

みなさんは「仮想通貨」という言葉を聞いたことがありますか?テレビやニュースで「ビットコイン」という名前を耳にしたことがある人も多いかもしれません。仮想通貨とは、インターネット上でやり取りできる新しい種類のお金のことです。普段私たちが使っている紙幣や硬貨とは違って、手で触ることはできません。でも、ちゃんとお金としての価値があって、インターネットを通じて世界中の人とやり取りすることができるのです。
仮想通貨は英語では「Cryptocurrency(クリプトカレンシー)」と呼ばれています。日本では「暗号資産」という呼び方もされるようになりました。なぜ「暗号」という言葉がつくのかというと、仮想通貨には高度な暗号技術が使われているからです。この暗号技術によって、誰かが勝手に偽物のお金を作ったり、他人のお金を盗んだりすることができないように守られているのです。
普段私たちが使っているお金、たとえば日本円やアメリカドルは「法定通貨」と呼ばれています。これらのお金は国が発行していて、日本銀行やアメリカの中央銀行といった特別な組織が管理しています。もし千円札が破れてしまったら、銀行に持っていけば新しいお札と交換してもらえますよね。これは国がそのお金の価値を保証しているからです。
一方、仮想通貨には特定の国や銀行が管理しているわけではありません。では誰が管理しているのでしょうか?実は、仮想通貨はインターネットでつながった世界中のたくさんのコンピューターによって管理されているのです。これを「分散型」の仕組みといいます。一つの会社や国が全部を管理するのではなく、みんなで協力して記録を保管し、正しいかどうかをチェックしているのです。
もう一つの大きな違いは、形があるかないかです。千円札は財布の中に入れて持ち歩くことができますが、仮想通貨はスマートフォンやパソコンの中にある「ウォレット(財布)」というアプリで管理します。データとして存在しているので、目に見えることも手で触ることもできません。でも、ちゃんと価値があって、他の人に送ったり、お店で買い物に使ったりすることができるのです。
仮想通貨の仕組みを理解するために、一番大切な技術が「ブロックチェーン」です。ブロックチェーンという名前は、「ブロック(かたまり)」を「チェーン(鎖)」のようにつなげていくことから付けられました。
想像してみてください。クラスで「お小遣い帳ノート」をみんなで共有することになったとします。でも、このノートは一冊だけではありません。クラス全員が同じ内容のノートを持っていて、誰かがお小遣いを使ったり貰ったりするたびに、全員のノートに同じことを書き込んでいくのです。そして、みんなで記録を確認し合うので、誰かが嘘の記録を書こうとしても、すぐにバレてしまいます。ブロックチェーンは、このようなイメージで理解することができます。
具体的には、仮想通貨の取引記録は「ブロック」というデータのかたまりにまとめられます。たとえば「Aさんが Bさんに1ビットコインを送った」という記録がブロックに書き込まれるのです。そして、このブロックは前のブロックとつながっていて、さらにその前のブロックともつながっています。まるで鎖のように、最初のブロックから今までのすべての取引記録が一本につながっているのです。
このブロックチェーンの記録は、世界中のたくさんのコンピューターに保存されています。もし誰かが過去の記録を書き換えようとしても、世界中にある他のコンピューターの記録と違ってしまうので、すぐに不正だとわかってしまいます。このように、みんなで記録を共有し、お互いに確認し合うことで、銀行のような中心となる組織がなくても、安全にお金をやり取りできるのです。
世界には何千種類もの仮想通貨が存在していますが、その中でも特に有名なものをいくつか紹介しましょう。
最も有名なのが「ビットコイン」です。ビットコインは2009年に誕生した世界で最初の仮想通貨で、今でも最も価値が高く、多くの人に使われています。ビットコインを作ったのは「サトシ・ナカモト」という名前の人物だと言われていますが、実は誰なのか、今でも正体はわかっていません。一人なのかグループなのかも謎のままです。ビットコインは「デジタルゴールド(デジタルの金)」とも呼ばれていて、価値を保存する手段として多くの人に利用されています。
次に有名なのが「イーサリアム」です。イーサリアムは2015年に登場した仮想通貨で、単なるお金としてだけでなく、プログラムを動かすこともできる特別な仕組みを持っています。イーサリアム上では「スマートコントラクト」という自動で約束を実行するプログラムを作ることができ、様々なアプリケーションやサービスが開発されています。
他にも「リップル」「ライトコイン」「ビットコインキャッシュ」など、たくさんの種類の仮想通貨があります。それぞれに特徴があり、速く送金できるものや、プライバシーを重視したものなど、様々な目的で作られています。
仮想通貨には、普通のお金にはないたくさんの便利なところがあります。
まず一つ目は、世界中どこへでも素早く簡単にお金を送れることです。たとえば、日本からアメリカにいる友達にお金を送りたいとき、普通の銀行を使うと何日もかかることがあります。しかも、手数料もけっこう高いのです。でも仮想通貨なら、インターネットがつながっていれば、数分から数時間で世界中のどこへでもお金を送ることができます。まるでメールを送るように、国境を越えてお金をやり取りできるのです。
二つ目は、手数料が安いことです。銀行でお金を送ると、銀行に手数料を払わなければいけません。特に海外に送る場合は、何千円もの手数料がかかることもあります。でも仮想通貨なら、もっと安い手数料で送ることができます。種類によっては、ほとんど手数料がかからないものもあります。
三つ目は、銀行口座がなくても使えることです。世界には銀行口座を持っていない人がたくさんいます。でも、スマートフォンさえあれば、誰でも仮想通貨のウォレットを作ることができます。これによって、今までお金のサービスを使えなかった人たちも、お金のやり取りができるようになるのです。
