はじめまして。田中遼と言います。今回ALIS初投稿です。
もともと都庁で政策法務をやっていたのですが、ブロックチェーン業界のインフラをつくりたいと思って、この業界に転身しました。クリプト関連スタートアップで働いています。
妻が中国人で姓が張(Zhang)なので、田中と張を両方名乗っています。張遼って、三国志で出てくる武将と同姓同名になっちゃうんですよね笑
ALISβ版リリースおめでとうございます🎉ということで、自分でも始めてみました。
ブロックチェーンに関するちょっとかたい話はMediumで書いているのですが、ALISではなんとなくふっとした感覚的なことを書くのが合ってそうかなという印象があり、ゆる〜く書いていきたいなと思います。所属とは関係なく、個人的見解を書いていきます。
さて、タイトルについて。
自分がビットコインに惹かれたのは、義父の想いをよく聞かされていたことがきっかけでした。
妻の父、自分の義父は30年前中国から日本にやってきました。義父は中国育ちで、蘇州という、美しい街で育ちました。三国志で呉の国があったあたりです。中国最長の河川、長江が流れる水の都です。ヴェネツィアのように水路を船で移動する姿を今でも見ることができます。
義父の親族は代々この蘇州でも有名な平江路に土地を持っており、義父はその土地で育ちました。先祖代々のこの土地が、中国政府に収用されたことを受けて、義父は「自由がほしい」と日本にやってきたのでした。
はじめてビットコインに出会ったとき、僕はこのエピソードを思い出しました。
これはたまたま数十年前の中国で起きたことですが、人類の歴史を振り返れば、個人の資産が権威によって収奪されることは日本を含め世界中で歴史的に繰り返されてきたし、今この瞬間も世界中で起きていることです。僕は歴史が好きなので、人間が何度も同じことを繰り返してきたことを理解していました。義父の場合は、失ったのが先祖代々の愛着のある土地だったと。こうして個人の土地を国家が奪ってしまうのは極端な例ではあります。
日本のようないわゆる裕福な先進国にも当てはまりそうなもっと穏健な?例でいえば、インフレによって物価が高騰することで国民の現金資産を目減りさせてしまい、実質的に貨幣を発行できる国家が国民から富を奪うということもよくある話なんですよね。実際、リーマンショック以降、世界の先進国では貨幣を増やしまくっています。通貨を増やしてインフレさせ続ける施策は、普通に考えて持続可能性がないですよね。いつか国民がツケを払うことになります。
そんな中で生まれてきたのがビットコインです。ビットコインとは、どんな権威にも奪うことができないお金を人類が初めて手にした技術だと思っています。国家からの「耐検閲性」を個人にもたらすものだと。国家に奪われないお金は個人の選択肢を広げることになると確信しました。個人が手にする新たな資産としての可能性です。
自分の友人でも、中国など個人資産の持ち出しに制限のある国や、国際送金の難しいアフリカに家族を持つ人などは、同様にビットコインの革新性をイメージしやすいようです。一方で、普通に日本で暮らしていると、こうした感覚を持つことは難しいかもしれません。日本は銀行システムが発達していて、国内で暮らすには不自由のない素晴らしい国ですから。
ALISをはじめ、イーサリアムに興味を持っている方と話していると、ビットコインの掲げる国家からの耐検閲性というテーマよりも、GoogleやFacebookのようなWEB上の中央集権組織からの耐検閲性という、いわゆる「WEB3」のテーマに共感してブロックチェーンに携わる人が多い印象です。
ビットコインの掲げるお金のテーマも、イーサリアムの掲げる個人のデータ管理の問題も重要であり、両方とも関心を持つ人が増えたらいいなと僕は思っています。そんなこんなで、個人的には、日本人が重要性を見落としやすいビットコインについて発信することが多いです。
さてさて、現在の義父の先祖の土地ですが、近年めざましく開発され、蘇州有数の観光スポットになっています。さらに、土地の一部を国が人々に住宅として提供しており、多くの人々が生活しています。これはこれで素晴らしいことです笑
その意味では、義父一家が土地を独占しているよりも、富が再分配されて良い環境がつくられているのかもしれません。これはこれで一つの国のあり方かなあという気もします。僕は中国はひどい国だとか言うつもりは毛頭ありません。これは中国だから起きた特別な問題ではありません。人類が歴史的に繰り返してきたテーマだからです。日本でも形は違えど、将来的に起こりうることだからです。
僕には国民の資産を国が管理することが良いのかよくないのかはわかりません。ただ、個人が国に奪われない資産を持つことができなかった時代より、ビットコインのような耐検閲性を備えたお金のある時代のほうが、選択肢があって豊かだなと思うのです。
ビットコインやイーサリアムを始めとしたクリプトはサイファーパンクと言われるように一見過激にも見えますが、実際につくる未来は意外とやさしいものであるような気がしています。