仮想通貨レンディングの大手セルシウスが破産から脱出したというニュースが話題になっている。
同社は多額の債務を抱えていたが、再建計画を実行し、債権者に対してペイパルやコインベースを使って仮想通貨を返済したのだ。
セルシウスの弁護士であるカークランド&エリスは、裁判所に提出した書類で、債権者への支払いの進捗状況を明らかにした。セルシウスは2022年7月に破産申請をしたが、先週、その手続きから抜け出したと発表した。
カークランド&エリスによると、米国の債権者はペイパルを通じて、海外の債権者はコインベースを通じて、自分の仮想通貨を受け取ったという。ビットコイン(BTC)で2万255.66BTCとイーサリアム(ETH)で30万1,338.77ETHを含む20億ドル相当の仮想通貨が支払われたとのことだ。
「ほとんどの債権者がペイパル/ベンモやコインベースで仮想通貨を無事に回収した。ペイパル/ベンモとコインベースからのBTC/ETHの支払いは、約75%が完了した」
と述べている。
一方、再建計画に賛成しなかった債権者は、まだ仮想通貨を受け取れないという。また、ペイパルやコインベースがマネーロンダリング対策(AML)やコンプライアンスの観点から問題を指摘した場合、一部の債権者は支払いを受けるのに困るかもしれないとも付け加えている。
セルシウス債権者への分配 Source: Stretto
仮想通貨界隈では、セルシウスの再建計画が仮想通貨市場にどんな影響を与えるのか、さまざまな見方が出ている。
2023年10月、セルシウスは裁判所に再建計画を承認してもらい、2023年内に債権者を全額返済すると宣言していた。
しかし、セルシウスの元CEOアレックス・マシンスキー氏は、2024年9月に同社の破綻に関する裁判に立ち会うことになっている。
しかも、彼の弁護団は、破産した仮想通貨取引所FTXの元CEOサム・バンクマン-フリード氏と同じだということで、利益相反の疑いが持たれている。
セルシウスは、破産手続きから脱却し、債権者に対して30億ドル相当の仮想通貨と法定通貨を配布すると発表した。また、新しいビットコインマイニング企業イオニック・デジタルを設立するとも述べた。これらの措置は、セルシウスの再建と再生のためのものであると同社は主張している。
しかし、セルシウスの再建計画には、多くの疑問や懸念が残されている。
まず、債権者に対する分配は、ペイパルやコインベースを通じて行われるが、これらのプラットフォームは、マネーロンダリング対策やコンプライアンスの観点から、一部の債権者の受け取りを拒否する可能性がある。
また、再編計画に同意しなかった債権者は、その申し立てが解決されるまで分配を受け取れないとされている。これらの債権者は、セルシウスに対して訴訟を起こすことも考えられる。
次に、新たに設立されたビットコインマイニング企業イオニック・デジタルは、セルシウスの債権者にとってどのようなメリットをもたらすのか不明である。
同社の株式は、必要な承認が得られ次第、上場される予定であるが、その時期や価値は不透明である。また、ビットコインマイニングは、電力消費や環境問題などの課題に直面しており、将来的には規制や競争の激化により収益性が低下する可能性がある。
そして、セルシウスの元CEOであるアレックス・マシンスキー氏の裁判は、仮想通貨業界にとって重要な意味を持つ。
彼が有罪となれば、仮想通貨の信頼性や透明性に大きな打撃を与えることになるだろう。
逆に彼が無罪となれば、仮想通貨の自由やイノベーションに対する支持を得ることになるかもしれない。
いずれにせよ、彼の裁判は、仮想通貨の規制やガバナンスに関する議論を促進することになると思われる。