※本稿は過去に筆者が運営していたブログメディアで2017年~2018年に初掲載した記事のリライト版です。
『マインクラフト』がゲーマーへ与えた想像力と自由自在なゲーム体験の影響は大きい。プレイヤーが仮想空間で創作することや、作品をシェアする喜びを同作が社会に広めたことは間違いない。今や教育現場でも教材として使用されることもあるという。
『マインクラフト』以降も多くのクラフト系タイトルがリリースされ、同ジャンルのゲームはブームになり、似たような作品が次々とリリースされた。現在では、そのブームが残した自由度の高いクラフトシステムがゲームのジャンルを飛び越えて再構築された。クラフトシステムは「戦闘」や「育成」といったシステムと同様に、定番の遊び方となった。
『CardLife: Cardboard Survival』は非常にユニークな世界観をもつゲームである。なぜなら、この世界の全てはダンボールで構成されているからだ。地面、花、草、壁、生き物、そしてプレイヤーの操作するキャラクターでさえもダンボールで作られている。
景観や上述のクラフトシステムの継承という点では、『マインクラフト』を彷彿とさせるものの、明らかに『CardLife: Cardboard Survival』は同作とは異なる雰囲気を醸し出している。そこで、筆者はどうしても開発スタジオに「なぜ、ダンボールで世界を作ったのか?」という根本的な質問をしたくなった。
インタビューはFreejamのCEO Mark Simmons(マーク・シモンズ)氏、ゲームディレクター Rich Tyler(リッチ・タイラー)氏へ行った。
――『CardLife: Cardboard Survival(以下、CardLife)』は世界のすべてがダンボールで構成されていますね。この非常にユニークなアイディアはどのようにして生まれたのですか。
Mark Simmons氏: 我々、Freejamはユーザーがなにかをクリエイトできるゲームを開発することに熱心なんです。我々のビジョンは熱心なファンによる、UGC(ユーザー生成コンテンツ)によって、これまでよりもはるかに大きなコミュニティになることです。
我々が最初に開発したゲーム『Robocraft』はユーザーがレゴブロックのようにロボを組み立てることができるものです。一方、『CardLife』ではユーザーにブロックよりもさらに自由で、クリエイティブなものを提供したいと思うようになりました。試作開発に非常に多くの時間を費やし、上手くいったのはユーザーがゲーム中で描画した2Dシェイプを3Dポリゴンに結合させるというモデリングでした。そして、「2Dシェイプを描く」ことと、「3Dモデルを生成する」ということをユーザーが直感的に理解できるように、「ダンボール」を使うというアイディアが生まれたのです。その後、景観もダンボールで構成したほうが面白いだろう、というアイディアが出たのです。
本作のゲームディレクターのRich Tyler(リッチ・タイラー)は仮想ダンボールというシステムでどんなことができるのかユーザーに見せたい、という思いでゲームを開発していました。もし、プレイヤー自身がゲーム内に存在するものをなんだって作ることができるという可能性を示せば、彼らはプラットフォームを利用し、我々が予想しないものを創作していくのではないか、と閃きました。
そこで、リッチは『CardLife』に様々な機能を搭載した、サバイバルゲームを開発するという考えに至りました。そうして、我々は恐竜、ロボット、剣、レーザー銃、クリーチャー、ヘリコプターなどをダンボールシステムで用意したのです。『CardLife』は単なるゲームではありません、ダンボールが全てが生きているのです。本作が上手くいくことを願っています。また、ユーザーがこれまで想像していなかったものが仮想ダンボールで創造できることも願っています。以降の質問は、リッチに答えてもらうことにしましょう。
――本作のワールドの広さはどのくらいですか。
Rich Tyler氏: 現在のところ16㎢ですが、これは我々が様々なバイオームを導入するまでのプレースホルダ(暫定のマップ)です。最終的なマップのサイズは64㎢になるとプランニングしています。
――何人のプレイヤーが同時に遊ぶことができますか。
現在のところ、各サーバーは40人のプレイヤーをサポートしています。しかし、我々はこれをすぐに100人に上げる予定です。すでに、バックエンドサーバーではテスト済みであるため、多くのプレイヤーが入れるようになる予定です。
――NPCキャラクターはいますか。または、今後追加する予定はありますか。
フレンドリーなNPCという意味では現在のところいません。我々は現在用意しているクエストシステムを充実させていく予定です。その後、NPCを実装する予定です。
――巨大なモンスターやボスモンスターはいますか。
そうですね。我々は今後追加予定の膨大なリストがあります。現在、クリーチャーは20種類登場しています。それぞれが異なるサイズで、トリケラトプスやセンチネルゴーレムが最大のクリーチャーですね。今後のアップデートではドラゴンやヒドラ、タイタンなど巨大なクリーチャーを追加する予定です。
――騎乗できるクリーチャーについて紹介してください。
ペットシステムを追加後、様々なクリーチャーに騎乗することができます。陸上は熊、クモ、ラプトル。水中では亀、メガロドン、クラーケン。飛行クリーチャーはグリフォン、キメラ、ドラゴンがそうですね。
――ダンジョンは非常に危険な場所と思われますが、そこではどういったものを獲得できるのでしょうか。
