『新ジュスティーヌ』が相当堪えたので、次はライトな漫画をと思い選んだのが何故かこれ。
いやでも面白い!
年代は記念すべき週刊ジャンプ連載第一話の1974年からヤングジャンプ増刊の1987年までと幅広く、収録順も割とバラバラだが、一話一話の軸に少しもブレがない。
民俗学をモチーフにした伝奇ものながら、それに関わったり巻き込まれたりした人々のドラマがしっかり描かれているのだ。
語り部たる異端の考古学者・稗田礼二郎があくまで普通の人間なのもいい。
しかし連載当時は僅か五回で打ち切られたそうで、まさに早すぎた傑作。
個人的好みは、初回にしてシリーズの魅力が全部詰まった『黒い探究者』、東北地方の訛りの効いた隠れキリシタン伝説が効果的な『生命の木』、真に恐ろしいのは人間のエゴなんですよ、な『ヒトニグサ』、幼少期の不可解な記憶に翻弄される男女二人の謎解き過程がスリリングで天邪鬼なラストも印象的な『幻の木』辺りか。
ただ、他の話も充分楽しめるし、稗田礼二郎未登場の「肉色の誕生」も毛色は違えど味わい深い。
また、あとがきによると妖怪ハンターなる名称は当時の担当編集者の命名で、作者は好きじゃないとのこと。