皆さんこんにちは、PoW! WoW! WoW! です。
BITMAINが匿名送金機能が付いた暗号通貨 Zcash(ZEC)のハッシュアルゴリズム、Equihashの採掘に対応したASIC(特定用途向け集積回路)「Antminer Z9 mini」を発表しました。
ASICによるマイニングが開始されると、ハッシュレート (採掘速度)とディフィカルティ(採掘難易度)は急上昇し、これまで採掘してきたGPUでは利益が出なくなる可能性が高くなります。また、ASICを使ったマイニングも高収益が出るのは最初の数ヶ月間だけで、収益率は徐々に低下することが予想されます。
BITMAINが発売したEquihashアルゴリズムのASIC「Antminer Z9 mini」のスペックは以下の通りです。
・ハッシュレート:10,000 H (Sol)/s
・消費電力:300W
・騒音レベル:65db
・価格:$1,990
ワットパフォーマンス(消費電力1Wあたりのハッシュレート )は33.33 H/s、コストパフォーマンス(ハッシュレート 1 H/sあたりの価格)$0.2/H/sになります。
GPUマイニングでハッシュレートが最も高いNVIDIA GeForce GTX 180Tiのワットパフォーマンスは3.6 H/sなので9倍以上のハッシュレートを出すことができます。
市場価格が110,000円前後のGTX 1080Tiのコストパフォーマンスは160円/ H/sなので、GPUの約1/7のコストで同等のハッシュレート を出すことができます。
Antminer Z9 miniの予想収益はCoinWarzで計算できます。
現在のネットワークハッシュレートと採掘難易度でEquihashをマイニングすると、1日あたりの利益はZenCash(ZEN)で$46.49、ビットコインゴールドで$38.25、Zcashで$36.73になります。(電気代は $0.2/kWhで計算)
投資額の$1,990を回収するまでの期間(ROI)は、Zcashで54日、ZenCashで47日になります。(Pool Feeは1%で計算)
ただし、ハッシュレートと採掘難易度が上昇すると、利益率が低下するのでROIは長くなります。
ハッシュレートがGPUの約15倍のASICでのマイニングが開始されるとZcashのネットワークハッシュレートは急激に上昇することが予想されます。
下記は、BITMAINが2017年9月にX11アルゴリズムに対応した「Antminer D3」を発売したDASHのディフィカルティ(難易度)チャートです。
出典:https://bitinfocharts.com/comparison/dash-difficulty.html
ASICマイナーが参入したことで採掘難易度が最大10倍に上昇したことがわかりますね。ASIC導入直後は1日$200以上あった利益は難易度が上昇したことで1/10以下まで低下し、現在では報酬よりも電気代の方が高い状況で利益が全く出なくなっています。
GPUのようにマイニング以外の用途がないASICは利益が出なくなると使い道がなくなることから海外では「Brick(煉瓦)」になると表現されます。
また、ビットコインよりも時価総額が低くトランザクション数が少ないアルトコインでASICが導入されると、コインをHODLしようとするインセンティブが低いマイナーの売り圧力によって通貨自体の価格も下落する傾向があるようです。ASICマイニングが開始されたSiacoin(SC)は価格が下落していますね。(Decredも一時下落しましたが現在は上昇中)
出典:https://coinmarketcap.com/ja/currencies/siacoin/
ASICが導入されると収益率の上昇というメリットがある反面、デメリットもあります。
・シェア7割を誇るBITMAINによるマイニングの中央集権化
・使用電力の上昇による環境負荷
ASICによるマイナーの中央集権化を嫌う開発者側がハッシュアルゴリズムを変更するハードフォークによってASICを無効化する事例もあります。
モネロ(XMR)は、CryptoNightのASICが開発されたことで、ASIC耐性のあるCryptoNightV7に変更するハードフォークを実施しました。Vertcoin(VTC)やモナコイン(MONA)もアルゴリズムをScryptからLyra2REv2に変更するハードフォークを行いASICを無効化した過去があります。
Zcashの場合はどうでしょうか。ファウンダーのZooko氏はハードフォークに否定的な発言をしているので、ASICを受け入れることが予想されます。
Ugh. I don't want to deal with this. I don't believe that any proof-of-work change can achieve what we really want, which is decentralization and attack-resistance. (But I do want to change the Equihash params anyway to make BTCRelay a lot cheaper for Ethereum interop.)
https://twitter.com/
ZcashフォーラムではASICを受け入れるどうかを盛んに議論しています。
“Let’s talk about ASIC mining” https://forum.z.cash/t/let-s-talk-about-asic-mining/27353
Zcashと同じアルゴリズム Equihash を採用しているビットコインゴールドはASICに否定的でハードフォークを実施する可能性が高いですね。
BTG's purpose: counter the centralization and control of mining by ASIC/specialty hardware.
Our purpose has not changed. We WILL UPGRADE our network to counter them!
Money spent on special hardware to mine BTG will be money lost. 👎
https://twitter.com/
Equihashを採用しているアルトコインがハードフォークせずにASICが導入されると、GPUマイナーの収益率は下がり続け、いづれ利益が出なくなることが予想されます。Equihashを効率的に採掘できるNVIDIA GPUマイナーへの影響が大きくなるはずです。
この場合、GPUマイナーはEquihash以外のアルゴリズムを採用している通貨に切り替える必要があります。
GPU別の損益計算は「WhatToMine」で行うことができます。
GTX 1080Tiの場合、利益率が最も高いのはRavencoin(RVN)になります。2018年1月3日にローンチしたRVNは、ASIC耐性のあるハッシュアルゴリズム「X16R」を採用した暗号通貨です。直前のブロックのハッシュ値を基に16種のアルゴリズムの順番をランダムに変更する事で、ASICの開発を難しくしています。
GTX 1080Tiは、ハードフォークが行われる可能性が高いBTGや、モナコインを採掘しても利益が出る状況です。イーサリアムに関しては、オーバークロックツールを使う事でハッシュレートを最大55 MH/sまで上げることが可能です。
Antminer Z9 miniの発売により、ASICマイナーには多大な利益をもたらす可能性が高くなります。ただし、過去にASICが導入されたアルゴリズム同様、高収益が期待できるのは最小の数ヶ月間のみで、難易度が急上昇することで利益率は徐々に低下することが予想されます。
Zcashの場合、現在の価格で難易度が約10倍になるとGPUマイニングと同程度の利益しか出なくなります。また、利益が出なくなるとリセールバリューもなくなるので、売却も困難になります。
GPUマイナーの影響は限定的になるかもしれません。現状、X16RのRavencoinやオーバークロックツールを使ったイーサリアムのEthash方がEquihashよりも利益率が高いからです。ただし、X16Rにマイナーが集中すれば、難易度が上がって利益が出なくなる可能性も否定できません。
ASICでマイニングを行う場合は、1stバッチをいち早く導入し、難易度が上昇する前に採掘を開始して、利益率が低下した時点で売却するのがベストではないでしょうか。
GPUマイナーは、利益が出るコインを地道に採掘し、リセールバリューが高い内にグラボを売却して、ワットパフォーマンスが高いGPUに更新するのがベストな選択だと思います。
Equihashを採用しているアルトコインの開発者やコミュニティの動きも注視したほうがいいです。各コインのフォーラムではASICに否定的な意見が圧倒的に多いので、Moneroのようにハードフォークを決行するコインも出てくると思います。いずれにしろ、各コインの開発者やコミュニティの動きは要注意ですね。
それではまた。