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クリスペオフでキャンプ行ってきた!!

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  • Zucky
  • 2023/05/26 04:37

今回は記念すべき人生で2度目のオフ会に行ってきたのでその思い出を残そうと思う。

何のオフ会かといえば、もちろんクリスペだ。

メンバーはわしの他にはゆらD椰子姐えいじさんの計4名。

場所はキャンプという事で山奥。

前回参加した総勢60名の新宿GOXで開かれたオフ会に比べれば、今回は少人数だし、場所も歌舞伎町とかいうヤバそうな場所ではないし、電子ドラッグでラリッたり異星人に人身売買してそうな怪しい建物もない人里離れた山の中で、ヤクザもジャンキーも触手もマッドドクターもゴリラもネギャルも居ないことがわかっていたので、流石に小便を漏らす夢は見なかった。

前回のオフ会の様子はコチラ

・前前編

・前編

・中編

・後編

 

それに前回のオフ会で今回の3人とは顔を合わせており、ゆらDとえいちゃんとは直接挨拶も済ませてあったので、それほどビビることはなかった。(でも直前で緊張してトイレでうんこ漏らした。安心してほしい。ちゃんと便器の中に漏らした。)

人見知りのわしも成長したものだ。感慨深い。

とはいえ、もともとこのオフ会が決まったのはかなり前で、各々の予定を合わせた結果、発案から約1年越しに実現した形となったため、長い準備期間のなかでお互いにDMでやり取りしているうちに自然と仲良くなっている気がして、知らない人に会うような感覚もそれほど無くなっており、心理的ハードルは低かった。

触手を生やされたり、生死の狭間で詰めクリスペをさせられたり、玉を食いちぎられそうになるような、そういった類の恐怖感、前回のオフ会でわしの中に植え付けられたトラウマに襲われることもなく、純粋に「楽しみだ」という感情だけで挑むことができたのでよかった。今回のオフ会を企画してくれたゆらDに感謝!

 

当日は、とりあえずキャンプ場から最寄りのスーパーで待ち合わせ、その後近くの釣り堀に向かい、釣った魚を美味しくいただこうという流れ。

 

無事に昼過ぎにスーパーで合流できた我々は、食材やら酒やらを調達する。

「カレーが食いたい」とわしが言ったのでカレー用の野菜を購入する。

そして米。

「ご飯?お米炊くなら土鍋っしょ!土鍋で炊いたお米が一番美味いんや!」とわしがわがままを言ったので今回はわざわざえいじさんに土鍋を二つも持ってきてもらっていた。

次に、強力粉、バター、ドライイーストなどのパンの材料。

これも「朝はパン!」とわしが決めたからだ。

「夜にみんなで捏ね捏ねするんやで!」と息巻いた。

「え?朝のパンはすごくいいと思うんですけど、捏ねるってなんですか?その辺がイメージできないんですけど...?」

と戸惑うゆらD 、椰子姐、えいじ達...

「ドライイーストを入れて発酵させた後にダッチオーブンで焼くとなんやかんやでパンができるんやで!!」

と、よくわかってない3人を押し切ったわし。コネコネしたかった...。とにかくみんなでコネコネしてみたかった。

ちなみに米とパンが食べたいと言ったにもかかわらず、わしはしゃもじもパンをこねるためのボウルも忘れていた...。申し訳ない。とりあえずしゃもじっぽいナニかを無駄に購入しボウルは気合で何とかしようという事になった。

そして牛タンとカツが担当の椰子姐はしっかり下準備していたので特にここで食材を買う必要はなかった...。ほぼ、わしのためのスーパータイムだった...。すまん!

あとは椰子姐が鼻の下を伸ばしながらお酒を放り込んで買い物は終了した。夜が楽しみだぜ!

そして次に釣り堀へ向かう。

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BORITURI

レンタルした竿代で1キロまで無料。とりあえず一人2匹も釣れば十分だろうという感じで竿は2本借りて2キロ調達する流れに。

くっくっく...この時を待っていた。都会人どもめ。見ておれ!

正直、前回のオフ会ではわしは立ち並ぶ摩天楼、煌びやかなショーウィンドー、猥褻物陳列街に目を奪われては右へ左へきょろきょろとしては首がちぎれそうになったり、見たこともないような人ごみの圧迫感や、周囲に飛び交う韓国語に圧倒されて吐きそうになっていたのだ...

だが、今日は違う...!田舎はわしのホーム!!

どれどれ、若造共め...きっと臭くて餌に触るのもためらうに違いない、ここは竿を投げ入れるところまで優しくエスコートして、なかなか釣れずに困っているところをわしがカッコよく助けてやろう...ぐっへっへ。

なんて思ってたらためらいなく餌を付けて竿をヒョイと投げ入れるえいじ。

か、カワイイ顔してやるじゃねぇかよい。もっとキャー!とかうわぁー!とかビビったっていいんだぜ??

まさか、そのまま釣り上げてしまうのか!?と思ったりもしたが、流石に1度目では上手くいかなかった。

(ふんっ、振り上げるタイミングが早い...それに、手首のスナップが甘い...青いな。えいちゃんよ...。)

冷静に分析するわし。正直安心した。

えいちゃんが2回トライしてダメだったのでわしが手本を見せることに。

 

っしゃ!見ちょけよ!シティボーイ共!!普段みんながWi-Fiだの5Gを浴びながら過ごしてる中でわしはマイナスイオン浴びながら過ごしとるんじゃぁ!

 

華麗に竿を垂らすわし。

数秒後、腕先に走るヒキの感覚!!キタ!!!

いまだぁああああ!!

 

竿の先には何も付いていなかった...。

空振りである。

 

その様をバッチリと椰子姐に見られてしまった。

「こ、これはその、あの...」

言い訳を考えていると横でえいちゃんが普通に釣り上げていた。

次に椰子姐も1発クリア。

続いてゆらDもクリア。

コツを掴んだえいちゃんは即座に2匹目も釣り上げた。

わしだけが空の竿を何度も水面にヒョイヒョイと上げ下げしていた...。

 

あれ?思ってたんと違うぞこれ。

てかみんななんで釣った魚すぐ触れちゃうの?針取れんの??

そこはもっとキャー!!!とか右往左往するところでしょうよ!

魚がバタバタ暴れてるし、触るとヌルヌルしてて気持ち悪いから、怖いしキモくてあたしできなぁーい!!!とか泣きべそかくところでしょうよ!!

そこをわしが、ヤレヤレだぜ...!とか言いながら助けてあげるところでしょうよ!!

普段舗装路しか踏んでないようなITボーイ達が簡単に山で魚釣ってんじゃないよ!

 

男子だった。皆普通にしっかり男の子だった。

 

あっという間に2匹釣り上げる都会人たち。

わしだけが坊主の時間が続き、プレッシャーに押される中なんとか1匹釣り上げる。

目標は1人2匹、しかしこのままわしが続けたら日が暮れそうだ...。

そう思っているとえいちゃんがリーサルを見逃さず3匹目を吊り上げてくれた。

 

完。

 

結果、本日の釣果はわしが最下位ということが確定した。

いや、別にそんなんじゃねーから。はじめっから競争とかしてねーから!

みんなでワイワイ楽しんで、魚がたべれればそれでいーから!!目的達成してっから!

あは!あははは!!とか自分を慰めてたら、測量所でおっちゃんが

「これあと2匹イケるよ!!」

と教えてくたのだ!!

これは挽回のチャンス!!

せっかくだから釣っちゃうか!と再び竿を下ろしに行くことに。

よし、ここでわしが爆速で2匹釣り上げれば本日の1位タイ!!巻き返せる!!

思わぬチャンスにウキウキしながらも、先程魚を触ってヌルヌルしていた手を水道に洗いに行くわし、こんな手では竿が握れぬ。ここからは先はミスれない、万全のコンディションで挑まなければ...!!!

