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4.Story2/メイドイン福井小浜 株式会社イシダ 一双のストーリー  『箸は主役じゃないけれど』

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  • ippeichan
  • 2019/03/10 01:49
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箸は二本で一膳、となる。

人も二人で一組の夫婦となる。

箸はよく、結婚祝いをはじめとした、贈り物に用いられてきた。
縁起がいいからだ。

夫婦のたとえを引けば、当然結婚祝いである。
ほかにも、縁起のいいことが想起できる。

食べ物と箸は切っても切れない縁がある。
なので、「食いっぱぐれがない」というので就職祝いなど、門出に。

箸は断面は円であるが、先に行くにしたがって細くなるため、
食卓を転がってもくるりと扇形に回ることから、
「落ちない」ということで合格祈願にも。

もちろん、箸で食べものをつまみ上げることから、
「幸福をつまみ上げる」、「人をつまみ上げる」ということで昇進祝い。

あげればキリがないのだが、
我々日本人、つまり「箸の国の人」の日常に欠かせない箸は、
日々の幸せの象徴なのだと思う。

塗箸「一双」は福井県小浜市を拠点とする塗箸メーカー、株式会社イシダが発信するブランドである。
400年の歴史を持つ若狭塗をベースに、塗箸を製造するトップメーカーである。
単に大量生産した「工業品」ではなく、
きちんと手作りでやるべきところは手作りに徹し、高い品質の箸を供給し続けている。
この「一双」を薦めてくれたのが、「お箸コーディネーター」である。
この「お箸コーディネーター」とは塗箸の卸を営む有限会社まつや工芸の松井氏である。

ひとことに箸、といっても、塗箸となると「ちょっと高い」、いや「かなり高い」ものである。
それは、素材の違いや塗加工という手仕事によるもののため、大量生産ができるものではないから、
というのは容易にわかる。
箸を「食べるときに使う」だけの機能のものとしか見ないのであれば、高いものかもしれない。
しかし、松井氏から話を聞けば聞くほど、塗箸の奥深さがわかるのである。

どんな塗箸も最初は木である。
同じ材質の木材でも、個体差はある。
強く品質のよい原木とはいえ、加工してもまっすぐなままなら製品になるが、
それでも熱を加えると曲がったり、圧を加えると折れたりするものも出てくる。
塗加工の前にきちんと製品化に値する材料を見極め、その検査をくぐり抜けながらも加工後に曲がってしまうものだってある。
それも製品としては排除され、食卓を彩るまでには加工以外のいろいろな工程を経るのである。

当然、一本一本手仕事で塗加工が施されており、
機能面での品質は高いものだが、塗加工において「塗箸」の美しさに値しないものもやはり排除されていく。
この厳しい目は、まさに「塗の国、若狭」の矜持なのである。
そしてさらに、縁起物として贈り物になって、
そうでなくても日用品として使う人の手元にやってくる。
その美しさは食卓を彩りながら、使う人の個性や好みまで表現していたりするのだ。
男らしい太くて黒くて角ばった箸、
繊細な模様に彩られた細くてしなやかな箸。
いつの間にか自分の一部となっていて、
食卓にいつもの箸が出ていなければ、ちょっとした違和感まで感じてしまったことはないだろうか。

箸はただの道具ではない。
自分と食べ物をつなぐ「橋」でもある。
自分の個性を手の先、つまり「端」で表現する。

生きるための食も、自分の個性も、とても大事だ。
だから箸も大事に使いたい。

松井氏は言う。
「箸はデザインだって、太さだって、長さだって、すべて「自分の好み」なので、
 これがベスト、というものはない。
 個人的に好きなデザインとか太さ、とかあるけれど、
 それが誰にとっても同じもの、ではない。
 だからびっくりするほどいろんな種類の箸があって、
 いろんな柄や模様があって、
 箸を使うすべての人が自分の箸、
 として満足してもらえるようになっているんだ」

と。

だから、
「箸は大事に扱ってほしい。縁起物で手作りで、さらに高いから、
 という意味じゃない。
 自分だけの、自分の大切な一部として。
 塗の箸は表面の塗加工によって耐久性はあるけれども、
 キズは当然つくもの。
 キズが重なるとせっかくのキレイな模様もくすんでしまうし、
 そのキズから水が入って中の木を傷めてしまうこともある。
 だから、洗い物をするときはスポンジではなく、
 手で優しく洗ってほしい」
と続ける。

日々、箸に触れて無数の色、模様、形を見ている松井氏の「箸そのもの」への理解の深さと、
箸を使う人の気持ち、箸を贈られる人の喜び、箸を選び贈る人の想いまでにも思いを馳せる、
箸を使う「人」への愛情の深さに感動すら覚える。

食卓は単に「カロリーを摂取するところ」ではない。
人が集い、語らい、笑い、そして供された食事に舌鼓を打ち、さらに語らい、笑う。
「食事を楽しむこと」が主役である。

箸はそこでは美しい塗加工が施されたものだとしても、
決してでしゃばるなることなく、
その主役を引き立たせる控えめで奥ゆかしき媒介者となる。

たしかに箸は主役ではないかもしれない。
でも、欠かせない。
もちろん、「端」役じゃなく、
食卓という舞台にいなくてはならない、
本当に腕のいい名脇役なのである。

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■福井県と塗箸

 「福井県といえば?」と聞かれて、
 どれくらいの人が「お箸!」と答えることができるだろうか。
 昨今では、恐竜が一番にくるかもしれない。
 もちろん、眼鏡、という答えも返ってくるだろう。
 そこで、「若狭の塗箸」を知ってもらいたい。
 福井県西部、絶景に彩られた若狭の国、小浜(おばま)市が誇る産業、
 それが塗箸である。
 なんと、全国の塗箸製造の8割を占めている。 
 つまり、5人家族の食卓を彩る塗り箸の5膳のうち、
 4膳が「若狭製の塗箸」と言っていい、ということだ。

 江戸時代初期、時の藩主酒井忠勝公により『若狭塗』と命名された
 高度な塗製品がルーツである。
 若狭塗自体は高級調度品に用いられる高度な技術を要するものであった。
 しかし、時代が進むにつれ、生産能力が上がるに伴い、日用品の製造にも広がり、
 とくに若狭塗箸製造が盛んとなり、今に至るのである。

   参考:若狭おばま観光協会HP 名産品ページより
   https://www.wakasa-obama.jp/Gift/giftDetail.php?id=13


■自分にあった箸の見つけ方

 自分の手の長さ+3センチが自分にあった箸(はし)の長さといわれています。
 手の平の根元から指先までの長さをAとすると
 Aプラス3センチが理想の箸(はし)の長さと言われています。

  参考:大阪教育大学 Laboratory of Food ScienceHPより
  http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~ioku/foodsite/hashi/


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公開日:2019/03/10
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