わしは今日...
クリスペを始めた当初より胸に抱き続けてきた長年の疑問と不満、そして憤りをついに解決するに至った...‼
まさに青天の霹靂、目から鱗、思わず膝を叩いて「エウレッカァッ‼」と叫んでしまったほどだ。真夏の猛暑で意識が朦朧とする中、わしの頭は完全にアルキメデスと化したのだ。答えはこんなにも、近く、簡単だったのである。
そう、ここのところ暑かった。酷く暑かったのだ。とにかくうだるような暑さが続いていたのである。例年を超える猛暑、日本では観測史上初となる6地点での最高気温40℃台、海外では48℃を超え多数の死者を出している国もあるらしい。地表は地獄と化した。真夏の日差しが理性を焼き尽くすこのゲヘナで、我々は雨上がりのミミズの如くのたうち這いつくばることを余儀なくされた...そんなわし達がなけなしの力を振り絞って行き着くことのできるエデンとは...
縁までなみなみと水を張ったプールにつかれば水が溢れる。
そこで溢れた水が何を意味するのか。
それはいましがたプールに浸かったわしの分の体積か?いや、違う。ただプールに水を多く張り過ぎていただけのことだ。水の無駄使いである。
簡単な話だ。そう、答えは至極簡単な話であったのだ。いたってシンプルで直球。事理明白にして公理一般に通ずる道理のど真ん中に座す紛うことなき最適解。
しからば金の含有率をごまかした金細工師が死刑になるようなことはなく、ただ1枚のカードが救われた。それだけなのだ。すべてを赦し、受け入れ、感謝する。
わしの地獄は、今日終わったのである。
話を戻そう。
そう、暑かった。とにかく暑かったのである。
正確に言えば暑"かった"のではない。今も暑い。とてつもなく暑い。暑すぎてどうにかなってしまいそうである。
こんなに暑いと人間はどうしたくなるのかというと...
アイスを食べたくなるのである。
正確に表現するならば、アイスを"舐め"たくなるといったほうが正しいか。風情を楽しむならば食べるのではなく、舐める事は重要だ。
そしてアイスは涼し気な水色をした、爽やかなソーダ味を連想させるアイスキャンディーが好ましい。
如何に暑くとも、アイスをぺろぺろと舐めている瞬間は、その暑さもまた許せてしまうものなのだ。暑さあってのアイスキャンデー。本当に涼しくならなくとも、その冷たさを舌先で確かめるだけで十分効果はある。遊び心が大事なのだ。蝉の音を聞きながら、麦わら帽子をかぶって縁側で空色のアイスを舐める、なんともノスタルジーな情景が目に浮かぶ。アイスを舐めるというのは夏の風物詩である。
さて、わしはアイスを舐めながら今日もクリスペに勤しむ。
先日、新セールカードや、リミテッドレジェンドカードの販売も開始されたことで話題に事欠かないクリスペだが、やはり美麗なイラスト、美しいキャラクターが描かれたカードが多いことを改めて感じる...。じつに素晴らしい。とてもよいことだ。
ここでふと、わしはツイッターで何度か目にしたことのある、ある言葉を思い出す。
「...ぺろぺろしたい」
ふいにわしの脳裏をよぎった言葉が、蝉の音を遮り、まるで暗いトンネルの中に引き込まれたかのように木霊した。
(...ぺろぺろしたい...!?)
ツイッターで、だれかが、いつか、放った言葉が、呪いのように染み込んできたのである。蝉の声はもう聞こえない。聞こえるのは高まる心臓の鼓動と、ぺろぺろと舌を動かす音だけである...