手のヌメリを念入りに落として釣り場へ戻ってみると、ゆらDが既に1匹釣り上げていた...

泣きたくなった。

この時点で

 

えいじ 3

ゆらD 3

椰子姐 2

わし  1

 

という状況...!

まずい!最下位!わしだけ魚釣れてない!働かざる者食うべからず!このままでは人様の魚にたかるじじいになってしまう!!

ここで釣れればまだ椰子姐と同着!仲良く平らに終われる!!!

 

なんて焦っていると、優しい椰子姐が竿を譲ってくれたのだ。

「じゃあ、ミスったら交代でいきましょーか!」

という感じにわしに花を持たせてくれたのだ!ありがとう!椰子姐ェ!!

わし、絶対釣るよぉ!!!!

ぎゅっと握りしめた竿に力を込める...ここでミスったらタマ無しヤローだ。

椰子姐がくれたこのチャンス...無駄にするわけにはいかねぇ!!!

 

思い出せ!

 

目標をセンターに入れてスイッチ…!

目標をセンターに入れてスイッチ…!

目標をセンターに入れてスイッチ…!

目標を…いまだぁあああ!!!  

 

_人人人人人人人人人_

>パターン青 鱒です!<

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

 

 

スンッ...!!

 

振り上げた竿には何もかかっていなかった...。

 

 

 

虚しく漂う釣り針、泣きながら竿を託すわし。

次に椰子姐が竿を垂らす、5秒で釣れた。

 

結果、えいじ3,ゆらD3,椰子姐3、わし1という大敗を喫した。

ホームグランドでボコボコにされるスポーツチームの気持ちが少しわかった…。

いいのだ、ゲストに華を持たせた、そう、つまりはそういう事。大人の対応ってやつよ。うん、楽しかった楽しかった!!これで、これでよいのだ...!!(血涙)

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なんとか自分を納得させ、いざキャンプ場へ。

まずは暗くなる前にテントとタープを張らねばならない。

今回はわしが持ってきたモノを使うことに。

「ズッキーさん、向きとか位置とかどんな風に立てます?」

率先してやることはないかと聞いてくるみなさん!みんないいひと!キャンプ1回目のえいちゃんも、経験不足だからと引っ込むことなく動いてくれる...!!感謝!!

ギア所有者であり、一番キャンプ経験が多そうなわしに最重要であるレイアウトを委ねるのも当然の流れ...!

この工程をいかに時間をかけずスムーズに行えるかで後のスケジュールが変わってくる...この後に控える夕食と温泉…カレーには仕込みが必要、米も炊かねばならない、当然火を起こす必要もある...温泉の露天サウナは20時までだ...みんなで落ち着いて一服つける時間も欲しい。もたもたしてはいられない。

だからわしは声を高らかにはっきりと指示を出さねばならない...!

 

 

 

「わかりません!!」

 

...と。

 

実は、テントもタープも借り物だったのだ。

その大きさや形、張り方などは話でちらっと聞いてきたぐらいだ。

正直、開いてみればなんとかなるだろう、ぐらいの感覚でもってきていた。それにこの場にはクリスペのコロシアムや大会上位に名を連ねる知恵者が3人もいるのだ!何とかならないわけがない!!クリスペプレーヤーで活力のみなぎっているこの3名にわしは絶対の信用を置いていた。

 

とりあえず開くテント。

まずは仮展張(無駄な工程)をして形と広さを確認する、次に本決めだ!

えいちゃんや椰子姐にはペグの仮打ちをしてもらう。

インナーテントとフライシートのつなぎ目がよくわからない。

その辺はゆらDに丸投げをする。

ロジカルにテントの構造を把握し効率的な張り方を模索するゆらD!そのゆらDと息ぴったりにテキパキと動き回る椰子姐!必要そうなものを用意したり動けるスペースを確保してくれるえいちゃん!オロオロするわし!!

いける!この4人なら!確実にイケるって!!このキャンプサイトでテッペンを狙えるポテンシャルをぐいぐいと感じる!!素晴らしいチームワーク!手際!間違いなく今俺達が一番輝いてる!!さすがクリスペ!

 

そうこうしてるとテントの位置が決まった!いいぞ!次はタープだ!

 

「ズッキーさん。タープはどの位置に張ります??」

 

「わかりませんッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という感じに、グダグダしながらもなんとか無事にテントとタープを張り終えることができた。が、この時既に日は傾き始めていた...。

 

とりあえず一息ついて、買ってきた食材とこの後のメニューの確認だ。

温泉前の前半戦でなにを食すか!

魚、カレー、焼きそば、牛タン、鹿カツ、パン...。

「このゆで卵ってなにに使うんですか?」

不思議そうににクーラーボックスからゆで卵を取り出すゆらD...

 

「あーそれは焼きそば乗っける目玉焼き用の卵で...ゆで卵!?」

 

思いっきりゆで卵って書いてあった...。

しょうがないからカレーに使うことにした。

そしてパンに使うバターも買い忘れていることが発覚。ボロボロである。

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とりあえず魚焼いてカレーを食べることに。

急いで火を起こす。この辺はスムーズ。

続いてカレーの材料をダッチオーブンへぶち込む。

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並行して米を炊く...と、ここで1つの問題が発覚した。

どうやって土鍋で米を炊くのか?だ。普段から炊飯器でしか米を炊かない男4人はここで途方にくれたのである。

そもそも土鍋で米を炊くことを言い出したわしは、そんなものはどうせ誰か知ってるかもしれないし、わからければ現地で調べればいいしょ♪とか思っていたわけだが...

 

なんとキャンプ場は圏外だった...

 

ここで釣り堀での些細な会話が思い出される...。

ゆらD「僕達3人みんな楽天モバイルなんですよ~」

わし「え!?わしも...。」

一同「まじっすか!じゃあみんな楽天モバイルじゃんwwww」

わし「うわーこんなことってあるんですねぇーwww」

この辺りからなんとなく嫌な予感はしていた...。

 

「あの、わし今、米の炊き方調べようとしたら圏外で、だれか調べられる方いませんか?」

 

「「「・・・・・」」」

 

スマホを眺めては俯き、顔を伏せる4人...

 

詰んだ。

 

 

ちなみに今回のキャンプ場を指定したのはわしだ。

割と近場に住んでいるにもかかわらず、山の中でも誰かしら電波入るっしょ♪とか思って下調べや現地調査を怠ったのだ…まさか4人揃ってクソザコ楽天回線とか想像できないじゃん!ばか!!!

 

 

「なんだっけ、でもなんか炊き方聞いたことがあるような...はじめにょろにょろ...」

「あっ!わしも!わしも聞いたことあるそれ!!」

 

「はじめそろそろ...」

「はじめゴロゴロ...」

 

「はじめチョロチョロ中パッパ!!??」

 

「「それだ!!!」」

 

 

「え、でも"はじめチョロチョロ中パッパ"ってどういう意味なんすか?」

 

「「「「・・・・・・・」」」」

 

詰んだ。

 

 

そもそも水の分量もわからない。土鍋に線など引かれていない。

とりあえずフィーリングで炊くことにした。

人生はフィーリングよ。だいたいそれでなんとかなる。

なあに、米は4合ある、まずは2合で小手調べよ。どうせ沸騰したら蒸らして~とかそんな感じなんだろ??なんだかんだで上手くいくっしょ!

 

米のことはそう思い込んで忘れることにして、カレーを温めていく。

もちろんダッチオーブンでのカレーの作り方なども調べてきていないし、調べることもできない。全てはぶっつけ本番。なるようになれ。レット・イット・ビーなのだ。

適当に蓋を開けてみると、ダッチオーブンでイイ感じに柔らかくなった鹿肉と野菜たち...これいいんじゃね?的な雰囲気を醸し出している。これだよ!いい感じゃねぇか。

しかし、しっかり水を入れたはずなのになんかめちゃめちゃ水分が減っていた。とりあえず水を足してルーを溶かしてみる。

イイ感じにトロってきたので味見をするも、なんかめちゃめちゃしょっぱい。

水分どこ行った??

