今回は、ここまでの「革命」の歴史をおさらいしつつ、いま起こっていることを示して、もうすこし先の未来を考えてみたいと思います。
「革命ってどこで起こっているの?」という方も、たくさんいらっしゃると思います。でも、これまで「そういう未来の可能性あるよね」、と言われていたことが、いままさに目の前で本当に起こっているのです。いまこの瞬間にも、「革命」を目撃している人たちは興奮がずっと続いています。
今回はそんな「革命」をざっくりとあまさず書いています。ちょっと長くなりますが、しばらくお付き合いください。
「革命」のはじまりは、”コロンブスの卵”のような逆転の発想でした。
”インターネットとパソコンをフル活用すると、「お金」のように価値あるものでも、人々は安全にやりとりが行える”
約10年前、インターネット上の「お金」のやりとりを、関わるみんなで確認し合うことで、安全にやりとりができるはず、という挑戦的なアイディアを試した人たちがいます。
それは見事に証明されました。
みんながオープンにやりとりすることで、逆に、インチキができなくなったのです。これは、テクノロジーによって、高い「信用」を持つ国や、強い権力を借りなくても、「お金」のような価値あるものがやりとりできる、ということを示しました。
たくさんの「お金」のやりとりは、人の目でいちいち確認するのではなく、「パソコンのソフトのようなもの」が勝手にやってくれます。とっても楽ちんです。たくさんパソコンを動かすと、それなりに電気代は掛かります。ただ、このソフトを動かしていると、「お金のやりとりをしっかり確認してありがとう」ということで、それなりの報酬がもらえます。地域によっては、電気代を使ってもパソコンを動かすメリットがあるのです。
このアイディアは約10年前に発明されて、そこから、たくさんの賢い人たちが改良を加えていきました。
次の「革命」が起こったのは、いまから約5年前です。「みんなにオープンにしてインチキできない仕組みは、ほかのことにも応用が効くのでは」というアイディアでした。
みんなで確認しあうことの中に、もう少し複雑なことができる、「計算式やルール」を加えたのです。例えば、相手に100円を預けて、じゃんけんに勝ったら200円、負けたら0円になるといった、「計算式やルール」を加えられるようになりました。
この「計算式やルール」のことを、ここではシステムと呼びます。システムはいちど公開したら、お金のやりとりと同じく、誰も変更もできず、インチキができないものになります。
そこから世界中の色んな人が、自由な発想で面白いシステムを考えていきました。そして、このシステムを使えば、誰でもインターネット上に、「ポイントのようなもの」を発行できると考えたのです。
インターネット上で「ポイントのようなもの」が自由に発行ができるということは、言ってみれば、国が通貨を発行するようなものです。インターネット上に「国」が作れる革新的なアイディアでした。
実際に、この「ポイントのようなもの」は、いろいろな人やチームが発行して、大きな流行を作り出しました。
「ポイントのようなもの」は、そのうち、米ドルや円とも【交換】できるようになりました。また、米ドルの価値とほとんど同じにし続ける仕組みも、このシステムによって作られました。1ポイントがほぼ1ドルという、安定した価値をインターネットの世界にもたらしたのです。
いまは、インターネット上にある「国」ごとに、「ポイントのようなもの」がたくさんあります。「ポイントのようなもの」をもっと増やしたい人や、色々な人と「ポイントのようなもの」を【交換】したい人々が増えていくのです。
こうなると、システムを活用した面白いアイディアがどんどん出てきます。
ある人たちが、このシステムで、インターネット上に「銀行のようなもの」を作ることを思いつきます。
例えば、「ポイントのようなもの」を一定期間預けておくと利子がつく、銀行の定期預金と似たシステムが作られました。このシステムは、やりとりに人の手がいっさい入らず、一度動き出したら、作った人も変更できない仕組みになっています。
あるチームは、たくさん集めた「ポイントのようなもの」を、使いたい人に貸し出すシステムを作りました。こちらもやりとりに人の手は入らず、決められたルールで「ポイントのような」ものが、次々と貸し出されていき、貸した人には手数料が入って、あらかじめ決まった報酬がもらえるようになっています。
別のチームは、たくさんの種類がある「ポイントのようなもの」を、あらゆる組み合わせで【交換】できるシステムを作りました。そのシステムに2種類のポイント預けると、そのポイントがやりとりされるたびに、預けた人に報酬が入る仕組みになっています。銀行は円とドルを【交換】するときに手数料を取りますが、その手数料による報酬を誰でももらえるようになったということです。