念のため言っておくがわしがぺろぺろしているのはアイスである。
「ぺろぺろしたい」
なるほど、実に直接的でそして理にかなった表現といえよう。
「目に入れても痛くない」という言葉があるが、これは可愛さ余ってのものだ。
しからば、次は口に入れたくなるものだ。当然だ。つまり、ぺろぺろである。これもまた可愛さ余ってと言えよう。かの岸部露伴がそうしたように、「味もみておこう」といった発想に至るのは至極真っ当でありもはや自明の理である。ここに共通することは対象への「愛」そして「好奇心」である。しかし好奇心もまた、"もっと対象のことをよく知りたい"という愛の変化した形に過ぎない。つまり「愛」なのだ。目だけでは足らず、舌をも駆使して愛を表現したいということ。
それが、「ぺろぺろしたい。」ということッ‼
舌という器官を通じることで味だけでなく、さらには感触、そして舌で触れられる距離に居るということは、当然匂いまで感じることができるだろう。
視覚、味覚、触覚、嗅覚...
5感のうち4つを活用している、我々が情報を得ることが可能とされている器官のおよそ大部分を投じようというのだ、これを「愛」以外のなんと表現すればよいのか!
おぉ!アメイジィング!!
蝉の音はいつしか戻ってきていた...。
しかしそれはもう蝉の音ではない、わしにとってはもはやベートーヴェン 交響曲 第5番 ハ短調「運命」である。
思考にふけり、興奮し次第に動きの速くなっていたわしの舌は、さながら蝉のオーケストラを操る指揮棒のようだ、わしこそがこの夏のマエストロ!暑さを熱さに変える者なのだ!届け!ペロスティカルミュージック!!
重ねて言っておくがわしが先程からぺろぺろしているのはアイスキャンディーである。涼し気な空色のアイスキャンデーである。
つまり「ぺろぺろしたい」とは抑えきれぬ愛情の発露!
「ぺろぺろしたい」なんと尊き言葉か...。
しかし、「ぺろぺろしたい」というだけでは、あまりにも抽象的だ。
一体、なにをぺろぺろしたいのか、そこを明確にする必要がある。
漠然と愛を語るのではなく、より具体性を持って対象へ接する必要があるのだ。
突き詰めれば、なにを、というより、どこを、という問題である。
我々の口の大きさなどたかが知れている。口に入れられるものなど、せいぜいリンゴ1個分程度が限界だろう。つまり我々は愛でるべき対象の部位をこのリンゴ1個分の大きさに限定しなければならない。悲しい現実だがこれは受け入れるほかない。
物理的に、そういう構造なのだ、仕方がない。
もし仮に、このリンゴ1個分の大きさを超えて「全部をぺろぺろしたい」とか抜かす輩が居たとしたらそいつは嘘だ、欺瞞だ、変態だ。
もちろん一度で同時にという話でなければ、それも可能かもしれない。分割して順々にぺろぺろしていけばできるだろう。が、しかし、そんな悠長にぺろぺろしていいはずがない。何かを得るためには、何かを捨てなければならない。ノーペイン・ノーゲイン。思考を放棄して全部一遍にまとめてぺろぺろしようなどという怠惰で強欲で愚鈍なやつは舌を抜かれて死ぬといい。対象の中に一際光るモノ、優れた一点を見抜けないようであればぺろぺろする資格などない。
わたしのどこが好き?と聞かれて、全部好きだよ。などと答えるアホと同じだ。
当然このアホはぺろぺろさせてもらえなくなる。わかるよな?
勘違いしないでいただくために、もう一度言っておくが、わしがぺろぺろしているのはアイスキャンディーだ。空色の涼し気なアイスキャンディーで、棒には「あたり」と書かかれたアイスキャンディーだ。
しかし、この、なにを、どこを、ぺろぺろしたいか。という問題は極めて難しい。
クリスペには魅力的なカードが多いのだ。
この記事にもある通り、クリスぺの美しいカードの数は枚挙に暇がない。
多様なカード、多様な支持者達が犇めいているのがクリスぺツイッタランドの特色である。
上記のコンテストはその中から対象を絞る、また布教するという点でとても素晴らしい企画だったように思う。
いっそのことわしもこのコンテストに倣って、ぺろぺろしたいと思わせてくれる対象を、可能性をツイッターで募ってみようか、ツイッタランドの紳士たちが一体どのような癖をお持ちなのか大変興味深く思ったが、そもそもそんなめんどくさいことはわしにはできなかった…。それにこのような高度な感性が問われる危うきアンケートに恥も外聞もなく回答する紳士たちが一体どれほどいるというのだろうか...いや、きっと沢山いるに違いない…おそらく、嬉々として答えてくれそうな紳士も数名いることは間違いはないだろう…しかし、わしにはまだ深淵を覗き込む勇気はない...。
勘違いしないで欲しい。わしがぺろぺろしているのはアイスキャンディー。
もし、わしがこのアンケートに答えるとするならば『ライトニングボール』と答える。
ほら、ピリッとして美味しそうじゃろ?涼しげじゃろう??
