吉野家の常務取締役企画本部長は「生娘をシャブ漬け戦略」と発言して炎上しました。早稲田大学の社会人向け講座で2022年4月16日に若い女性をターゲットにしたマーケティング施策での発言です。酷い発言と炎上し、吉野家不買運動の声が出ています。Twitterには #吉野家不買 や #吉野家へはもう行きません というハッシュタグが登場しました。
自社の食べ物を依存性薬物にたとえることが信じられません。消費者に選ばれることが企業の存在価値です。それを自ら否定する発言です。薬物中毒者が依存性薬物を求めることは、消費者が企業を選ぶことと全く異なります。消費者の自己決定による選択ではなく、中毒者に求められても民間感覚では価値がありません。依存性薬物への拒否感はないのでしょうか。反社会的勢力のような発言であり、気持ち悪いものです。
吉野家常務は吉野家の牛丼を「男に高い飯を奢って貰えるようになれば、絶対に食べない」とも発言しました。自社の商品へのリスペクトがありません。飲食店の炎上と言えばバイトテロが話題になりますが、これは役員テロになります。どちらも自社の商品を粗末なものと考えている点で共通します。
この問題を報道したNHKは「地方から出てきたばかりの若い女性が薬物中毒になるような企画を考えてほしい」とマイルドな表現にしました(「吉野家常務“女性 薬物中毒なるような企画を”趣旨の発言 謝罪」NHK 2022年4月18日)。生娘を若い女性としたところは生娘という女性蔑視的表現が伝わらないという問題があります。一方でシャブ漬けを薬物中毒としたことは逆に発言の酷さが分かります。シャブ漬けという言葉にピンとくる人の方があまり普通ではなく、一般人が新たに怒りを抱く効果があります。
「生娘をシャブ漬け戦略」発言は大きく依存性薬物肯定と女性蔑視の二つの問題があります。後者の点でフェミニズムからの批判が出ます。フェミニズムの批判には逆に反発の声も大きいです。『月曜日のたわわ』広告への賛否が典型です。それはフェミニズムの唱える人権が他人の表現の自由を全否定し、他人に忖度させることを強要する傾向があるためです。
この点で「生娘をシャブ漬け戦略」による吉野家不買運動はフェミニズムとも同じ方向を向いた幸運な事例と言えるでしょう。田中芳樹『銀河英雄伝説』の短編「汚名」は麻薬の販売者を「どのような時代、どのような政治体制の下でも許されない所業をした」と評します。「生娘をシャブ漬け戦略」はフェミニズムなど特定のイデオロギーを支持する人にとっても支持しない人にとっても許されない発言をしたことになります。
吉野家は炎上が続いています。吉野家の『魁!!男塾』コラボキャンペーンも2022年3月に消費者軽視と炎上しました。オリジナル特典の条件を後から変更したことが問題です。条件後出し変更は消費者契約法の精神に反します。不利益となる事実を告げなかったという問題です。
吉野家お客様相談室の喧嘩腰の回答が火に油を注ぎました。「訴訟をされるとのことでしたら、弊社弁護士が真摯に対応させていただきます」と書いてあります。「生娘をシャブ漬け戦略」発言の吉野家常務は男性客にも「家に居場所のない人が何度も来店する」という趣旨の発言をしています。男塾コラボ当選者への失礼な態度も、客をそのような目で見ていたためでしょう。