『企業分析における3つの視点』で書き忘れたことがある。
『企業における各事業の位置づけを捉える』と言ったとき、事業と事業の間にある結びつきにも意を払うことが大切である。A事業の損益だけを見れば赤字かもしれないが、稼ぎ頭であるB事業の競争優位を実はA事業の技術が支えているといった場合も少なくない。A事業の不採算が続くからと言って、「これはもうやめるべきだな」と鼻息荒く結論づけるのはあまりに早計である。
精密セクターの企業を例に挙げるなら、オリンパスがカメラをやめない理由もそこにある。消化器内視鏡で世界シェア7割を誇るのは、カメラで培った要素技術をグループ内に蓄積してきたからだ。体内に巣食う腫瘍を発見するためには、撮像素子、光学レンズ、ソフトウェアが織りなす高度な映像技術が必要となる。カメラ事業にロイヤリティを感じる技術者が社内にとどまるからこそ、競合他社に勝る内視鏡の新製品を継続的に投入できるのだろう。
とはいうものの、デジカメ市場が急速に縮小する中で、オリンパスのカメラ事業もその位置づけを再考すべきではないかと個人的には思ってしまう。一般消費者への販売からは撤退し、内視鏡の製品競争力を支える技術部隊へと様相を変えることはできないのだろうか。
いずれにしても、企業が手がける複数の事業を分析する際には、企業における各事業の位置づけのみならず、事業間の連関性もあわせて意識するとよいだろう。