これは、「銀行」の仕事を誰でも行えるようにした、前代未聞のアイディアでした。また、これまでは人の手がわずかに入っていたこの仕組みを、システムだけで再現したので、驚くべき人気になりました。人の手が入るよりも公平で、掛かるコストも安いからです。
このシステムは、米国で人気の「人の手が入る【交換】の場所」よりも、「ポイントのようなもの」がより多く【交換】されるようになりました。1日450億円もの大金です。人の手がまったく必要ないシステムが生まれ、本格的な「革命」が起こったのです。
これらのシステムは、いちど誰かが作ったシステムは基本的にコピーをして使って良いルールになっています。そのため、一度作られたシステムを再利用した、また新しいシステムが次々と生まれていきます。
また、システムはすべて世界中にオープンになっています。そのため、他のシステムとも連携がしやすいので、システム同士が組み合わせることにより、より便利な仕組みになっていきます。
さらに、オープンなシステムを作るチームには、たくさんの資金が提供されるようになりました。チームは安心してシステム作りに専念できるため、みるみるうちに新しいシステムが増えていき、システムもどんどん進化していきます。いまでは、銀行以外にも、たくさんの面白いシステムが公開されてきています。
例えば、保険のシステムを、インターネット上に持ち込もうとしているチームもあります。
インターネット上の銀行から、万が一、「ポイントのようなもの」が盗まれてしまったときに、事前に保険を掛けておけば安心ですよね。ただ、補償を支払うべきか、支払わないべきかは、これまでは保険会社が判断することでした。
そのシステムでは、その保険のシステムに関わる世界中の人々の投票によって、補償するかを決めます。もし、正当な理由があるのに、保険料が支払われなければ、この保険のシステムに「信用」がなくなります。正しい判断をしないと、関わるみんなが損する仕組みになっているため、みんなが一丸となって正しい判断のために動きます。
こうして、これまでは昔ながらの銀行や保険会社が行っていたような「仕事」が、インターネット上のシステムが行えるようになってきました。しかも、人がいないシステムなので、これまでより手間やコストが掛からないのです。
さきほど紹介した、「銀行」の仕事を誰でも行えるようにしたシステムは、たった7人によってわずか数年で作られたものです。これまで国や大きな会社でしかできなかったような「仕事」が、どんどんシステムが代わりに行ってくれるようになった時、社会は大きく変化することでしょう。
これだけ少人数で、手間やコストが掛からないと、例えば、お金を銀行に預けているともらえた「利子」をたくさん付けることができるようになります。これまでより高い利子を得られることを活用した、変わったアイデアを実現させたチームもあります。
ふつう宝くじを買うと、当たれば儲かり、外れれば損しますよね。ところが、外れても損しないで返金され、当たったら儲かるという「損しない宝くじのシステム」が作られました。抽選も完全にランダムであることを、みんなで確認しあっているので、インチキも起こりません。
こうしたアイデアは、今も世界中でたくさんの人が考え、システムをコピーしたり組み合わせて、とてつもないスピード感をもって、色々な挑戦がはじまっています。
インターネット上に「国」を作れるシステムは、人気の高いメジャーなものから、マイナーなもの、あるいは日本人の小さなチームが作っているユニークなものまで、無数にあります。誰でも使え、そのどれを使うかの選択も自由です。
また、その仕組みを使って作られた、銀行や保険のシステムもまた、インターネット上の「国」ごとにそれぞれあり、システムは似ているものの、別の存在なのです。世界中にいる価値観が同じ人たちが集まり、それぞれの「国」をつくり出しています。
すでに人気のある「国」もありますが、まだ「国」づくりは始まったばかりですし、人類の歴史で考えると、まだ見ぬ「国」がこれから急に台頭してきてもおかしくないタイミングです。
それぞれの「国」で作られたシステムは、多くは世界中で誰でも再利用できるように公開されています。「国」や銀行を作るにしても、ゼロからではなく、システムをコピーして、すこし改良を加えたりすることで、短期間に手間やコストも少なく、再利用できます。
これから、銀行や保険だけでなく、人の手がはいらないシステムでAmazonやYouTubeのようなものも出てきます。そのシステムをコピーして再利用することで、誰でもレゴのようにシステムを組み合わせて、「国」を作ることができるのです。
2020年8月末、とあるイベントで、”お金”を取り扱う日本政府のえらい人が、このような発言をしました。
(意訳・要約)
人が人を「信用」するとき、きちんと相手と会って話す、ということを大事にしていますよね。でも、なぜ人は、会って話すことで、相手を「信用」できるのでしょうか?