ダンジョンは今後、マップのいたるところに追加する機能です。このダンジョンというのは、多くのモンスターが潜んでおり、彼らはハイエンドなアイテムを守っています。また、非常に高い確率で強力なエリートモンスターがスポーンします。エリートモンスターは本当に強靭なクリーチャーのことで、それらを倒すと「Soul(魂)」をドロップすることがあります。それらを装備すると能力がアップしたり、そのクリーチャーのペット版のダンボールをクラフトできるようになります。
――ダンジョンをクリアすると戦利品はありますか。
本作は非常に巧みに作られています。プレイヤーがダンジョンをクリアすれば、非常に強力なアイテムや「レジェンダリーレシピ(伝説のクラフトレシピ)」を入手できる可能性があります。
――「レジェンダリーアイテム」というものがあるようですが、どういったものでしょうか。
「レジェンダリーアイテム」とはプレイヤーが通常、クラフトできるアイテムよりもはるかに優れたアイテムのことです。これらのアイテムをクラフトするには「レジェンダリーレシピ」が必要になります。レシピはダンジョンのチェストを調べることで入手できる可能性が高いでしょう。
――『Robocraft』は日本のゲーマーにも、よく知られているタイトルです。同作の開発経験は『CardLife』にどのように役立ちましたか。
マークは『Robocraft』が我々にとって、初めてのユーザー生成コンテンツに触れた作品だったと言っています。我々はこの作品から非常に素晴らしい知識を得ることができ、その知識を『CardLife』に持ち込んでいます。最も大きい教訓は「クリエイティブのプロセス」と「コンテンツ生成」を「競技性のあるゲームプレイ」から分離するということです。どういうことかと言うと、『Robocraft』では戦闘で競争力を発揮するには、一定の方法で作成する必要があったのです。つまり、見た目を重視するとパフォーマンスが悪くなりがちなのです。
『CardLife』では、あなたがどんなキャラクターを描いても、どんな風に装備品やペットのビジュアルカスタマイズをしても、戦闘のパフォーマンスに影響しません。これにより、プレイヤーが自由に創造することができます。
――あなたたちはどのくらい『CardLife』を開発していますか。
2年ほど前から小さなオンラインタイトルとしてSteamとは関係のないウェブサイトからリリースしていました。そこで、ユーザーからのフィードバックを集め、今回のSteam早期アクセスに向けて準備していました。我々の旅はここから始まるのだと思っています。
――開発期間中の印象的なエピソードがあれば教えてください。
先ほども言いましたが、我々は『CardLife』を自身のウェブサイトで販売していたのですが、開発期間中にいくつかエキサイティングな経験をしました。まず、ゲーマーからの反響に感激しました。1つ目は我々がストアで販売した際に文字通り一分もしない内に本作が売れたのです。当時はオプション購入だったのですが、その段階からサポートしてくれる人がいることを知りました。2つ目はYou Tubeのクリエイターによる膨大なサポートですね。最初の動画の再生回数が100万回を超えたことは特別なことです。
――『CardLife』を購入すると、アートワークとサウンドトラックを収録したDLCがダウンロードできると聞きました。
その通りです。『CardLife』のDLCにはアートワークとサウンドトラックが収録されています。
――本作の世界をデザインするにあたってのこだわりについて教えてください。
ダンボールは国境を超えても共通のメディアとなるので多くの説明を必要とせず、驚くほど自由なのです。サイエンスフィクションやファンタジーなど異なるジャンルや機能を『CardLife』に取り入れる際、ヘンテコな印象を与えずに実装することが可能です。それは我々をデザイナーとして代わり映えのない状況に陥ることから解放し、ユニークなものを創造する自由を与えてくれるのです。
――ゲームにおけるサウンドトラックの影響は非常に大きいと思われます。どのようなことを意識して制作したのでしょうか。また、どのようなテーマを以て、臨んだのでしょうか。
Simone Cicconi氏: ゲームを遊んだ時、プレイヤーが感じるであろうことをイメージしました。私の作曲は非常にエモーショナルになる傾向があります。メインメニューでは叙情的なテーマの楽曲にしました。これはトレーラーにも使用され、『CardLife』のアイディアを簡単に表現するものでもあります。ゲーム中は夕暮れや夜明けに楽曲が流れるため、地下で長く時間を過ごした際に時間を知らせるという機能でもあります。深く掘り進めていくと、より強い悪魔のようなクリーチャーに遭遇するでしょう。その際の音楽はあなたの恐怖と一致するでしょう。
――日本のゲーマーへメッセージをお願いします。
Rich Tyler氏: 私は日本のゲーマーは情熱的で知識が豊かであると思っています。『Robocraft』では彼らのクリエイティビティに感激しました。『CardLife』でもそのクリエイティビティを以て、我々と共にこの度を続けてくれたら嬉しいです。
Mark Simmons氏: 我々はこれまでに多くの日本のプレイヤーの遊んでもらって非常に幸せです。あなたたちは世界で最もクリエイティブな存在です。『CardLife』では日本の皆さんがどんなものを作るのか知るのが今から楽しみです。開発のキャリアの中で最も誇らしいのは、我々が想像もしなかったようなものをユーザーが作っていた時です。皆さんがなにをつくるのか我々に見せていただければ幸いです。『CardLife』を楽しんでください。
『CardLife Cardboard Survival』Steam ストアページ