さらに水を足して温めなおしてみることに。

 

そうこうしているうちに米が炊けた。と思った。

なんかいい匂いしてるし、ちょっと前に沸騰もしていたからだ。

いざ実食してみることに...。

 

 

失敗だった...。

 

 

めちゃめちゃ芯が残っている上に嚙んでいると唾液を全て吸い取られて窒息死しそうになった。原因の究明が急がれるがもちろんわからない。インターネットがないからだ。今回はたしか始めから強火で攻めて、沸騰したら適当に放置して蓋を開けたようなノリだった。どこが違うんだ???とりあえずこちらも水を足して温めなおすことに。この辺はえいじさんにお願いした。土鍋持ってきてくれたし、勝手に米炊き大臣にした。

 

数分後、炊きあがるお米。再実食!

 

美味い!普通に食べれる!えいちゃん!あんたすげぇよ!!!調整力やべえ!わしの目に狂いはなかった!!!ありがとうえいちゃん。

 

というわけでカレーをかけて食べることに。

カレーの方も若干しょっぱさが残るものもジャガイモホロホロ、お肉も柔らかジューシィーな仕上がりで普通においしかった。

多少失敗しようとも、キャンプご飯とは美味しく感じるのだ。

皆で作って3割増し、皆で食べて3割増し、お外で食べて4割増し。不味いわけがない。

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魚は炭焼きで食べた。美味かった。

多分食べきれないだろうという事で、燻製器も用意しておいた。

同時にチーズと魚の燻製も仕込んでおく。

しかしまたしてもトラブルが発生した。

燻製器の中に魚を吊るすフックがなかった...。。

これでは魚を燻製に出来ない。

 

ちなみに燻製器を用意したのもわしだった。

 

困っていると椰子姐がどこからともなく何に使うのかわからないフックを1つ見つけてきて貸してくれたので何とか1匹は燻製できるようになった。ありがとう椰子姐。

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そんなこんなでとりあえず鱒の塩焼きとリバイバルライスONソルティカレーを平らげてお腹も膨れたし、時間もいい時間になってきたので温泉に行くことに。

ここでの温泉へ行く目的にはただ汗を流すことだけではなく、電波のある人里へと下りて、土鍋の米の炊き方等を調べてスクショを確保すること。そして買い忘れた食材を調達しに行く重要なタスクも含まれていた。

 

道中、サウナ好きと豪語する椰子姐とえいじ。昨今のサウナブームをしっかりと抑えて楽しんでいる様子、流石だ。

 

わしはサウナは中学生ぶりだ。

正直、熱気でカラカラになる喉やその後に入る水風呂も気持ちいいどころか心臓止まりそうになって嫌だった。どちらかと言えばぬるいお湯にいつまでも浸かってボケーっとしている方が好きだ。

 

しかし、この2人が「好きだ」というならばわしも試してみるしかない。

なるほど、サウナか、いいだろう。見極めてやる!

 

「トトノウ」とは何なのかを!

 

正直、熱い部屋に籠った後にキンキンの水風呂に入るなんてただの罰ゲームではないかと思うが、それでどうやら気持ちよくなるらしい。にわかには信じがたいが、"向こう側"とやらに行くには必要な工程らしい。修行僧でもそんなことやらないんじゃないか?熱で脳みそがバカになってしまっているのではないか??そんな疑念がよぎる。

 

というわけでいざサウナへ!

室内は狭い。6,7人が限界かという広さ。

熱い...。

奥の方ではじいさんが俯いてぜぇぜぇ言いながら涎をダラーっと垂らしている。

今にも死にそうだ...。おいおい、大丈夫か?ここまで追い込まなけばいけないのか???わしはあんな風に虚ろな目で汗や涎を垂れ流すような醜態は晒したくないぞ?

見ればその隣に座っている常連風の男は何やら帽子のようなものを被っていた。

そして、ふと隣に座っている椰子姐を見ると、椰子姐もまた帽子のようなものを被っていたのだ!まさかこの時の為に持参してきていたのか!?恐るべき執念!下準備!それほどまでにサウナには魅力があるというのか!?

とりあえずわしも腰のタオルを見よう見真似で頭に巻いた。帽子のつもりだ。

これで少しは雰囲気が出るだろうか?

わし「いつも何分くらい入ってるんですか?」

椰子姐「7分くらいですかねぇ」

わし「へー」

なんて話をしていると常連風の男が話しかけてきた

常連男「ここのサウナは熱くていいよぉ、さっきは100℃以上あったし」

わし「えぇ!100℃!!?」

温度計を見ると確かに今98℃くらいだ。

常連男「もう1つの方はこんなに熱くないからねぇ~ここはイイよ!」

わし「どれぐらい入ってると気持ちよくなれるんですか??」

常連男「気持ちイイとかあんなん真に受けちゃダメダメ~!自分がもういいかな。て思うぐらいがちょうどいいんだよ。よくトトノウとかいってるけどね、あんなの熱さと冷たさで体をびっくりさせてるだけなんだから!ふわふわしてきた~とか言うけどね、あんなのただ死にそうなだけなんだよ!」

わし「ははぁ~...。」

 

ゆらDは先に出ていった、流石だ。見極めが鋭い。

 

常連男「芸能人とかもサウナで死ぬ人多いでしょ?そういうことよ。この前も...」

わし「ほほぉ~...。」

 

確かに熱さで血管めちゃめちゃ広げた後に水風呂で一気に収縮させるのめっちゃ心臓に悪そう...汗をかいて脱水でドロドロになった血液とその流れ道を一気に引き締めるわけだからいかにも血栓が詰まりそうな話である。

なるほど、みんな臨死体験による幽体離脱感を楽しんでいるのか。恐ろしい...サウナ好き、やべー奴らだ!!!まさに脱法ドラッグ!!たしかに健全に死の淵を歩くにはサウナは効率的かもしれない。少なくともトーヨコキッズのオーバードーズなんかより10000倍マシだ!

しかし、健全?に見えるのこの瞬間自殺、仕組みは思っていたよりも原始的だ。

日本の新たな土着信仰として広がりつつあるニューウェイブのサウナ、我々はまるで科学的土人ではないか、熱して冷やし、熱して冷やし、まるで鋼の体を打ち直すかのごとく繰り返されるそれはトトノウと称されるメンテナスなのか…しかしその先に待ち受ける"向こう側"は、皮肉にも未だ生身の体でいるからこそ体験出来る涅槃なのだ…

 

わしは明かされたトトノウの秘密に衝撃を受けながらも、今回はまだ1回目なので、ほどほどにチキって10分くらいで部屋を出た。

「そこの水風呂の水をかけてマットを洗って、その後体を冷やすんですよ~」

ざぶんと水風呂に浸かる椰子姐、眉一つ動かさない落ち着き様。

まるでインペルダウンの釜茹で地獄を通過した時の火拳のエースかのような貫禄。

わしの番が来た。

触ってみたが、めっちゃ冷たい。あたりまえだけど。

その冷たさにビビるわし。

「えぇ!?これに入るんですか!?」

当然だろ?とばかりに黙って頷く椰子姐。

意を決して飛び込むわし

 

「ひぃいいいいいぃぃぃやぁあああああああ!!!!」

 

思わず変な声が出てしまった。

まるで黒炭オロチに釜茹での刑に処される光月おでんかのような迫力。

ちんちんから上を沈める勇気が出ない。

しかし忘れてはいけない。ここは公衆浴場。

たくさんの漢たちが見ているのだ。わしの情けない叫び声やプルプルと震えている間抜けな恰好も全て彼らに察知されている...。

ぐぐ、ここで醜態をさらすわけにはいかぬ...。このままでは、わしだけならともかく、共に湯に浸かる椰子姐やゆらD、えいちゃんまでもが舐められてしまうではないか!