ほかにも、私たちが直感的に「信用」してしまうことがあります。
・高級オフィスにいる立派なスーツを着たビジネスパーソン
・美しくデザインされたプレゼンテーション
・洗練されたレストランでの接待
・広告に登場するカッコいい映画俳優
・おしゃれな表紙がユニークな書籍
・恋人に手渡すバラの束
・有名な大聖堂で行われる結婚式
これらは、「手間」が掛かり「お金」を使うことであり、よこしまな人はたぶん行わないだろうと思わせるから、「信用」していい、と直感が思わせるのです。
ただ、これらの行いは、本質的な価値とはなんら関係がなく、「信用」や真面目さを印象づけるという目的のためだけに行われているのです。
日本政府のえらい人は、これまでの社会で「信用」を得るために行われていたことが、本質的ではなく、それに代わるシステムの可能性について語ったのです。
いまから1か月もしたら、また新しいシステムが登場し、進化が続いていくでしょう。しかも、いま「革命」の爆心地である「お金」の領域から、ほかのあらゆるサービスに広がりを見せていくことは間違いありません。
インターネット上の銀行は、立派なスーツ姿の銀行員はいっさい出てきません。「信用」は、正しくルールが設計されているかという、システムの「確からしさ」から来ています。システムはコードで書かれていて、誰でも確認でき、たいていは説明書もついています。そのコードや説明書を見て、問題ないと判断されると、「信用」が生まれるのです。
今後は、本質的でない、”着飾った行い”よりも、より”本質的で確からしい行い”によって、あらゆるものが評価されていく社会になっていく、と思います。
また、人の手が入らないことで、人の上に人を作らない社会が実現すると考えます。人はシステムのもとで平等になり、決められたルールのもとで、個人が正しく評価されるようになっていきます。そのルールが気に入らなければ、インターネット上の別の「国」に入り直せば良いのです。
人の価値観というものはバラバラで、いまの「国」では許されないことでも、別の「国」では称賛されることもあります。
現代は、資本主義社会によって、「お金を稼ぎ出す」存在が、一方的に評価される社会になってしまっています。これは人や社会の一面であり、社会貢献への評価のしかたはもっと多様なはずです。
『国境なき医師団』のように、自身の命を賭して、困っている人を助けるヒーローたちが、金銭的に恵まれないとき、私たちはそこにゆがんだ社会の縮図を見ることができます。こうしたゆがみが、いろいろな価値観の「国」が生まれることで、救われる社会がやってくると想像します。システムは、そうした人たちを勇気づける未来へのバトンなのです。
長文ご覧いただきありがとうございました。ブロックチェーンが社会を変える可能性がすこしだけでも伝われば嬉しいです。先日書いた記事も参考になさってください。また、Twitterなどでお気軽にフィードバックお待ちしています。ではまた。