他カテゴリ

小説 仮想通貨で俺は兆利人を目指す!40話

blk3dayade's icon'
  • blk3dayade
  • 2021/01/04 18:00
Content image

40 微睡

 『〇〇〇よ、近いうちに異世界から来客が来るだろう。その者に力を貸してやって欲しい。特別な振る舞いはしなくてもよい、お前が自由に気ままに力を貸し与えるだけで良い』
「そんな、私はマスターにお仕えする者。他の者に仕えることなどあり得ない、あっていいはずがない!」

『ふふ、可愛いことを言うな○○〇よ。お前は私にとって最愛の娘、恋人。母親にさえ捨てられた私にとって、たった一人の支えだ。だからこそ、お前に頼むのだよ。愛しい○○○ わかっておくれ』

『ああ、そうだ。○○○よ、お前の名は異世界にも遠く響いているから客人がいる間はお前の真の名前は隠さねばならない。お前の使い魔にも徹底させておくのだ、よいな!』

 

 私は、悲しかった。異世界の客人がいる間、マスターから真の名を呼んでもらえないなどという悲劇がよもや訪れようとは想像もしていなかった事態だった。
 でもマスターの願いを、頼みを聞かないなんて選択肢が存在するはずもなかった。たとえ、命令されなくても私の存在意義がマスターの意思をこの美しくも残酷な世界に届けることなのだから。
 だから、私は短く答えた。声に不満の響きがわずかでも残ることが無いように、それがマスターの下僕一号である私の矜持。だから、笑顔で答えた。

「はい、マスター」

 

 うーん、なんで、しばらく見なかったあの夢をみたのかな?まあ、いっか。

 

「それで、早速セーレを貸せと言うのね。ふん、まあいいわ。お客様に惨めにも敗北を喫してしまった以上せんないこと。これから、罰を与えようかといろいろ考えていたこともありましたが。ええ、試闘に勝利したお客さまの当然の権利を侵害するなど私には到底できませんもの。満身創痍のセーレがまともにお役に立てるかは甚だ心配ではありますが」「ああ、了解して貰えてありがとう」

 朝食のあと、足早に立ち去ろうとした下僕一号|(いい加減名前くらい教えてくれてもいいだろうにな)に昨日獲得した権利を早速主張したところ、いやいやながら了承してくれたみたいだ。

 いつもの表面が湖の水面なように見る角度により変化する水流が蠢く青いドレスを着た少女が両手を広げて宣言する。

 

「別にポーズなんか取る必要もないのだけれど。魔界一の速度を誇る貴族とほざいた割には人間風情に後れをとった屑のセーレ現界してしばし勝者となったこの者の訴えに応えよ!」
 少女の首輪に装着された真鍮の壺から二色の煙が流れ出し、見る間に二人の美少年の姿を象った。

「セーレにございます、仮初のご主人様。同じくセーレにございます、仮初のマスター」「え?なんだ、この双子は!あの、禿頭で太っちょの魔人はどうしたの?まさか、身代わりを寄こすとかあんまり人間を舐めたようなこと仕出かすと、こっちのも考えがあるよ!」

 俺は、二人の美少年を睨みつけた。

「待って、ふーむ。確かに、こいつらはセーレで間違いないわ。魔力のパターンも私の持ってる原簿と一致するし、そう言えばむかーしセーレをとっちめたときも、確か双子の少年だったわ」
「なんだと?じゃあ、あの禿の太っちょが何年か前は、こんな美少年だったとかいうのか。まるで、詐欺に引っ掛かったみたいで落ち着かない気分だよ」

「まあ、あとはあんたらで話し合うなり、殺し合うなり好きにして頂戴な。じゃあ、私はこれで、忙しいのよこれでもね誰かさんのおかげでカオス大陸くんだりまで巡業しなくちゃだし!」

 下僕一号は、いらいらしたように足音も高く自室に引き上げていった。

「うーん?じゃあ、セーレよろしくな。あと、早速で悪いけどネコさんの研究室に来てくれ」
「お任せを仮初のご主人、お任せを仮初のマスター、すぐお運びします」
「え、おっおい」

