関西語の打消しの「へん」について説明してきた。
この「へん」の語源だが、サ行変格活用の未然形「せ」に打消しの助動詞「ぬ」が連続した「せぬ」が、「せん」になったものを発祥とすると考えられる。
(打消しの助動詞「ぬ」は、古文の打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」がいつのまにか終止形になることで、特殊な活用をする助動詞として、古文と現代文の狭間で過渡的に頻用されたと考えられる。現在では、「ない」ということの方が多く、やや文語的な雰囲気を出したいときにしか用いられない。)
「せぬ」「せん」はそれだけで「しない」という意味になるが、強調の助詞「は」を挟んで「書きはせん」「できはせん」と言うことも多かった。
この「・・・はせん」が、早口では「書きやせん」「できやせん」→「書きゃせん」「できゃせん」と縮まり、「書かへん」「できへん」→大阪では「へ」に母音同化して「書けへん」「でけへん」→京都では未然形がイ段のとき、逆母音同化して「できひん」となった。
ここまでを今まで説明してきました。
ここまで全部説明している本かネット記事が、あびの関西語講座以外にあったら、教えてください。
たぶんないと思うので、あったら、マジ教えてくださいね。
なければALISのこの記事は関西語の解説として唯一無二の価値があるんですが、興味がない人には関係ありません。(-_-;)
さてこれで五段動詞、上一段動詞の「へん」での打消しの仕方と、その語源の説明が終わりました。
下一段動詞に関してはより単純で、未然形(エ段)+へんで打ち消す点で大阪でも京都でも同じです。
例 食べる
未然形「食べ」+打消しの助動詞「へん」=「食べへん」
これは初めから「へん」の「へ」のエ段と「食べ」の「べ」のエ段が同じなので、大阪で母音同化が起こるというようなややこしいことは言わんでええ。
「書かへん」が大阪では「書けへん」になりましたというようなややこしいことは言わんでええ。
初めから「食べへん」です。
また上一段活用のように、京都では逆母音同化が起こると言わなくていい。
上一段活用+「へん」については、こう説明してきた。
できるの打消し
大阪では「できへん」。または、母音同化を起こし「でけへん」。
京都では逆母音同化を起こし「できひん」
見いひん。着いひん。
この京都の「ひん」は上一段動詞の未然形がイ段で終わることに逆母音同化するからこそ、出てきた。
しかし、「ひん」は下一段動詞の場合、大阪でも京都でも出てくる必要が生じない。
いつでも下一段動詞の打消しは未然形(エ段)+「へん」である。
蹴れへん。 受けへん。
未然形が一音の場合は長音化する点は、上一段動詞と同じである。
寝えへん。出えへん。
残るはサ行変格活用とカ行変格活用である。