しかしここでわしは思い出してしまった。
まるで雷に打たれたかのように脳裏によみがえる苦い思い出。
中学2年生の頃の夏。あれは柔道の授業。そこでわしは14歳男子の狂気、溢れるリビドーを身をもって知ることとなった。
わしはいつものように相手の男子学生と組み合っていた、襟元をつかみ合い押しては引いての掛け合いだ。
相手のリズム、呼吸をつかみ一瞬で懐に入り込む、一本背負いだ。背を向けてグぁッと引き寄せる!
しかし思ったより相手の体重が重い、そして想定以上に相手も踏ん張る。タイミングを誤ったか、わしの力不足か...。結果として、わしの背にかぶさるような形で相手が密着した状態での膠着状態となった。
ここでわしは思春期に盛る男子の狂気を知ることとなる...。
「ズッキー、なんか、いい匂いする!!」
相手の男子がハァハァと息を切らしながらそんな言葉を放った。
わけがわからなかった。コイツ疲れておかしくなったかと思ったが、わしもそれなりに疲れていた。そういえば昨日は部活上がりに地元の温泉に寄って、備え付けのシャンプーを使ったんだった、確かにいつも使ってる奴よりいい匂いがしたなぁ。なんて思っていた。ながく続いた膠着状態で、もはやお互いだらしなくくっ付いているだけの状態だった。
そこで突如わしのうなじを湿った感触が這い上がる。
(ッッ‼‼)
「ぅおっほぉい!!!なんだよお前ッ!!」
「ズッキー、しょっぱい...」
「まじか!お前まじか!!?なななんで舐めるんだよお前!!」
侮っていた...14歳の性欲を...あなどっていた。
彼はきっとわしが温泉で使ったフローラルなシャンプーの香りに女性的な何かを見出し欲情してしまったのだろう。このわしが小学6年生までは度々女子と見間違われることもあった美少女系アルベリッヒだったことも多少関係しているのかもしれないが、さまざまな要因が重なった末、彼はあろうことか同じ男であるわしに欲情したのだ。
その日その瞬間まで、性の対象にすらならなかった同性の友人に、仲間に、欲情したのだ。あの瞬間の彼はもはや友人ではなく、ただの1匹のオス♂であった。
そして勝手にうなじを舐めて勝手にしょっぱいと傷ついていた。あたりまえだ。
よくエロ漫画で女性の恥部を舐めては「甘い。」などと言っている描写があるがそんなものは嘘だ。甘いわけがあるか。この童貞め!どう考えたら人間から甘い汁が分泌されるのだ、頭糖尿病か?ファンタジスタめ。せめて異種族でやれ。冷めるんだよ!
失礼、話を戻そう。
以降、彼にうなじを舐められることはなく、彼がわしのケツに目覚めることもなく無事に高校も別の学校へと進学した。その後、一度地元のショッピングモールで再開してそれきりだ。初舐めのショックから立ち直り元気にやっているようだった。当時17歳の彼の悩みは性病が治らなくて困っている。とのことだった。心から納得した。
失礼、話を戻そう。
とても恐ろしかった。
わしは、ぺろぺろされたのだ...
しかし、そこにおそらく愛はなかった...。
そう、愛がなくとも、ぺろぺろできてしまうのだ。
さぁ、話を戻す必要がある。
「ぺろぺろしたい」
この言葉に含まれている意味は果たして"愛"だけなのかどうか...
否。決して愛だけではない。下卑た情欲も多分に含まれることは明らかだ。
そんな言葉を軽々しく発してよいのだろうか?場合によっては人格まで疑われてしまう恐れがある。なにが「抑えきれぬ愛情の発露!」「尊き言葉!」だ。頭沸いてんのか?
