インド国内最大級のシェアリングエコノミーサービス「Drivezy」は、車やバイクのP2Pレンタルプラットフォームです。2014年Ashwarya Singh氏がムンバイで創業し、Y CombinatorやGoogle Launchpad Acceleratorにも選出されています。
このDrivezyが、プラットフォームのさらなる発展にブロックチェーン技術を活用していく動きが見えてきたことや、それを影で支えているのが実は日本の会社であったことから、記事にまとめてみることにしました。ウェブサイトではICO後の開発進捗が公表されていないので少し迷いましたが、構想自体は面白いので概要のみご紹介します。
日本では当たり前になったレンタカー事業ですが、Drivezyのウェブサイトを見ると、庶民が車やバイクを楽しむ機会が増えることへの意気込みやワクワク感が伝わってきます。
一方で、中所得者層が増え、車の所有台数が過去10年で3倍になったインドでは、交通渋滞、大気汚染、交通事故による死亡者数の増加などの副作用も深刻化しており、政府は所有よりも共有を推進する政策へと舵を切りはじめました。
実際に(ざっとぐぐっただけですが)、個人が運転手になれるUber、シティタクシー呼び出しからカーレンタルまでできるOla、一般車をレンタルするDrivezyやZoomcarと色々でてきます。
そんな追い風の中、2018年2月にDrivezyがICO(Initial Coin Offering)を実施し、500USD相当を調達。記事によれば、ICO参加者はDrivezyが発行したトークン所有を通じて、Drivezyプラットフォーム上の車に投資ができ、その車が稼いでくる投資利益がリターンになるよう設計されていたようです。
発行されたトークンは、RentalCoins。ICO当時の状況はこちらが詳しいですが、現在はRentalCoinsのウェブサイトはRayyというプロジェクトサイトに遷移するためホワイトペーパーは入手できませんでした。
察するにRayyは、Drivezy主導のブロックチェーンプロジェクトで、レンタカーの域を超えてあらゆるジャンルに適応できる分散型シェアリングエコノミーを目指しています。
Rayyプロジェクト3つの柱
・マーケットプレイス内の商品やサービス検索を容易にするRayySearch
・取引手数料がかからないマーケットプレイスRayyShare
・シェアリングエコノミーのための分散型プロトコルRayyProtocol
RayyProtocol4つの提供価値
・USDと価値固定されたERC20型ステーブルコインRayyCash
・カウンターパーティーリスクや取引手数料を下げるスマートコントラクトLeaseContracts
・特定地域での最適提供価格を導き出すオラクルAtlas
・複数のシェアエコサービスで共通利用できるユーザーID Canvas
情報不足のためあくまで所感ですが、日本ほど見ず知らずの他人を鼻から信用できる国はめずらしいですし、インドや新興国のシェアリングエコノミー市場において「ブロックに残るから悪さできない」という心理的ストッパーは極めて重要になってくるはず。Drivezyそのものは超ローカルサービスですが、このRayyProtocolはオープンソースで世界中に広がっていく期待も持てます。開発のアップデートがあることを祈るばかりです。
ICOと同年の11月、割り勘アプリPaymoを展開していたAnyPayが、シェアエコ分野の投資に特化した子会社Harbourfront Capitalを立ち上げ、第1号案件としてDrivezy(の車両そのもの)に出資。
Drivezyの場合、車両搭載モジュールからGPSやガソリン残量などのデータ取得ができるというから質は確かでしょうが、車両供給数が圧倒的に足りない状態。打開策として車両数を1000台から1万台まで引き上げるべく、DrivezyはHyundaiと手を組んだり、Harbourfront Capitalが車両所有をするユニークな出資方法をとったりと攻めの姿勢を見せてきました。
Rayyのプロジェクトサイトには、PartnersとしてLayerX社とAnyPay社のロゴが載っていますが、いずれも日本法人で、ブロックチェーン/ICOコンサルティング事業を展開しています。LayerXを一緒に立ち上げたGunosyさんも、コーポレートベンチャーキャピタルGunosy Capitalでシァリングエコノミー、ブロックチェーンを注力領域に上げていらっしゃるので、親和性もばっちりそう。
同2社のセキュリティトークンへの考え方についてより深く知りたい方は、幻冬社さんのログもおすすめです。
という訳でまとめると、プロジェクトの進捗は確認できなかったものの、Drivezyが分散型シェアエコ構想に欠かせない”データ取得”ができる環境(=優良車両)を持っていること、その車両不足解消に向けてAnyPay社などからのバックアップを受けていることが分かりました。
冒頭で触れたとおりインド政府もカーシェアには積極的ですし、ちょうどReserve Bank of Indiaが暗号通貨を合法化しそうというニュースも入ってきたし、トップダウンの傾向が強いインドならではの未来が待っていそうです。
以上、トークン価格や投資情報としては全く責任をとれないですが、あくまでブロックチェーン利活用事例としてシェアさせてもらいました。情報に誤りなどありましたら、ご一報いただけるとありがたいです。