ドミニカで生活している時のメインの仕事は地元の漁師さんがとってくる魚の集計でした。
毎日色々な漁師さんが様々な魚をとってくるのですが、特に大物ばかりをとってくるスター的な漁師さんがいました。
ギルバート・バートンさん、ラリー・サンダーソンさんの2人です。
2人は他の漁師さんとは違って、中型魚にはほとんど関心がなく、ほぼ毎日大型魚をとってきていました。
毎日この2人が帰ってくるのをワクワクしながら港で待っていたのを覚えています。
この2人を含む多くのドミニカの漁師さんたちは、小さな船でマグロやカジキなど大型魚を毎日とってきます。
ですが彼らは、はえ縄漁のような大規模な仕掛けも持っていません。
彼らが大型魚をとれるのは、ある装置を使っているからです。
その装置はFADと呼ばれているもの。
魚が集まるための魚礁を人工的に作り出す技術です。
装置といっても銀色の大型のシートみたいなものを海面付近に固定する結構シンプルなものです。
小さな魚はなぜかその銀色のシートの周りに集まってくるのだそうです。
すると今度は中型の魚がその小型魚を食べるためにやってきます。
そしてカジキやマグロなどの大型魚が中型の魚を取るために集まります。
最後にドミニカの漁師さんが、そこに行ってカジキやマグロをゲットするという構図です。
ものすごくわかりやすい食物連鎖を人工的に作り出して、大物をゲットするという技法です。
これは日本の技術協力によって導入された技だそうです。
一度このFADの点検作業に同行したことがあります。
ドミニカ国の東海岸の漁師さんたちはみんな大西洋に漁に出ます。
西海岸沿いのカリブ海はかなり穏やかな海ですが、大西洋沿いは波が激しい荒海です。
小さなエンジンボートに数人乗り込んで漁場まで行くのですが、現場にたどり着くまでに1時間ほどものすごい波に揺られてかなりの船酔いになりました。
ですが大変なのはここからでした。
FADの現場までたどり着くと、そこでエンジンを止めて作業します。
ボートが止まると、動いている時の何倍もの揺れが襲ってきて。
吐き気と悪寒でフラフラ、方向感覚もなくなってしまって、何が何だかわからない状況に。
我慢できずに海に吐いてしまいました。
すると吐いたものを食べるためにそこに小さな魚が寄ってきました。。
FADの周りには、吐いたものに魚が集まるほど、たくさんの小魚が集まっていました。
思いがけない形でFADの集魚能力のすごい威力を知ることができました!!
と言っても感心する余裕などはあるはずもなく、漁師さんたちが作業を終わるまでボートの中で辛い船酔いに耐えていました😅
作業は2時間ほど続き、ようやく港まで戻ります。
やっと救われた〜、と思って上陸したのですが、ふらついて全く歩けない状態。
1時間くらいしてようやくまっすぐ歩けるようになりました。
FADの取り付けだけでこんなに大変なので、実際に漁をするのはさらにハードなはずです。
さらにFADに魚が集まることはわかりましたが、その魚を捕まえるのはさらに全く別の労力が要ります。
こんな過酷な漁を毎日やっている漁師さんは本当にすごいと感心しました!!