アニメ『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』が2023年6月18日放送の第十一話「繋いだ絆 彼は誰時 朝ぼらけ」で最終回を迎えました。竈門炭治郎は我妻善逸の言葉から雷の呼吸・壱ノ型・霹靂一閃を応用した技を繰り出します。炭治郎は水の呼吸を学び、日の呼吸を使えるようになり、雷の呼吸を応用するようになりました。優等生的な万能型です。
これに対して善逸は「一つのことしかできないならそれを極め抜け」というエキスパート型です。キャラクター人気では善逸が主人公を上回ります。「あれもこれも」の何でも屋よりも、「あれかこれか」の専門家に魅力を感じる世相を反映しています。
『鬼滅の刃』は無限列車編、遊郭編、刀鍛冶の里編と上限の鬼と対峙してきました。無限列車編では柱に守られる側であった炭治郎が遊郭編では柱と一緒に戦い、刀鍛冶の里編では柱の時透無一郎を教え、気絶した甘露寺蜜璃を守る側になりました。主人公が成長しています。
無限列車編の上弦の参・猗窩座や遊郭編の上弦の陸・妓夫太郎には絶望的な強さがありました。それに比べると刀鍛冶の里編の半天狗や上弦の伍・玉壺には小物感がありました。しかし、面的な攻撃力、大量殺傷能力は高いです。鬼舞辻無惨の目的が強力な軍隊を作ることならばもっと評価されたでしょう。
無惨が鬼になった経緯が明らかになります。世界征服のようなことは考えていません。『ジョジョの奇妙な冒険』の吉良吉影のように本当は静かに暮らしたいタイプでした。鬼殺隊は国家権力とは無関係の民間組織という点が警察不祥事など公務員組織の信頼が失墜した21世紀人の感覚を反映しますが、悪役側も天下国家の呪縛から解放されています。
炭治郎は禰豆子を守るか、上弦の肆・半天狗を倒すかの選択を迫られます。アニメでは炭治郎の葛藤を長く丁寧に描写しています。禰豆子は太陽を克服しましたが、自分を犠牲にしても人間を守るという行動が太陽克服になったということはないでしょうか。そうであるとするならば無惨はそのままでは太陽を克服できないでしょう。そもそも吸血鬼のように鬼の力は太陽への弱さとトレードオフとは考えないのでしょうか。鬼の力はそのままで太陽を克服することは虫の良い話です。
戦いが終わって炭治郎は刀鍛冶の里の人々から感謝されて送り出されます。これはアニメオリジナルのシーンです。原作では鬼に里の場所が露見したため、亡くなった人を悼む時間もなく、別の場所に移転することがクローズアップされました。アニメでは一旦話が終わるために大団円の要素を出したのでしょう。
これまでアバンに登場していた「双六大好き善逸の今日の一振り!」が最後に出ました。次の話の柱稽古編につながる落ちになっています。
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