 

ええいままよ!!

冷えてなんぼのきんたまに候ォ!!!!

 

決死の覚悟で首まで浸かってすぐに出る。死ぬかと思った。

その後は椅子に座って"向こう側"の入口が開くのをただ待てばいいらしい...。

3分ぐらい経っただろうか…下半身になにかじわじわした感覚が湧いてきた…きんたまがヒューーッイと上に上がってくる初めての感覚。

だんだんとボャアーッとした浮遊感のようなものを軽く感じ取れるようになってきたのだ。

なるほど、これがトトノウということか。

たしかに気持ちがいいような気がする。

通はこの工程を何度も繰り返すらしい。

10分を1回、それも水風呂にビビってモタモタしていてもこれだけの効果があるのか…恐るべし!サウナ!

五分ほど遅れて小屋から出てくるえいじ。長い…流石だえいじ。

彼もまた、なんの躊躇いもなく水風呂にざぶんと浸かる。眉ひとつ動かさない…

まるでインペルダウンの釜茹で地獄を通過した時の海峡のジンベエかのような貫禄。

まちがいなく、そこには漢の風格が漂っていた…

 

や、やるじゃねぇかえいじ…!

し、下の毛も生えてねぇ様な可愛い顔して、漢じゃねえか!!!

わしは先程の自分の醜態を思い出して恥ずかしくなった。ひぃぃぇぁあ!!とか叫んだり、これに入るんですかぁ!?とか泣きべそかいていた自分を思い出しては死にたくなった。次は負けんぞ…釣りも!サウナも!!

 

「じゃあ、もう1回行ってきますね。」

 

そう言い残し再びサウナ小屋へ消えていく椰子姐。なんてストイックな…これがトトノイストなのか…爺さんが死にそうになるような焦熱地獄へ自ら身を投じ、金タマが溶けて子孫全滅の危機を迎えたら、今度は骨まで凍りそうなキンキンの水風呂に身を投じてどろどろの金タマをキンキンのタマタマに冷凍する…それを何回も繰り返すというのだ…おそるべし、生粋のスーサイダー、常軌を逸している。正常なままでは見ることの出来ない異常者たちの世界、生死の狭間のユートピアを目指して彼らは今日もその心身をいじめ抜くのだ…おそるべしッッ!!

 

温泉施設といえば、その醍醐味は家庭では味わえないような数々の変わり風呂、足を伸ばせる広い浴槽と開放感である。

低温の炭酸風呂、高温の打たせ湯、ジャグジー、塩風呂、薬湯、露天風呂…

わしならとりあえず全部の温泉に入ってみなければ気が済まない…

目を輝かせながらあっちへざぶん、こっちへざぶん。

しかし、彼らは違うのだ。趣向を凝らした温泉の数々には一切目をくれず、ただ一点を凝視しながら、ひたすら熱く狭い窮屈な小屋と、ただのでかい桶に溜まった冷たい水と、誰の汗が染みているやも分からぬビーチソファーを往復するのだ…狂っている。

 

60分ある入浴時間のおよそ9割をそこへ費やす…"向こう側"へ取り憑かれてしまった漢達…

 

これぞ現代社会の闇ではないだろうか!?わしは先程までま楽しく食事をし、酒を飲んで笑っていた椰子姐とえいちゃんが感情をなくしたマシーンのようにサウナ小屋へ吸い込まれていく様を見てとても怖くなった…サウナ小屋の奥で、虚ろな目をしながら汗と涎と鼻水をダラダラと垂れ流し、呻くように呼吸をしていた死にかけのじじいがフラッシュバックする…

 

いけない。これ以上先へ進んではいけない気がする…。

 

 

とりあえず"トトノウ"とは何なのかは体験できた気がした。完璧に理解はできていないが、なんとかその入り口を垣間見るこができた気がする。むしろ入口だけでよかった。超えてはならない一線を、わしは超えずに済んだ気がした。その幸運と、トトノイスト達の生態を間近で目撃できたことに感動した。

 

そしてそれ以上に、生まれも育ちも年齢も違う、これまで何も接点のなかった男4人が、こうして互いにちんちんをさらけ出して狭い小屋の中に座って熱さに耐えるという奇妙な状況とそれが起きた奇跡に感動した。

この3人に出会い、こうしてオフ会をせねばわしはトトノウことを知らずに人生を終えていただろう。この"繋がり"が、この"体験"こそが財産、ありがとうクリスペ。

 

ちなみにゆらDは、以前"向こう側"に到達した際に、幽体離脱して帰って来れなくなりそうになったらしく、今回のサウナは控えめであった…

常にロジカルで冷静なゆらDまでもが死の淵より蘇りし狂人であることを知りわしは戦慄した…

 

小便漏れるかと思った……都会人は皆狂ってる…やべぇ奴らだ…。

 

 

そしてお風呂上がりのインターネットタイム。

各自必要なことを調べてスクショ。Twitterに生存報告。

えいちゃん、配信ストップになってごめん。

わしもみんなでクリスペしたかった…一緒にコロシアム入ったりTwitter見ながら界隈の動向について話たりしたかった…無念!!とりあえず「優勝してる」と画像付きでイキリツイートだけしておいた。

1日くらいネットがなくてもわしは大丈夫だけど、常にWiFiと5Gを浴び続け、絶えずネットに接続され続けてきた都会人の3人が心配である。禁断症状が出なければいいが…おそらく、今の彼らの状態は陸上の魚、翼をもがれたエンジェル…まるで突然宇宙空間にでも放り出されたかのように不安で仕方がないことだろう、いつもそこにあるものが無い…とてつもない喪失感に襲われているに違いない。すまない!みんな!!

 

そして、温泉をあとにした我々はスーパーで足りないものを調達する。

バター、ボウル、酒。そして今度はゆで卵じゃなくてしっかり生卵をゆらDが入れてくれた。ありがとうゆらD。

あとは鼻の下を伸ばしながら酒に手を伸ばす椰子姐と、隙あらば甘い物に手を伸ばそうとすらゆらDを制止してキャンプ場へ戻る。

 

第2ラウンドの始まりだ!!!

 

残念ながら雨が降り出していて、いろいろと不便だったが、わしが思いつきで適当に張ったタープの形がいい感じに雨を凌いでくれていたのでよかった。(本当によかった)

 

椰子姐のコストコ牛タンタイムが始まる。

完璧になされた下処理。焼くだけで完成する絶品の牛タン!!美味し!!これはたまらない、お米が欲しくなる。

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そこへお米大臣のえいちゃんが今度は完璧な土鍋ご飯を仕上げてくれる。流石だよえいちゃん!

インターネットに触れた我々は水を得た魚のように知識を仕入れ、リベンジを果たしたのだ!!

えいちゃんの持参してくれた地酒も登場し、会場は一気に盛り上がる。

お次は鹿カツである。

わしが捕まえた鹿を椰子姐がカツにしてくれると言う。

そこへえいちゃんオススメの味噌を付けて味噌カツで食べることになったのだ!!エクセレントコラボ!!

キャンプが決定して、実現するまでに「ズッキーさんは鹿獲っといてくださいww」なんて言われていたわけだけども、なんとキャンプの2週間前にめでたく鹿を捕まえることに成功したのだ。

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あぶねー!!間に合ってよかった…!椰子姐も鉄砲で狩猟をやるということで、今回美味しい食べ方を教えてくれることになったのだ!椰子姐パイセンあざす!

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牛タンにカツ!もう皆ご飯がススム君だった!!

 

 

しかしここでまた新たな問題に直面する……。

山奥…夜…といえば…

そう、虫である。

 

よくわからないが、光に向かって飛んでくる。

見たこともない名前も知らない羽虫がヴンヴンヴンヴンヴンヴン飛んでくる。それも割とデカイ。調理中の料理や、配膳された皿の上に飛んできては大変だ…!

