これから最前線はAIに任せ、人間は後方で戦術を立てるだけの時代になる。
もう人間は、戦争に参加しない時代が来るかもしれません。