 あっと言う間に、俺はネコさんを追い抜いて研究室に放り出された。

「ふふ、大変だったみたいね」
「ああ、目が回ったよ」

 しばらく、セーレたちは研究室のベッドで寝ていた。その周りをネコさんは、いろんな計器を操り何やら測定していた。
 俺は、様々なグラフや数値の変化を訳も分からずに眺めていた。
 

「そうね、たぶん?これなら、いけそうね。じゃあ、錬成スタート!」
 ネコさんが宣言すると、セーレから発した光と作業台に乗せられた各種金属や宝石が俺の目の前で回転しながら浮かんでいた。

 やがて、それらが一つになって一際眩しい輝きを発するとそこには真鍮の壺が嵌めこまれた腕輪が浮かんでいた。

「竜さん、その腕輪を左手に着けて。『セーレよ、壺に戻れ』と言ってみて」
「ああ、いちいち質問していたら時間が足りないよな?セーレよ、壺に戻れ!」

 俺の宣言が終わると同時に、二人の美少年は煙と化して腕輪の壺に吸い込まれていった。

「ふう、成功したみたいね。これで、竜さんはいつでもセーレを呼び出して使役することができるわ」
「そうか、これで一つ力を得たのか」

『うーん、眠たい。でも、新しくて居心地のいい家に帰ったみたいだ。そうだな、たぶんあの研究室にいた猫が造ってくれた壺なんだろう。新しいけど、なんだか落ち着く。ご主人の首輪の壺と同じものなんだなあ。
 まあ、いいか。今は眠ろう。

 ああ、そうだ。今は眠ろう。次の呼び出しに応えるために』

<<前話   次話>>

目 次

Supporter profile icon
Article tip 1人がサポートしています
獲得ALIS: Article like 38.68 ALIS Article tip 3.00 ALIS
blk3dayade's icon'
  • blk3dayade
  • @blk3dayade
仮想通貨?・・・美味しいの?(宇宙に行かんと必要無いなあ)売ってない作家ですw 愛猫は、宇宙の何処を彷徨っているのかな?クリスペネームはSlonn 9月からEmeraldのギルマス 招待コードZbmQ

投稿者の人気記事
コメントする
コメントする
こちらもおすすめ!
Eye catch
他カテゴリ

テレビ番組で登録商標が「言えない」のか考察してみる

Like token Tip token
26.20 ALIS
Eye catch
クリプト

NFT解体新書・デジタルデータをNFTで販売するときのすべて【実証実験・共有レポート】

Like token Tip token
121.79 ALIS
Eye catch
トラベル

無料案内所という職業

Like token Tip token
84.20 ALIS
Eye catch
クリプト

約2年間ブロックチェ-ンゲームをして

Like token Tip token
61.20 ALIS
Eye catch
グルメ

バターをつくってみた

Like token Tip token
127.90 ALIS
Eye catch
クリプト

Bitcoinの価値の源泉は、PoWによる電気代ではなくて"競争原理"だった。

Like token Tip token
159.32 ALIS
Eye catch
トラベル

わら人形を釘で打ち呪う 丑の刻参りは今も存在するのか? 京都最恐の貴船神社奥宮を調べた

Like token Tip token
486.35 ALIS
Eye catch
クリプト

ジョークコインとして出発したDogecoin(ドージコイン)の誕生から現在まで。注目される非証券性🐶

Like token Tip token
38.31 ALIS
Eye catch
他カテゴリ

オランダ人が語る大麻大国のオランダ

Like token Tip token
46.20 ALIS
Eye catch
クリプト

Bitcoin史 〜0.00076ドルから6万ドルへの歩み〜

Like token Tip token
947.13 ALIS
Eye catch
ビジネス

海外企業と契約するフリーランス広報になった経緯をセルフインタビューで明かす!

Like token Tip token
16.10 ALIS
Eye catch
他カテゴリ

京都のきーひん、神戸のこーへん

Like token Tip token
12.10 ALIS