四つ目は、透明性が高いことです。ブロックチェーンに記録された取引は、誰でも見ることができます。もちろん、個人の名前は表示されませんが、どのウォレットからどのウォレットにいくら送られたかという情報は公開されています。これによって、不正な取引を見つけやすくなっているのです。
五つ目は、24時間365日いつでも使えることです。銀行は夜や休日には閉まっていますが、仮想通貨のネットワークは常に動いています。深夜でも、お正月でも、いつでもお金を送ったり受け取ったりすることができるのです。
便利な仮想通貨ですが、気をつけなければいけないこともたくさんあります。
一番大きな問題は、価格が大きく変動することです。仮想通貨の値段は毎日大きく変わります。今日は1ビットコインが500万円だったのに、明日には400万円に下がってしまうこともあります。逆に、急に値段が上がることもあります。この価格の変動を「ボラティリティ」といいます。つまり、仮想通貨を持っていると、持っているお金の価値が日によって大きく変わってしまうのです。これは投資として見れば儲けるチャンスでもありますが、損をするリスクも大きいということです。
二つ目は、一度送った仮想通貨は取り消せないことです。銀行振込なら、間違って送ってしまっても、場合によっては取り消すことができます。でも、仮想通貨は一度送ってしまうと、もう取り消すことができません。間違ったアドレスに送ってしまったら、そのお金は戻ってこない可能性が高いのです。だから、送るときには慎重に確認する必要があります。
三つ目は、詐欺や盗難のリスクがあることです。仮想通貨は新しい技術なので、それを悪用しようとする人たちもいます。「絶対に儲かる」といった怪しい投資話に騙されて、お金を失ってしまう人もいます。また、ハッカーにウォレットを盗まれてしまうこともあります。パスワードを忘れてしまったり、秘密鍵を失くしてしまうと、自分の仮想通貨にアクセスできなくなってしまうこともあるのです。
四つ目は、まだ使えるお店が少ないことです。仮想通貨は徐々に広まってきていますが、それでもまだ日常の買い物で使えるお店は限られています。コンビニやスーパーでビットコインを使って買い物ができるところは、まだそれほど多くありません。
五つ目は、法律や規制が整備されている途中だということです。仮想通貨は新しい技術なので、国によって法律や規制が違います。ある国では自由に使えても、別の国では禁止されていることもあります。また、税金のルールも複雑で、仮想通貨で利益が出たときには、ちゃんと税金を払わなければいけません。
六つ目は、環境への影響です。特にビットコインは、その仕組みを動かすために世界中でたくさんの電気を使っています。これは「マイニング(採掘)」という作業に膨大な電力が必要だからです。地球温暖化が問題になっている今、これだけ電気を使うことに批判的な意見もあります。
仮想通貨を持つなら、安全に保管することがとても大切です。仮想通貨を保管する場所を「ウォレット」といいます。ウォレットには大きく分けて二種類あります。
一つ目は「ホットウォレット」です。これはインターネットにつながっているウォレットのことで、スマートフォンのアプリや、取引所のアカウントなどがこれに当たります。いつでもすぐに使えて便利ですが、インターネットにつながっているので、ハッキングされるリスクがあります。
二つ目は「コールドウォレット」です。これはインターネットから切り離されたウォレットのことで、専用のハードウェア(USBメモリのような機器)や、紙に印刷したものなどがあります。インターネットにつながっていないので、ハッキングされる心配はありませんが、その機器や紙を失くしてしまうと、仮想通貨にアクセスできなくなってしまいます。
どちらのウォレットを使うにしても、パスワードや秘密鍵は絶対に他人に教えてはいけません。また、バックアップをしっかり取っておくことも大切です。
仮想通貨は2009年に誕生してから、まだ15年ほどしか経っていません。それでも、世界中で何億人もの人が使うようになり、大きな会社や国も注目するようになりました。
今、世界中の国が「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」という、国が発行するデジタルなお金の研究を進めています。これは仮想通貨の技術を参考にしながら、国が管理するデジタルマネーです。日本でも「デジタル円」の研究が進められています。
また、仮想通貨の技術であるブロックチェーンは、お金以外の分野でも使われ始めています。たとえば、美術作品の所有権を証明したり、食品の産地を追跡したり、医療記録を安全に保管したりする仕組みに応用されています。
仮想通貨が将来、今の紙幣や硬貨に完全に取って代わるかどうかはわかりません。でも、インターネットが私たちの生活を大きく変えたように、仮想通貨やブロックチェーンの技術も、これから私たちのお金の使い方を変えていく可能性があります。
仮想通貨は、インターネット上でやり取りできる新しい形のお金です。ブロックチェーンという技術によって、銀行のような中心となる組織がなくても、安全にお金をやり取りすることができます。世界中どこへでも素早く安く送れる、24時間いつでも使える、銀行口座がなくても使えるといったメリットがある一方で、価格が大きく変動する、詐欺のリスクがある、まだ使えるお店が少ないといったデメリットもあります。
仮想通貨はまだ新しい技術なので、これから使う場合は、しっかりと勉強してから始めることが大切です。特に投資として考えるなら、失っても困らない金額だけで始めるべきです。そして、怪しい儲け話には絶対に乗らないこと、パスワードや秘密鍵は厳重に管理すること、信頼できる取引所やウォレットを使うことなど、基本的な安全対策を忘れてはいけません。
仮想通貨について学ぶことは、これからの時代のお金やテクノロジーについて理解を深めることにつながります。小学生のみなさんが大人になる頃には、仮想通貨やブロックチェーンの技術が、今よりもっと身近なものになっているかもしれません。新しい技術には可能性とリスクの両方があることを理解しながら、これからの世界の変化を見守っていきましょう。











