新型コロナウイルス(COVID-19; coronavirus disease 2019)の衝撃的な症状の一つは味覚や嗅覚がなくなることです。「ラーメンの味が薄い」と感じたことから、新型コロナウイルス感染が判明したケースがあります(「「ラーメンの味が薄い」で発覚 神奈川の20代男性感染」朝日新聞2020年4月2日)。吉本興業所属お笑いタレント森三中の黒沢かずこさんも味覚や嗅覚の異常が感染発覚の端緒となりました(「お笑いタレント「森三中」の黒沢かずこさん 新型コロナ感染」NHK 2020年4月4日)。普段漫然と食事していた人も、味を確認しながら食べるようになっているのではないでしょうか。
Stay at Homeでおうち時間、おうちごはんを楽しんでいますが、チェーン店の味が無性に恋しくなることがあります。チェーン店はシステマティックであり、同規模の店舗を比べるとSocial Distanceが保たれやすく、外出時の選択肢になります。
ステレオタイプな感覚はチェーン店を「おいしくない」と言うでしょう。「安くて便利だから仕方なく使うだけ」「時間も金もないからこんなところで飯を食べている」などネガティブに捉えるでしょう。しかし、それは勿体ないことです。稲田俊輔『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』(扶桑社新書、2019年)は、チェーン店は宝の山と主張します。
何もチェーン店のメニューの全てが優れていると主張するつもりはありません。逆に選択肢があること、選択肢が多いことがチェーン店の魅力です。逆に個人経営の店舗に慣れた消費者の方が出されたものをそのまま食べる受動的な感覚になっているのではないでしょうか。それをありがたがってグルメ意識を持っているならば滑稽です。
美味しさは値段で決まりません。値段と味や品質は比例しません。高かろうが安かろうが、チェーン店だろうが何だろうが、自分が気に入ったものを選択します。それが家計簿にも良いことです。
チェーン店の利点としてサービスの公平性があります。誰に対しても同じサービスという機械的平等に心地良さを感じます。顔見知りの常連客に特別な気配りをすることは、別の誰かにマイナスのサービスをして成り立っている可能性があります。東京03のコント「常連客」は常連客へのサービスが、他の客には不公正になることを笑いにしました。
常連客へのサービスは、常連ではない一般消費者には不公正感を与えます。大口顧客への割引のようにルールが明確化されており、万人に開かれていれば、不公正感は少ないでしょう。しかし、昭和の村社会的な贔屓になると、透明性がなく、不公正感が高まります。サービスを受ける側ではなく、受けない側がどう思うかの視点も必要です。それは消費者を相手にする経営者にとっても有益な視点です。