■インターネットが世界を変えた要因は?
答えはいくつかあるが、僕は「情報の移転コスト」がほぼゼロになったことが一番だと思っています。
インターネットが普及
→世界中の情報とリアルタイムにつながることが可能に。
→それらを活用したさまざまなサービスが登場。
[IT市場を席巻した企業たち“GAFA”]
情報を整理しよりアクセスしやすくしたGoogle
iPhoneによってインターネットを日常化させたApple
ヒトの情報を整理しアクセス可能にしたFacebook
モノの情報を整理しアクセス可能にしたAmazon
それと時を同じくして、「情報の非対称性」によるマージンから高収益を生み出していた旧型ビジネスは、大きな打撃を受けた。商社のトレーディング業務などがそれである。さらに言うならば、統治機構における政治統制からも飛躍的に解放された部分はあると思う。
では、「価値」についてはどうだろうか?
インターネットによって情報流通が爆発したように、さまざまな「価値」の移転をマージナル(ほぼゼロ)に行えれば、世の中の経済活動を劇的に広げられる可能性があると思う。
要するにCtoCだ。メルカリは物に限ったことじゃない。
「価値」の流通という点だけで言えば、最近話題になった例として、「VALU(バリュー)」や、「タイムバンク」がある。
VALUは個人が自身の模擬株式(価値)を発行して売買をする。タイムバンクは「自分の時間」を10秒単位で販売するものだ。いずれのサービスも買い手が多いほど価値は上がる仕組みとなっている。
時代を先行したサービス故に、設計には「不完全」な部分が多く、試験的取り組みの域を出ていないといえるが、この2つが先進的な取り組みとして、多くの人々の「ものの考え方」にインパクトを与えたことの社会的意義は大きい。と言うかそれをVALUに関して言えば、僕に多大なる影響を与えてますw
「価値」の流通を実現するためには、「価値」が数字で可視化されていることが前提となるため、定量化プロセス(価格決定)について考察してみたい。
昔から存在し、今も一般的な方法は、
主に1:1での「相対取引」が世界中のあらゆる場所で行われている。
その後、登場したのが「市場取引」である。
こちらは主に不特定多数の「n : n」の取引で、取引参加者の中で、同じ商品に対して最も安く売っても良い人と、最も高く買っても良い人で価格を決めて売買を行う方法である。
この方法は、インターネットの登場により、取引参加者が1カ所に集まった価格決定の「情報」にアクセス可能になったことで取引が拡大。このほかに、中間的な存在として、オークション(売り手1:買い手n)や比較サイト(売り手n : 買い手1)などが存在する。
ここで買い手の心理を考察してみよう。
売り手がnいる取引で価格競争(値引き競争)をさせた場合は、(談合がしづらい状況において)提示された最安値に対して、買い手は一定の「信頼」を見出すことができるが、売り手が1の場合は、提示された価格が正当か否かは、自分の「目利き力」を信頼する以外には、他の手がかりがないと判断が難しい。
さらに、いずれの場合についても「売り手」に対する「信頼」が前提となる。売り手の過去の販売実績や評判などで「信頼」を担保しようとする取り組みが多いが、売り手にとって初めての売買である場合には、評価の信頼性は限られる。
すなわち、「価値」の流通が成立するためには、「売り手」や「価格」に対する「信頼」を担保することが何よりも重要
※現金決済でない場合は、「買い手」に対する「信頼」の担保も必要
この「信頼」を担保する取り組みは、既に実社会ではさまざまな形で実装されている。その代表例が企業の新規上場=IPO(Initial Public Offering)。
IPOにおいては、新規上場企業(売り手)に対する「信頼」は、監査法人や証券取引所が行い、「価格」に対する「信頼」は、上場承認後の機関投資家向けロードショーを通じた「プロ投資家」による「目利き力」によって担保している。具体的には、証券会社が、どれくらいの価格であればこの会社の株を買いたいかを「プロ投資家」にヒアリングを行い、発行価格を決定する。
