ホテルチェーンのドーミーインは夜食の時間帯に宿泊客に夜鳴きそばをサービスします。私はドーミーインプレミアム和歌山とドーミーイン津で食べたことがあります。
ドーミーインの夜鳴きそばはハーフサイズの醤油ラーメンです。縮れ麺にメンマ、ネギ、海苔が乗っています。醤油ラーメンですが、あっさりしていて塩気は強くありません。大豆の旨味を引き出しています。
夜鳴きそばは江戸時代以降の夜間販売の屋台の蕎麦屋です。関東は蕎麦ですが、上方は夜鳴きうどんになります。織田作之助「世相」には「鈴の音が聴えるのはアイスクリーム屋だろうか夜泣きうどんだろうか」との表現があります。苦労人は過去に「夜泣きうどんの屋台車も引いた」と語ります。戦後は蕎麦やうどんから、チャルメラのラーメンのイメージが強くなりました。
「そば」がラーメンを意味することは「油そば」「まぜそば」と共通します。「そば」は本来、「日本そば」を意味し、ラーメンは「中華そば」と呼ばれていました。日本の蕎麦に対して中華風の蕎麦という位置づけです。ところが、今や「そば」がラーメンを指す言葉になりました。「そば」や「うどん」と比べると日本の麺料理としては歴史が浅いラーメンですが、それだけ日本の麺料理の代表格に成長したということでしょう。
夜中にラーメンが食べたくなることがあります。小説には「深夜に食べるラーメンは最高だ」との台詞があります(中西鼎『東京湾の向こうにある世界は、すべて造り物だと思う』新潮文庫、2019年、59頁)。『銀河英雄伝説』の二次小説の鉄鋼怪人「帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?」の第百五十五話のタイトルは「夜中に食べる拉麺は最高だぜっ!」です。
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