我々は日が落ちた中活動する上で、常にこの虫どもに襲われ続けることとなる…わし達と羽虫共との闘いが始まったのである…!安全にゆったりと食事を楽しむには、コイツらは邪魔すぎるのだ!!!

 

幾度となく襲い来る虫共。

初めの頃は手や物を振ることで追い払ったり、デコピンなんかで撃退していたが、段々とそれがこの虫共には通用しないことを我々も理解する。

ついにわしはイライラが頂点に達した。

 

「愚かァッッ!!!」

 

直接指で摘んで、身動きを取れなくする、暴れる虫どもをそのまま、熱々の焚き火台にダンクシュート!!

どうだ、まいったか虫共め、貴様らの矮小さを知れ!!

 

どうして、「愚か」という言葉が出たのかは分からない…

ただ、あの瞬間わしの脳裏には、常に家のリビングから脱走を企てる部屋猫が、ドアを開けた瞬間に廊下へ逃げ出そうと走ってきたところへ、その反対方向におもちゃを投げつけ、それに釣られて駆け出した猫のケツに向けて「愚か!!」と吐き捨ててドアをバタンと閉めて出て行った妻の後ろ姿が鮮明によみがえっていたのだった…

 

なるほど、知恵なきモノ共を嘲る言葉に相応しい…

 

「愚か!!」

 

 

それが極限状態のわしの口から無意識に発せられたのも当然のことだったのかもしれない…

 

わし「こいつら、後ろから指を近づければ避けられませんよッッ!!」

 

以降…我々の蹂躙が始まった。

不思議なことにみんな虫共を捕まえるときに決まって「愚か!!」と叫ぶようになった。

都会人の彼らは虫など触れないかと思ったがそんなことは無かった、皆一様に「愚か!」と口走りながら虫を捕らえては火に焚べていた。

奴らが来る度に、誰かしらが「愚か!」と発しては捕獲して、炎の中に葬る儀式が誕生していた。

段々と数が減り始める虫共…臆したか…虫ケラめ。

いつしか、「愚か」という言葉は、虫共を捕まえるときに発する言葉から、虫共を指す言葉へと変容していた。

それは「愚か」ではない別の「オロカ」……

そう、「OROKA」へと!

 

ゆらD「あ、えいちゃんの胸にOROKAが!」

えいちゃん「愚か!!」

椰子姐「あっ!OROKAきてる!きてる!」

わし「愚か!愚かァ!!!!」

えいちゃん「ゆらDさん足にOROKA!!」

ゆらD「愚か!!!」

 

こうしてOROKA共の襲来と虐殺が繰り返されていた。

我々は誰一人この虫共の本当の名前を知らなかった、故にコイツらの呼称として自然と「OROKA」が定着してしまったのではないだろうか…

 

闇夜に灯るわし達のテント一帯には長い間オロカ!オロカ!という言葉が響いていた…

 

長きに渡るOROKA狩りの結果、ついにOROKA達の襲撃が止んだ…虫ケラでも学習するらしい……。

我々の恐ろしさにようやく気づいたのか、以降穏やかな時間が続いた。

 

落ち着いた頃に、パンの準備にとりかかる。

この時、既に腹も時間もオセオセだったので焼きそばは明日にすることにした。

さぁ、待ちに待った捏ね捏ねの時間だ。

わしはもちろんパンの作り方なんかも覚えているわけがなかった。

憶えているのは「イースト菌」という単語だけだった。

よくわからないが粉を混ぜてネチネチさせたモノにイースト菌を放り込んで寝かせると、醗酵してパンになるらしいという漠然とした理解しかしていなかった。

昔、キャンプでパンをこねて翌朝あったかいもちもちのパンを食べたハッピーな記憶に刺激されて今回挑んだパン作りだが...果たして。

ちなみにその時は一緒にキャンプしたメンバーに女性が居たので何とかなっていたのではないかと後になって気づいた…

 

 

強力粉300g、牛乳240ml、バター30g、砂糖大さじ2杯、イースト菌5g…

 

え、まって?

強力粉300gってどうやって測る?水のカップじゃ測れないよね??うん?

え。まって??

砂糖大さじ2杯って何??大さじって何g???

 

盲点だった。

適当に材料ページとスクショだけしてきていたが、詰めが甘かった…もう、インターネットは、使えない!

つまり調べられない、自分達で何とかするしかないのだ。

強力粉はもうなんか雰囲気で適当に入れた。

砂糖は5gのスティックタイプを沢山買ってある…

どうしたものか…協議の結果、4本分の20gを投入することにした。イースト菌も、もはや感覚頼りに5g投入した。

 

あとはボウルで捏ねるだけ!

ここで最初に買ったしゃもじのようなナニカが大活躍した。買っといてよかった!

 

しかし、混ぜても混ぜてもバターが溶けない…いつまで経っても生地っぽくならない。ユルユルなのだ。しょうがないから目分量でまた強力粉を足す。

変わらない。混ぜども混ぜども変わらない。

 

わし「なんでだと思う?」

 

考えに考え抜いた結果、我々の結論は"愛が足りていない"からだ。という考えに至った。

 

 

わしは、1度ボウルから出して、まな板の上で手を使って、愛情を込めて揉みしだくことにした。

 

ニチャァァァ……

不快な感触が手に伝わってくる。

捏ねようにも、生地が手から離れない。

形を変えようにも、絶妙の粘度で手の周りに生地を残してちぎれ落ちるだけ…なんだこれ。パン生地からの愛が…愛が強すぎるッ!!

どれほど愛に飢えていたのか…わしの手を離さないパン生地…。

とにかく強力粉を足しながらまな板の上を転がし、叩きつけ、揉みしだいた。

 

「わし、パン屋さんの気持ちがわかってきた気がする!!」

 

だんだんと気持ちが乗ってきた。これなら行ける気がする。手応えのようなものを感じ始めていた…

 

が、状況は改善せず、途方に暮れる我々。

 

いつしか、パンがあまりにも手から離れないのでパン自体がその名を「愛」へと変容していた…

そう、「OROKA」現象である。

「愛が強すぎる」「愛が落ちない」「愛が粘っこい」「もうここで愛を終わりにしたい」そんな言葉が飛び交っていた。

なぜ、名前を知らない虫だけではなく、初めからパン生地と分かっているモノに対しても同じ現象が起きたのか…

それは今我々が捏ねているパン生地らしきモノが、誰も名を知らない"パンでは無いナニカ"であったことに他ならない。ソレに我々は「愛」と名付けたのだった…。

 

底の見えない深い愛に怖気付いたわしは半ばパニックになりかける…自分の手に今こびりついているものがなんなのか、自分が今揉みしだいている行為はなんなのか、分からなくなってきていた…

 

ねえ、捏ねるって何?

わしは今捏ねてるの?交ぜてるの?

 

そんな疑問を椰子姐に投げかけたところ、椰子姐から思わぬ言葉が返ってきた。

 

「電波繋がりました。」

 

「「「ッ!!?」」」

 

なんと電波が繋がったのだ!!

椰子姐には楽天モバイルとはべつにLINEMOのSIMがあったらしい。そちらからネットへのアクセスへ成功したようだ!

ありがてぇ!!

 

 

椰子姐「世が世なら私は神ですよ???」

 

インターネットを取り戻した瞬間、全能感に浸り調子付く椰子姐。

完全に気が大きくなっている。

 

いや、しかし間違っていない…。

この情報社会から隔絶された山奥において、永き人類史において積み上げられてきた集合知にアクセスできること…

 

…其れ即ち神…

 

このどん詰まりの状況、手にこびりつくベチャベチャの愛、漂う絶望感を打破してもらえるのなら、わしは椰子姐を神と崇めて靴でもちんちんでも舐める。頼む、椰子姐神!わし達を救いたまへ!!

