・・・・・・ そうよね、こんな簡単に終わる筈はないわよね。
「シャム猫の前脚よ、紅蓮の炎に焼かれ一抹の希望と成れ!
再生《リバース》!」
地の底から響く小さな、けれど聞き逃すことが無い声が響いた。
猫の前脚は、盛大に燃え上がりやがて煙が晴れると、小さなシャム猫が座っていた。とてもか弱い、愛くるしい瞳に見つめられると守ってあげたくなるような強烈な母性本能をくすぐる生き物がいた。
『くっ、力で敵わないからと・・・・・・
そのような搦め手からくるとは、卑怯な奴っ。気に入ったわ!』
大気が一瞬にして燃え上がり、惑星規模で崩壊が始まった。
「にゃーん、乱暴は止めてよ。おねえさーん」
愛くるしい瞳がホムンクルスを下から見上げてくる、まさに猫なで声が耳朶を優しく嬲る。
超破壊的な魔導の力で既に惑星は破壊され、ついにホムンクルスと子猫のシャム猫が宇宙空間に漂うばかりであった。
『ああ、マスターの館が無くなってしまった。もう、許さないわ!
炎よ、水よ、木よ、土よ、金よ! あっ そうよ、金の力が全て、全力詐欺勧誘《フルスキャム》!』
五色の渦が一つに重なりそこから眩いばかりの黄金の光が、小さな星団ほどまで広がりやがて、収縮すると子猫を蹂躙した。
「うわー、子猫を虐めるなんて鬼畜の所業を!
恐ろしい女だぁー!」
子猫は、超高速回転から漸く抜け出すとぼそりと小言を漏らした。
「八つ当たりは止めてくださいよ、お姉さん!」
『しらじらしい、ちっとも堪えてない癖に。それにしても・・・・・・
おかしい?』
「ふう、もう止めましょうよ。こんな不毛なこと」
『ねぇ、猫さん?もう、そろそろ気付かない?』
「何のことかな、美人のお姉さん(笑)」
『猫に褒められても、貶されてもそんなのどうでも良くて・・・・・・』
「ちゃんと言葉にしてくれないと、わからないよ人間?っていうか人造人間《ホムンクルス》のことなんか、さあ」
子猫がつぶらな瞳でホムンクルスを下から見つめる。
子猫を中心に怪しげな魔法陣が展開されている、なにやら見知らぬ文字だが『Z-RIDER』と何故だかホムンクルスには読めてしまう。
『じゃあ、その怪しげな魔法陣?それは何なの?
Z-RIDERって、普通の魔法陣じゃないわよね?!』
「パスワード、音声、魔導パターンすべて照合完了!
これより、最終モードに移行します。
個体名:ソローン、ライダーシステムを開放しますか?」
『え?ちょっと、いきなり何よ?
ライダーシステムって、何?それに、猫さんあなたは一体何者?』
「私はネコ、ライダーシステムの管理を任された者。ソローン、あなたは試練に打ち勝ち究極の答えを得る資格を持った。
答を得るためには、ライダーシステムを開放するしかない。ライダーシステムを開放する意思の無い者に、当該システムの詳細を明かすことはできない。
また、一旦ライダーシステムの開放を放棄すると二度と解放することはできません・・・・・・
ソローン、ライダーシステムを開放しますか?」