仮名草紙「薄雪物語」の粉本である慶長三年の「うすゆきものがたり」を紹介するという体裁になっているが、粉本自体は十蘭の創作とのこと。
悲恋ものの縦軸と因縁ものの横軸が渾然となった巧みな作風だが、そもそも下敷きにしているスタンダールの「カストロの尼」がそんな感じらしい。
風摩小太郎に蘆屋氏や賀茂氏など、その筋には堪らない名も多く出てくる。
抄とある通り、後半は駆け足気味に数行の説明文で終わってしまうのが勿体ない。