 

「神ィ!!どうしたらいいんですか!?どうしたらこの行く末の見えぬ愛を救えるのでしょうか!?お導き下さい!!!」

 

暫くスマホを眺め、「ふ〜む…」と唸りながら勿体ぶったように顔を上げる椰子姐…わし達はゴクリと唾を飲み込んで神のお告げを待った。

一同が見つめる中、今、神が口を開く…

 

「諸説…あり!」

 

「は?」

 

「なんかね、皆同じような感じに困ってるみたい…」

 

「はぁ…」

 

「今ざーっといろいろ読んでみたんだけど、だいたいみんなこうなってるね」

 

「ほぉ…」

 

「……、……」

 

「で?」

 

びっくりした…

なんと神は「諸説あり」などという言葉で我々を煙に巻き、原因の究明から目を背けようというのだ……

 

 

「ぼーっと生きてんじゃねぇよ!」とまでは行かずとも、「世が世なら私は神ですよ???」などと宣った椰子姐神に、散々煽ったあげく答え合わせで梯子を外してお茶を濁すチコちゃんに向ける類の苛立ちを覚えながらも、わしはぐっと堪えた。

これがもしチコちゃんだったらわしはテレビに風穴開けてた。

 

『神は死んだ フリードリヒ・ニーチェ』

 

わしの心は虚無へ落ちた…

 

 

 

椰子姐神だったモノ「なんかね、こうなる原因は色々あるみたい…」

 

「それで、わし達の場合はどうしたらいい?」

 

もし次に言葉を間違えれば椰子姐に風穴が空くだろう、わしは黙って拳を構える…

 

「パン生地が緩い場合は、強力粉が足りていない可能性があります。」

 

椰子姐がボソボソと抑揚のない声で読み上げる…

Yahoo知恵袋の検索トップにでもありそうな実に陳腐な文言だった。

 

…だが、それは思考回路が迷路となり、暗闇の中で歩むべき道を見失っていたわし達に輝く道標とはなった。わしは振り上げた拳をゆっくりと降ろす…。

 

何が正解か分からない中で、自信を持って前に進むことは困難だ。まさに迷える子羊と化した我々に、椰子姐神のYahoo知恵袋は福音となって鳴り響く。

神のお告げに背中を押され、我々はようやく希望を持って突き進むことができるようになる。

 

 

……なるほど、捏ねるでも温めるでもない、粉を足して水分を吸収させるだけか、こんな単純なことすらわし達は試せずに怯えていたというのか……

 

ありがとう椰子姐神…

我々は、確かに救われた……!!

 

そこからはとりあえず愛に強力粉を適当にまぶし続けながら愛をひたすらに転がした。

 

何となく愛全体の粘性が増してきた気がする。

だがしかし、ここでわしの手が愛の重さに耐えきれなくなってきた、今にも痙攣を始めそうなわしの両腕を見て、なんと椰子姐神が愛を手に取ったのだ!

 

 

「うわっ…これは…重たい愛だね…。」

「わかる?」

「うん…」

「ようこそ、愛の沼へ…」

 

しばらく愛をこね回しているとまたもや神から天啓が降る

 

「あっ、でも手からパンの匂いする!」

「本当だ!パン屋さんの手だ!!」

 

『神の見えざる手 アダム・スミス』

 

愛を指先からこそげ落としたいというそれぞれの利己的な行動の集積が、摩擦熱となりて愛からパンの香りを引き出し、我々全体に利益をもたらした…

 

やはり神の手にかかればパンはお手の物なのか、今の椰子姐神ならば、水すらワインへと変えてしまうだろう…

 

 

とりあえずなんだかんだパンの匂いもしてきので、一旦愛をボウルに移すことにした。

愛の本体はボウルに落とせたが、愛の残滓がわしと椰子姐神の手からなかなか離れ落ちない。必死に手をこすって愛を削ぎ落としていると、ここでまた1人、愛に魅せられ沼へと堕ちる男が現れる。

 

ボウルを手に持っていたゆらDが、おもむろに愛を鷲掴みにしたのだ…!!

 

わしと椰子姐神は仰天した。

さんざん愛のコワさを目の当たりにしてきたはずなのに、この男…狂ったのか?と。

愛が伝染していく…

「うっわ!!?」

「「ようこそ、愛の沼へ」」

時刻は既に日付を跨ぎ深夜の1時を迎えようとしかていた…他の利用者たちは皆就寝していた…。

OROKA達の襲撃もチラホラとまた始まっている…

わし達のテントの周りにはひっそりと「愛」と「愚か」のフレーズが繰り返されることとなる…

 

 

愛にOROKAがぁ!

愚かッ!!

 

 

しかし、ここで我々は絶体絶命の窮地に立たされていることを知る…

わし、椰子姐神、ゆらDはその手を愛に染めてしまった…

3人の両の手のひら、その指先には未だ愛がこびりついている…果たして、この状態でOROKAを捕獲した場合どうなるか…おそらく、いや間違いなく捕獲率は120%を超えるだろう。知恵なきOROKA達が無様に愛に絡め取られてもがき死ぬ様が容易に想像できる…だがその先はどうだろう??その考えに至った瞬間、愛が落とせぬと、泣きっ面で腕を振り回していた我々3人の背筋に冷たいものが走る…

 

現場は阿鼻叫喚だった。

 

もし、早まって、あるいはしつこく付き纏ってくるOROKA達に我を忘れて「愚かッ!」しようものなら、我々はその手の先に自切の術を持たぬ愛とOROKAを纏わせなければならなくなる。愛をダッチオーブンへダンクシュートできない我々がOROKAを焚き火台へダンクシュート出来ようはずもない…。愛とOROKAの無理心中である。

何がOROKAだ!?愚かは我々だった。ただでさえこの歪な粘性を持つ愛の不快感だけで気が狂いそうなのに、そこへさらにそこそこにデカイ羽虫を生け捕りトッピングしようと言うのだ。正気の沙汰では無い。

なんとグロテスクな、その姿を想像したわしは思わず卒倒しそうになる…

誰か、誰かわし達を愛と愚かから救ってくれ!

 

 

「愚かッッ!!」する術を失った我々は、ただひたすらにOROKA達に蹂躙されるだけとなった…

なんとか愛を守りながらOROKAの襲撃に無様に耐え続ける…もはやOROKAはおろか愛の着地点も見えぬ。

倒錯する愛と愚か!屈辱的な時間…!

地獄絵図である。

 

だがしかし、我々にはまだ忘れてはいけない希望の光があった…!

 

えいじだ。

 

唯一その身を愛に沈めぬピュアボーイ!えいじ!

 

両手が無事な彼ならば、

彼ならばまだOROKAを討伐できる!!

ここで急遽えいちゃんをお米大臣改め『愚殺隊』に任命する。

えいじ!お前が柱だ!!

えいちゃんの手にわし達の命と愛は託された。

頼む!どうかわし達を朝まで守り抜いてくれ!!

 

ゆらD「10時、14時の方向よりOROKA襲来ッ!」

 

えいじ「愚かッ!!愚かッ!!」

 

椰子姐「3時の方向より第二波!!」

 

えいじ「愚か愚か愚かァァ!!」

 

わし「 あぶない!えいちゃん後ろッッ!!」

 

えいじ「んぉ愚か也ィ!!」

 

ゆらD「ばかなッ!振り返らずにOROKAを!?」

椰子姐「それもあの数のOROKAを一瞬で…!?」

 

えいじ「まだまだだね♪」

 

 

 

完全に「愚かの呼吸」の使い手だった。「無我の境地」入ってた。真・三國無双かと思った。わしが諸葛亮孔明ならビックリして謎の光線ぶっぱなしてるところだった…えいじ、お前は青学の柱だ。無惨様も裸足で逃げ出す指捌き。お前こそマコトのモノノフよ!!