「ぺろぺろしたい」
この言葉はもっと慎重に扱う必要がある。
とはいっても、今まさにわしはアイスをぺろぺろしている。わしがぺろぺろしているこのアイスはわしを幸せにしてくれる。わしはぺろぺろしたい。もっとぺろぺろしたい。
困った、わしの脳に植え付けられたこの「ぺろぺろしたい」という言葉は、深く根を張り、そこに咲かせた花のかぐわしい香りでもってわしを誘惑する。ぺろぺろしようぜと誘惑する。肝心なアレがどうかしてる、アレがなにかはもう飛んじゃってる。手遅れである。わしに残されたのはもはや「ぺろぺろしたい」という言葉だけ。
考えるんだ。対象がアイスキャンデーならば健全なはずだ。だからわしは再三にわたって「わしがぺろぺろしているのは"アイスキャンディー"だ」と強調してきた。そう、アイスキャンディーならば問題ないはず。
対象が性的なものであるから話がややこしくなるのだ。
しかし性的だからといって果たして問題があるのか?みんなベッドの上ではぺろぺろしてるじゃあないか!なにが問題なんだ?わしだって性的にぺろぺろしたい。わしは男の子だ。美少女系アルベリッヒの健全な男子である。ぺろぺろして何が悪い?
何も悪くない。じゃあどうすれば?くそっ!あぁ、暑い、暑くて頭が溶けそうだ。もっとアイスを、アイスキャンディーをぺろぺろしなければ...ついでに美女もぺろぺろできればもっと嬉s...
フローズン...スピア...?
フローズンスピア...あぁ、そうとも。お前はフローズンスピア。
そうか、そういうことだったのか...!?
「凍った槍」ちょっとおしゃれな棒型アイスキャンディーの商品名と言われたところで、まるで疑う余地のないネーミングだ。フローズンスピア...フローズンスピア...うん、もはやフローズンスピアと書いてガリガリ君ソーダ味と読める。間違いない。
もはやフローズンスピアはガリガリ君と同義!
そしてお前のその恰好...そういうことか。
散々服を着ろだの、この南極痴女物語だのとお前には言ってきたが、そういうことだったのか...
俺たちに...ぺろぺろしたいと思わせる、思わせてくれる"余地"を残してくれていたんだな...寒かったろうに、ありがとう。お前は最初から、ずっとそこに、居たんだな…。
フローズンスピア、お前は真夏に輝くアイスキャンディー。
熱を帯びた情欲を冷ます氷の美女。
お前のさらけ出すその柔肌をぺろぺろしたい。きっと冷たくて気持ちがいいだろう。
「フローズンスピア、ぺろぺろしたい。」
あぁ、実に自然だ。このうだるような猛暑の中、アイスキャンディー(フローズンスピア)をぺろぺろしたいといったところで何かおかしいことがあるだろうか?何もない。この字面から、純粋に涼を求める、夏の風情を楽しみたいという願望しか読み取れない。
にもかかわらず、わしの脳内には乳と腹をさらけ出した痴女が佇んでいる。
完璧じゃないか。ありがとうフローズンスピア、わしはお前の存在に感謝する。
わしは自信を持って、心を込めて、誰に恥じることもなく言葉にできる。
フローズンスピア...お前のすべてを、これまでのすべてをわしは赦そう...
そして、わしを赦してくれ...
これまでわしが行った数々の誹謗中傷を、ここに懺悔することでどうか赦してほしい。
あぁ...気付くのがこんなにも遅れてしまった。
いつだって大切なものはすぐ傍にある。
あなたにも思い出してほしい。道端に咲く花の美しさを、朝カーテンを開けた時の陽射しの美しさを、頬を切る風の気持ちよさを...!
なにかに行き詰ってる人は、一度立ち止まって、自身の身の回りをよく確かめて欲しい、きっと、そこはかけがえのない幸せで溢れている。
最後にもう一言だけ。
勘違いしないで欲しい、わしがぺろぺろしているのはアイスキャンディーだ。