ジャライ族の3つの村に入ってインタビューや話し合いなどを続けた結果、多くの村人が直面している問題が明らかになってきました。
村人に問題点を話し合ってもらいそれを石ころで投票した結果、全ての村で次の3つが上位になりました。
① 教育の機会がないため他のカンボジア人に比べ社会的に弱い立場になる。
② 道路などのインフラが整っていないので孤立してしまう。
③ 乳児死亡率が極端に高い。
まず①の問題に関してですが、基本的には彼らは学校教育なんか必要としない生活を送っていました。ですが急激な森林伐採によって、強制的に一般カンボジア社会に適応する必要が出てきました。その中で読み書きや計算ができないジャライ族は多くの場合搾取されて、極端な場合土地を騙し取られたりと悲惨な状況に置かれていました。そこで彼らが一番望んでいたのが学校の設立でした。本来なら地方政府の仕事なのですが、今回は自分たちの団体がジャライ族と地方政府の間に入って村人を対象にした学校の設立をサポーツすることになりました。一方で村人全員にも活動に関わってもらうという趣旨と経費節約を兼ねて、土地の整備や学校の建設は村人が実際に大工さんになって建物を建ててもらうことにしました。
そして学校が出来上がるまでの間は村に教師を呼んで簡易的な授業をやってもらうことにしました。
学校ができた後は、学校を村人たちのコミュニティセンターとして活用することにしました。そこで子供ではなく大人たちへの識字教育も行っていこうということになりました。
②の道路などのインフラに関しては、自分たちのような小さな団体が関わることはできないということで、他の団体などにお任せすることになりました。
③の乳児死亡率が高いという問題ですが、伝統的にジャライ族の村にいる産婆さんはシャーマンのような存在で、妊婦さんの扱いに関して色々と不思議な伝統がありました。妊婦さんを専用の小屋に隔離して煙で燻すなどの伝統もあります。また生まれた赤ちゃんのへその緒をその辺に落ちている竹で切ったりするので感染症の危険も高いそうです。そこでコミュニティの助産師を定期的に村に連れて行って、村の産婆さん、妊婦さん、お母さん達を対象にしたトレーニング活動を行うことにしました。
自分の気持ちの中では、ジャライ族の人たちに話を聞く前は彼らの伝統文化の保存や風習の維持など、そういった活動の支援をしたいと思って村に入りました。ですが実際に村人達の聞き取り調査や話し合いをしてみると、伝統や文化の維持に関心を持っている人は誰1人いませんでした。これは自分の予想とは大きく違うことでした。
そういった文化や風習は、自分たちのような部外者から見る場合か、それか彼ら自身がその風習を失った後に振り返って貴重さを認識できるものなのでしょう。外側から見るのと実際に生活している人の感覚の差をはっきりと気付かされました。
自分たちの視点から見たジャライ族の状況と彼らが実際に感じているジャライ族の状況の違いなどを通して、同じ事象を色々な立場や環境から見たときに見える景色の違いみたいなものを学ばせてもらうことが出来ました。
次回は学校プロジェクトの様子を詳しくお伝えします。