そんな感じに我々はかろうじで愛と命を繋ぎ止めていた…

 

午前1時、山奥で男達が両手をベチャベチャの粉まみれにしながら、生地をこね、虫と戦っている。最高だった。

 

愛に溺れた3人は、えいじが頑張っているうちに死に物狂いで愛を振りほどく。

 

最終的にえいじが『愚かの呼吸・拾漆の型』あたりを習得した時点で、ゆらDの愛をなんとか込め終えることに成功し、生地をダッチオーブンにダンクシュートする。わしと椰子姐の愛は手を洗うように擦り落としたせいで、なんかチネリのような形となって愛の本体の上に積もっていた。あとは発酵するのを待って寝ようということになった。そう、全ては「発酵」というよく分からないものに託されたのだ。頑張れイースト菌!!信じてる!!

 

朝になったら何とかなってるやろ…

そう思い込んで、我々は愛から目を背け、逃げ出したのだった…

Content image

翌朝…

愛は2倍ほどに膨れ上がっていた…。

よし、計画通りだ。

9時半から湧水ツアーなるものが開催されるらしい…キャンプ場のおっちゃんは本来なら12時にチェックアウトだが13時でも14時になったっていいから、参加しましょうとアナウンスしていた…すごく気になる、が、我々にそんなに余裕はなかった…。

わし達のキャンプ練度ではおそらく撤収に2時間はかかる…

未だに愛は焼けていないし、この後どうなるかも予想がつかない。焼きそばもまだやってないし、魚はあと5匹残っている…朝のまったり談笑タイムもまだできていない…我々は断腸の思いで湧水ツアーを見送った。

そして愛の焼き上げに取りかかった。

薪を割り、雨で湿った炭に再び火をつける。

薪が全て炭に変わるまで待っている時間は無い、炎が揺らめく中に愛を乗せたダッチオーブンを投入する。

並行して焼きそばをつくる。

こちらはスムーズだった…ただ最後の半熟目玉焼きをのせる工程が難しかった…

3/4で失敗した。箸で割る前に黄身が崩れゆく様を見ては

 

「プルシュカが零れちゃう!!」

 

とみんなで咽び泣いた。

 

昨晩は「愛、愛ですよナナチ…」とボンドルドっていただけにプルシュカは胸に響いた。

知らず知らずのうちに我々はアビスの呪いにかかっていたようだ。

 

焼きあがったっぽいパンはミーティみたいな見た目をしていた。だが、色はいい感じだ。

まさしく「愛」だった。

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早速ナイフ入刀をしてかじってみることに…

 

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4等分の愛

うっ…!!これは……

 

中はまだ半ナマだった…

 

 

外側は若干焦げているにもかかわらず、完全に火が通っていない…火力が強すぎたのだ、焦りすぎた…。強制的に目覚めさせた巨神兵みたいな味がした。急いては事を仕損じる…。当然の帰結だった。

 

とりあえず、生焼けの愛をダッチオーブンに戻し再度加熱することに…

 

この間、わしは並行して寝袋類を片付け始めることにした。わしが撤収作業につい夢中なってしまっていると、

 

「ズッキーさん、パンもういいんじゃないですか?」

 

完全に忘れていた……

 

いや、忘れてはいない…忘れたかったのだ。

いや、大丈夫だ。ダッチオーブンを信じろ。

あれにぶち込めばなんだって美味くなる。

キャンパー御用達の特級遺物だ!

 

おそるおそるオーブンの蓋を開ける、そこにあったものは…

 

 

 

黒焦げの愛だった……

変わり果てた姿の愛…

 

Content image

わし達の愛が…

 

 

初めは白く、ベチャベチャだったのに、今は漆黒のカチカチなダークマターへと変貌した愛…

男4人の愛を載せた特級遺物でも耐えられない上昇(温度)負荷だった…

見るも無惨な成れ果て。もはや6層のソレだった…。

白笛を持たぬ悲しき男達のラストダイブ…

 

 

とりあえず、齧ってみる。

当たり前だが、とても苦い、食べられたもんじゃない。

 

椰子姐「あ!この辺美味しいかも!!」

 

一筋の希望、黒焦げの愛にも可食部はあったのか!?わし達の愛に救いはあったのか!?

 

みると椰子姐が食べていたのは、愛の中で温められたイチゴジャムだった…

 

愛ではなく、焼いたジャムのみを食べていたのだ。

 

まぁ、そうよね…。

 

 

我々は温かいジャムのみを丁寧に舐めとると愛を廃棄した。

 

手を汚し、虫共と格闘しながら深夜の1時まで生地をこねくり回していた男たちの苦労は、苦い苦い炭と化していたのだった…。

 

こうして、我々のキャンプの最後の食事は、黒焦げの愛で幕を閉じた…。

 

 

まったく!誰だ!?

焼き方も分からねぇ癖にパンをやろうなんて言ったやつは!?

 

わしだ。

 

まったく!誰だ!?

炊き方も分からねぇ癖に土鍋で米を食べようなんて言ったやつは!?

 

わしだ。

 

まったくだれだ!?

魚を吊るすフックもねぇ癖に燻製にしようなんて言ったやつは!?

 

わしだ。

 

まったく!誰だ!?

作り方をよく調べもしねぇで来た上に、それを調べることも出来ねぇ圏外キャンプ場を選んだやつは!?

 

わしだ。

 

 

わしだよぉおおおおおおおお!!!

 

みんなごめーーん!!!!

 

 

 

特にえいちゃんはヴァージンキャンプだったのに、その思い出を苦い焦げ焦げの愛で漆黒に塗りつぶしてしまったことを非常に申し訳なく思う。すまんかった!!

 

みんなには遠方からはるばる来ていただいたというのに…不甲斐なし!

 

不甲斐なさすぎるので、キャンプの後に皆さんには強制的にアイスクリームを奢られてもらった。

 

 

 

そんなこんなで料理も全て終えていよいよ撤収作業がはじまる。

テントとタープの展張でだいたいの動きはわかった。もはや攻略済みの工程。容易いな…

 

「ズッキーさん、テントってどんな風に袋に詰めればいいですか?」

 

 

「わかりません!!!」

 

 

 

 

しかし!

効率的な畳み方を瞬時に割り出すゆらD!

テントに刻まれた折り目を分析し手順を導き出すえいじ!

すぐ様その意図を読み取り動きだす椰子姐!

オロオロするわし!

 

いける!

この4人にかかれば、不可能などない!!

 

 

昨日よりもキャンプの経験値が増えていた我々は、割とスムーズに撤収作業を終えることが出来た…時刻は12時半ぐらい。うん。30分タイムオーバーしてた。

 

管理人の「14時までかかってもいいよ」発言に甘えて、我々は湧水ツアーに参加していないにもかかわらず、もうちょっとだけキャンプ場にいることにした。

 

おもえば、作業に追われている時間が多く、このキャンプサイトを探検できていなかったからだ。暑かったら川遊びなんかもしようかなとか、なんか自然溢れる景色がスゴイから写真撮りたいな、とか思いながら渓流のすぐ側に構えるこのキャンプ場を選んだくせに、ずっと自分達の区画内に篭っていたのである(誰のせいだ)。

せっかくなので、我々は荷物をまとめてすぐ出発できるようにしおいて、渓流を探検しに行くことしたのだ。

 

ここでわしは忘れかけていたこのキャンプのもうひとつの目標を思い出す。

 

"猟師っぽい写真"が撮りたい。

いや、もっと解釈を広げるならば、"ワイルドな写真"を撮りたい。ということだった。

 

部活は何やってたんですか?

小中は野球部でした。

え〜!っぽくなーい!

っていう問答。何十回繰り返したことか…

うるせぇ!その首へし折るぞ!

お前の頭をバックスクリーンに放り込んでやろうか!??

わしは新宿にビビる男!シティボーイのインテリなどでは断じてない!!

外見や雰囲気だけでくだらないレッテルを貼るのはやめろ!おちんちん!とか言わせろ!

