

金融資産、純金融資産、実物資産という資産に関する用語は、資産形成や投資、財務の理解において非常に重要な概念です。これらは似ているようで明確に異なる意味を持ち、その特徴や意味合いを正確に認識することは、資産管理や投資判断を行う際の基盤となります。この記事では、金融資産と純金融資産、実物資産の違いを具体的かつ体系的に解説し、それぞれの資産の特徴や管理方法、投資上の意義について解説します。
「金融資産」とは、現金や預貯金、株式、債券など、形のない資産のことを指します。これは「ペーパーアセット」とも呼ばれ、実体は持たず記録や権利として存在しています。金融資産は市場で価値が評価され、売買や換金が比較的容易であるという特徴があります。
代表的な金融資産には以下が含まれます。
現金および銀行預金
貯蓄性の生命保険(解約返戻金)
株式や債券
投資信託やREIT(不動産投資信託)
暗号資産(仮想通貨)
こうした金融資産は「価値を表す数字」として存在しており、流動性が高く、通常は証券取引所や銀行で現金化ができます。また、金融資産の大きな利点は、比較的小さな単位で売買ができ、資産を分散しやすい点にあります。一方で、市場の変動性により価値が大きく上下しうるリスクもあります。
一方で「実物資産」とは、物理的な形を持ち、それ自体に価値がある資産のことです。これは「現物資産」とも呼ばれ、所有すること自体が資産としての価値を持っています。
具体的には以下のようなものが実物資産に該当します。
不動産(土地、建物)
貴金属(例えば金、プラチナ、銀)
美術品や骨董品
車や高級時計
コレクターズアイテム
実物資産の最大の特徴は、それ自体に内在する価値があることです。たとえば土地は希少性が高いためインフレなどによる通貨価値の下落に強いとも言われています。さらに不動産は賃料収入というキャッシュフローを生むことも可能です。
しかし、実物資産は形があるため、流動性は低く(すぐに現金化しにくい)、保有にかかるコストも高いことが一般的です。不動産の管理費用や維持費、美術品の保険料や保管コストなどです。物理的な移動やメンテナンスも必要になる場合が多いことも特徴です。
両者の違いは次のように整理できます。

金融資産は短期間で現金化が可能で、手軽に値動きを反映できますが、実体がない分、価値がゼロになるリスクもあります。一方の実物資産は物理的な価値が存在し、インフレ対策として有効ですが、売買に時間や労力がかかりやすいという制約があります。
「純金融資産」とは、所有している金融資産から借入金などの負債を差し引いた純粋な金融資産のことを指します。つまり、
純金融資産=金融資産−負債純金融資産=金融資産−負債
で計算されます。
たとえば、以下のような負債が差し引かれます。
住宅ローン
カードローン
自動車ローン
その他、金融機関からの借入
金融資産を持っていても、同時に大きな借金がある場合は純金融資産が少ないか、場合によってはマイナスになることもあります。これにより、実質的に自由にできる金融資産の実態がわかります。
金融資産が必ずしもそのまま資産価値として手元に残るわけではなく、借入金などがあると使える自由資産は減るため、純金融資産が重要視されます。たとえば資産運用や生活設計を考える際には、純金融資産がプラスで安定していることが健全な財務状態の目安となります。
また純金融資産が多い人は、資産形成が進んでいる富裕層の指標ともされ、金融業界でも大きな注目を集めています。
資産は大まかに式で表すと
総資産=金融資産+実物資産総資産=金融資産+実物資産
となります。これに負債を足すと、
純資産=金融資産+実物資産−負債純資産=金融資産+実物資産−負債
となります。
したがって資産形成を進める際には、
どう金融資産を増やすか(投資、貯蓄、生命保険など)
どう実物資産を取得・管理するか(不動産購入、金や美術品などの保有)
そして負債を最適化・圧縮するか(ローン管理)が重要とされます。
例えば、以下のような資産保有の場合で考えます。
現金・預貯金:1000万円
株式・債券等:500万円
不動産(土地・建物):3,000万円
自動車:200万円
住宅ローン:2,000万円
この時、
金融資産=現金1000万円+株式債券500万円=1,500万円
実物資産=不動産3,000万円+自動車200万円=3,200万円
純金融資産=金融資産1,500万円ー住宅ローン2,000万円=ー500万円(負債超過)
純資産=金融資産+実物資産-負債=1,500万円+3,200万円-2,000万円=2,700万円
この例では純金融資産はマイナスですが、総資産から負債を差し引いた純資産はプラスとなっています。したがって、実物資産の価値が高い場合は、負債の存在が金融資産の面で不足をカバーしています。
資産配分は個人の経済状況やリスク許容度によって異なりますが、一般的には以下の点が重要視されます。
流動性を確保するために金融資産を適度に保有する
現金や預貯金、すぐ現金化しやすい株式などは短期的な資金ニーズや緊急時に重要。
長期的な資産価値の安定やインフレ対策に実物資産を組み込む
不動産や金などはインフレに強く、資産の価値を守る効果がある。
純金融資産がマイナスや不足していないかチェックする
負債の管理を適切に行わなければ資産形成の効果が薄れ、返済負担が生活を圧迫する。
「金融資産」とは現金や株式、債券など形のない資産で、流動性が高く売買や換金が容易な一方で、市場の変動により価値が上下する性質があります。「実物資産」は不動産や貴金属、美術品など目に見える形で存在し、インフレに強く価格の下落が比較的少ないものの、流動性は低く取引や管理に手間がかかります。
そして「純金融資産」は金融資産から借入金など負債を差し引いた額で、実質的な自由に使える金融資産の規模を示します。資産形成や資産管理の際にはこれらを区別し理解することで、自分の財産状況を正確に把握し、効率的な資産運用やリスク管理が可能になります。
将来的な資産設計や投資戦略を立てる際には、金融資産と実物資産のバランスを考え、負債管理もしっかり行うことが重要です。資産全体の健全性を保ちつつ、目的に応じて最適な資産配分を目指すことが成功の鍵と言えるでしょう。