ここでのポイントは、最終的にはモノの価格は市場における「取引価格」によって決定されるが、初めて取引されるモノについては、「目利き力」がある可能性が高い人による「価値の合意形成」により、信頼のある価格の目安を提供している点である。発行時にこれがないと、市場が価値の実態を無視した、ただの投機ゲームになってしまう可能性が高いからだ。
ちなみにVALUでは、SNSスコアリング(Facbook/Twitter/Instagram?のフォロワー数)によって初値が決定される。
トークンエコノミーという言葉は仮想通貨の盛り上がりに付随して認知が広がりました。とは言えまだまだ耳にする機会は少ないので、そもそもの説明をしておきます。
です。
最近では、LINEがブロックチェーン技術(ネットワーク内取引を記録する台帳であり共有できる。改ざんが難しい)を活用した独自のトークンエコノミー構想を発表し話題になりました。
トークンを発行して資金調達を行い、株式のように上場させ、取引可能にさせる取り組みが、先述のIPOに対してICO(Initial Coin Offering)と呼ばれています。前出のIPOと比べると「信頼」や「価値の合意形成」の設計が、まだ不完全であるため、詐欺まがいのプロジェクトも横行していることも。(その為か、日本では法整備が追いついておらず、現在日本国内におけるICOは事実上不可能とされている)
具体的には、「ホワイトペーパー」と呼ばれる「企画や構想を記した文書」を公開するのみで、売り手に対する信頼の担保や、信頼のある価格の目安を構築する
ための「価値の合意形成」の仕組みがきちんと設計されていないことが多いからだ。
さて、ここで少し想像してみよう。世界中のあらゆる「資産」に対して、これらの仕組みを適切に設計することができればどんな社会が実現できるだろうか。
資産の所有権を細かく分割したトークンを発行してブロックチェーンに記録することで、多くの人々がそのトークンを所有したり売買したりする「資産の流通」が実現するのでないだろうか。
たとえば、人の創造性といった「感性」や、その感性から生み出される「アイデア」といった「感覚的資産」の流通すらも可能になる。人々が本当は価値があるだろうと感じていても、その価値を定量化できなかった「資産」である。
どうやって「アイデア」の価値(価格の目安)を定量化できるのであろうか?
IPOの例のように、「目利き力」がある可能性が高い人による「価値の合意形成」を仕組み化すれば良い。ただ、ここで言うところの「価値の合意形成」は「感性」のような「感覚的資産」を数字によってデータ化する必要がある。
さらに、「アイデア」に限らず、「スキル」、「人脈」といった定量化が難しかった資産を数字で見える化する。そして、「資金の出し手」といった、今までは細分化して流通させることが難しかったものでも、ブロックチェーンでのトークンという細分化流通技術を使って「分散化」させることができれば、起業家は必要なピースを市場から組み合わせて事業化でき、今よりはるかに高速かつ効率的にイノベーションを社会に送り出せるようになる。
ここまで来ると、もはや「会社」という事業体をとる必要もない。「会社」も分散化すれば「人の集合体」であり、それらをさらに「分散化」して流通させている時点で、究極の「分散化社会」が実現している。
トークンエコノミーがもたらす分散化社会においては、各個人が自分の「強み」や「資産(有形、無形を含む)」だけをトークン化して流通網にのせることで対価を受け取ることができ、逆に自分がもっていないピースは流通させて、市場から調達すれば良い。そういった意味では、「究極の共創社会」、または「究極のシェアリングエコノミー」とも言える。
ここまでの話を総括すると、ブロックチェーン技術を活用したトークンエコノミーは、そこで生まれた「創造的価値」を世の中の最適な場所に届け、誰もが社会価値創造の連鎖に貢献できる世界を実現しようとしている。
一方で昨今盛り上がりを見せるAI(=人工知能)やそれに伴う技術は、世の中から「must」を減らし、人間がより「創造的」な「want」や「will」に時間を使えるような世界を創ろうとしている。
AIとトークンがそれぞれ実現させる世界観は、今後重なり合ってさらに新しい世界をもたらすこともあるだろう。
これらの技術はまだまだ黎明期ではあるが、今後ともに進化し、社会を変革することによって、私たち人類に「より良い世界」をもたらすことは間違いない。