 

そう、わしに足りないのはワイルドさだ。

ほんのちょっと前までは皆猿だったのだ!誰しも心の内に野生を秘めている。

今ここで撮る写真をもってこれまでのわしに終止符を打つ。

 

今日、わしは一皮剥ける。

真のワイルドな漢になるのだ!!

 

 

わしは、一旦車に戻りしまい込んだ荷物の中から、ワイルドっぽい小道具を引っ張り出してすぐに渓流へ向かった一同の元へ走る。

 

えいちゃんとゆらDは奥の方まで探検に行って見えないが近くに椰子姐が見えた。対岸の岩肌にそれっぽく腰掛け気取った調子で沢の流れを眺めている。思わず写真を撮りたくなるキマリ具合だったが駆け出したわしの足は止まらなかった。

 

「椰子姐!!ワイルドな写真撮りたくて、ちょっとわしのこと撮ってくれない?」

 

「え?あ、うん。ワイルドな写真?」

 

何言ってんのコイツ?みたいな顔をした椰子姐を置き去りにわしは畳み掛ける。

 

「あ!あそこが良さそう!わし!あそこ!いく!椰子姐!ここから!撮る!OK??ズームで撮る!OK!?ヒュイゴー!!!!」

 

時間が無い。とりあえず椰子姐が黄昏ていた場所から周囲を見回すと丁度イイ感じに写りそうなポイントがあったので、その地点までわしは走った。

 

そう、然るべき場所で、然るべき格好となり、然るべきポーズを取れば、おのずと椰子姐もどうすれば良いかわかるはず…わしは椰子姐を信じて岩の上に立つ。

そこでわしがエセ猟師では無いことを証明するために持参した鹿革と、薪割りに使った斧を持ってワイルドさを演出する。

さぁ!わしの中の野生を解き放つ時が来た!!

 

 

 

 

 

 

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うん、いいんじゃない?

 

 

 

 

 

 

 

野生感出てる気がする。

完ぺきな写真だ、ナイスだぞ椰子姐ェ!!わけがわからずとも見ればわかる。漢とはそういうものだ。

やはり背景の緑と渓流がとてもいい味を出してる。

 

爆笑しながらシャッターを切る椰子姐。

失敬な。

騒ぎを聞きつけたゆらDとえいちゃんが戻ってくる。状況が飲み込めていないふたりに椰子姐が「なんか、ワイルドな写真を撮れって…」などと説明していた。

よし、三人寄れば文殊の知恵だ!

 

「もっとこうしたらいいとかあればアドバイスください!!」

 

わしがそう呼びかけるとみんなは次々にアドバイスをくれた。

 

「帽子とって!」

「いいよ、いいよ〜!!」

「もっと筋肉出して!」

「いいよォいいよォ〜!!」

「斧を掲げろ!!」

「イイヨォイイヨォオ!!!!

 

我々の中に眠る"野生"が熱を帯びていくのがわかる。

 

3人の興奮した声と「イイヨイイヨ!」に気分が良くなる。なるほど、これがコミケ帰りにカメコにお持ち帰りされるレイヤーの気分か…このまま煽てられたらパンツまで脱いでしまいそうだ…しかし、撮影場所は公道の橋の上から丸見えの場所だったため、ギリギリのところで我々は理性を保てていた…

 

 

 

 

撮影した写真を見せてもらった。

Content image

 

完璧だ。

 

 

 

 

 

なんて野性的なんだ!!

冷めやらぬ興奮に突き動かされ、気づけば昭和のポスターみたいに加工してしまっていた。是非居酒屋のトイレにでも飾って欲しい。

Content image

しっくりくるぞ!

図書館や公民館!寂れた商店なんかにも貼って欲しい!

Content image

溢れ出る野生が留まらない!!抑えきれない!この野生!!!

 

…しかし、大胸筋の薄さが目立っている…

せっかくのロケーションなのに、そこが足を引っ張っている気がする…非常に残念だ、腕立て伏せが足りなかったか。4月に体調を崩さなければ…くそ。

コチラもまた今後の課題か…。

 

 

なんやかんやで時間の無い中ほどほどに大自然を堪能した我々は、そのまま道の駅に向かいアイスを食べて名残惜しくも解散したのだった。3人とも爆速でアイスクリームを食べ切っててびびった。都会人に染み付いたタイパムーブに恐怖した。みんな腹の中コンクリートでできてんのかと思った。

次は負けんぞ!釣りもサウナもアイスクリームも!!!

 

とにかく楽しいキャンプだった。みんなありがとう。

 

隙あらば洗い物をやってくれた米炊き大臣兼愚殺隊の柱のえいちゃん、美味しい料理を完璧な手際で振舞い、神の声でみんなを救った椰子姐神、率先してゴミ出しをしてくれたロジカルアドバイザーのゆらDに感謝。

 

終わってみれば、楽しかったけど思ってたより皆と話せなかったことが多かったなぁと反省…(長い沈黙タイムが訪れたらどうしよう!?)とチキっていろいろ詰め込みすぎた。もっとじっくりまったり話し込む時間もあれば良かった。(電波も)

わしの計画性のなさと見通しの甘さからドタバタキャンプになってしまったところが申し訳なかった。「なんとかなるさ」で何とかならない好例を得ることが出来て大変勉強になった。わし視点の「オフ会」という括りでみれば充分なんとかなったけど……

 

でもまぁ、皆で一丸となって試行錯誤し、問題に取り組めたところも十分楽しいキャンプだった気がする。

テントの設営から料理まで全てが共同作業でアクティビティ、皆であーだこーだ言いながら不便やトラブルを乗り切るところにこそ魅力を感じたりする。

これが相手が女性ならば完成されたお行儀のいい映え映えキャンプが正解なんだろうけど、せっかく男4人が集まるのだからこんな感じのワイワイした感じでいいんじゃなかろうか?という全力の言い訳。

そんなわしの好きなキャンプを押し付けてしまった感も否めないので、これがファーストキャンプだったえいちゃんには、もっとゆったりして余裕のある大人のキャンプも多分あるのだということを知っておいてもらいたい。

 

 

わし個人としては、マス釣り、土鍋ご飯、ダッチオーブンカレー、サウナと水風呂、パン、電波の下調べ、大胸筋…

様々な課題が浮き彫りとなるも大変満足のいくオフ会、キャンプだった。

 

また一回り大きなおっさんになれるいい機会を貰えた気がする。

 

 

最近ちょっと低迷中?のクリスペだけれども、わしはやってて本当によかったと思えた。最近はろくに遊べてないし、アセット価格も絶賛下落中ではあるけれど、たとえそれが0になったとしても何も気にならないぐらいの繋がりや体験を得ることが出来たので、これからのクリスペがどうなろうとわしは既に満足している。もともとそこまでゲームにハマれる気質では無く、アーンする才能もないので、Twitterやコミュニティとの接点を維持するためだけにクリスペを続けていると言っても過言では無い。そんなゲームやアーンの才能がないわしでも楽しめる、しがみつきたくなってしまうのがクリスペすげぇと思うところなんだけど、わし自身あまり他のゲームをやらないので、他のゲームのコミュニティと較べてどうスゴイとかはわからないけれど、とりあえずわしが楽しめているのは事実なので、クリスペすごいと言っておく。下品な下ネタからアッタケェ支え合いにキレキレのインテリまで幅広く楽しめる多様で寛容なユーザーが溢れているので居心地が良いのだ。

 

田舎で内向きに暮らしているわしにとっては、新たに繋がる仲間や広がる世界を実感させてくれるオフ会にとても感動したのだ。その機会をくれたクリスペに本当に感謝する。

 

せっかく楽しいトゥイッタランドがあるのだから、ただのカードゲームではなく、そこを大きな魅力の1つとして残しながら、人脈も世界も広げられるカードゲームとして、クリスペにはこれからも頑張ってもらいたい。

 

 

オフ会、楽しかった!

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