※本稿は2017年に筆者が運営するブログメディアに掲載されたインタビュー記事のリライト版である。現在とは仕様や運営体制が異なる場合があるため、その点に留意して読んでもらいたい
人狼FPSはどのようにして生まれたのか
――「Deceit」は人狼FPSという非常にユニークゲーム性です。アイディアはどのように生まれたのですか。
本作のアイディアは開発スタッフがさまざまなものから影響を受け、生まれました。我々は各自持ち寄ったアイディアを織りまぜながらゲーム性を考えました。例えば、マネージングディレクターのJamesと古いボードゲームの『人狼ゲーム』について話している時に浮かんだアイディアを取り込んだりね。我々はまだ「バイオハザード」シリーズのようなホラーゲームから学ぶことがたくさんあると思っています。また、心理戦で言うと『マフィアゲーム』や映画の『遊星からの物体X(原題:The Thing)』、そして僕が好きな漫画『Doubt』も参考にしました。
※Doubt: 月刊少年ガンガンにて2007年から2009年まで連載されたデスゲームを題材とする漫画。
――あなたたちが恐怖を生み出すためにこだわった点はなんでしょう。
『Deceit』のレベルデザインは、プレイヤーたちを対立させるように設計にしました。互いが互いに疑いを持つように構築しました。もし、そんな心理状態であのマップにいたら「ここは安全じゃない」とか「危険だ」といったように感じるでしょう。何かの悪意に接触してしまうかのような感覚。そういった体験を持たせるような意図があるんです。我々はプレイヤーに「周囲に何があるか分からない」「でもそこに留まるべきなのか?」「それとももっと良い場所に行くべきなのか?」そういった模索と発見による恐怖を何よりも感じて欲しかったんです。
――このゲームには2種類のスリルがあると思っています。一つ目は心理戦による駆け引きによって生じるスリル。二つ目は恐ろしい姿に変身できる感染者がもたらす恐怖によるスリル。これらの開発で苦労したものはありますか。
君が言ったようにその2つのスリルのバランスを取ることがとても難しかったんです。恐怖というのは「恐い!」とプレイヤーの心が感じる「何か」である必要があリます。我々が仕掛ける恐怖の中でも、そうした差し迫るような種類の恐怖はプレイヤーにその場から逃げたいと思わせなければなりません。しかも、それは心理戦というゲームの形を留めたままで。なので、2つのスリルを同時に保つことは想像以上に難しいものでした。ましてや、我々はさらにゲームを良くするためにアップデートによる新機能も導入するため、そのたびに恐怖のバランスを確実に保たなくてはいけません。
――もし問題なければ、今後追加されるギミックや追加要素を教えてください。
今後の追加要素については公式ウェブサイトにいくつか記載しています。我々は多くの追加要素を加えて『Deceit』を完成させたいです。現在のゲームにおいて、人気のあるシステムを取り入れて良いものにして予定です。例えば、あなたがどこから撃たれたか、それを知らせるためのインジケーターとか。
――『Deceit』はコンソール版リリースの予定はありますか?
我々は少なくともひとつのプラットフォーム向けにリリースするため、さまざまな調査しています。しかし、我々はそのためにもPC版の開発を進める必要があリます。
――現在のゲーム業界は面白いゲームであれば世界のどこからでも話題と注目を集めることができるように思います。あなたたちはそうした点で発見や驚きはありますか。
我々はまずアジアでの『Deceit』の人気の高さを知った時に驚きました。特に中国では面白いことに本作が中国の有名なゲームに似ている、っていう理由でね。また開発者目線で述べると、異なる文化や背景を持ち、違う場所に住む人たちが協力して、ひとつの仕事をしようとすることは本当に最高です。ゲーム業界にフォーカスすると、小さなスタジオはクリエイターたちが開発を楽しんで、幸せを感じているような傾向があります。他の作品が上手くいった時、我々は自分たちのことのように嬉しくなります。実際、我々は時々『Deceit』のDiscordサーバーに来る、開発希望の方々の経歴を聞いた上で、他社を紹介したりすることもあります。
――あなたたちが影響を受けた日本のゲームはありますか?
『Deceit』の開発において特定の日本のゲームに影響を受けたことはないのですが、もし気になるゲームがあレバ、今後ぜひ参考にしてみたいと思っています。しかし、私は多くの日本のゲームや偉大なゲームクリエイターを尊敬しています。私が行き詰った時に思い出すようにしているのは宮本茂氏の語った「ゲーム作りはゲームを遊ぶほど簡単じゃない。けど自分自身への挑戦と新しい何かを見つけようとしているんだ」という言葉です。
それからこの前、ヨコオタロウ氏のドキュメンタリーを観たんですが、凄くインスピレーションを得ました。私はクリエイターとして、彼と自分のチームのJamesに類似点を感じました。自分たちのプロジェクトに対して全ての情熱を注ぎ込むことは素晴らしいです。
それからこの前、仕事の休憩中にJamesとプロデューサーたちと昔の日本のゲームについてずっと話していましたよ。『Mother2』とか『聖剣伝説2』についてね。
――最後に、日本の『Deceit』ファンへメッセージをお願いします。
『Deceit』を遊んでくれて本当にありがとうございます。楽しんでくれていると嬉しいです。我々は本作の開発で多くのことを学びました。次回作はもっとみんなを興奮させられることを願っています。