企業分析における3つの視点のうち、1つ目は『市場の成長性を見極めること』であると話した。2つ目は『業界内でのポジションを評価すること』だ。
端的に言えば、シェアが高いのか、低いのかという話である。その業界で独占的な地位を築いているほうが当然ながら良い。いわゆる泡沫的なポジションでは心許ないだろう。
業界内でのポジションを評価するとき、「A社はB業界で世界シェアトップです」だけではあまりに平板すぎる。なぜ世界シェアでトップなのか、その理由を考えることで分析に厚みが増す。しかも、そのほうが面白いだろう。
デジタル一眼レフカメラの業界はキヤノンがシェア4割超でトップ、二位がニコン、三位がソニーである。この3社で市場シェアの大半を占めるとみて間違いない。特にキヤノンとニコンの上位2社が抜きん出ている。いわゆる寡占市場である。
キヤノンがなぜ強いのか。「歴史が長いから」。そうかもしれない。光学技術の蓄積が競争優位の一因とは言えそうだ。一眼レフの場合には、形状の異なる何枚ものレンズが繊細に緻密に組み合わされて一つの像を結んでいる。レンズを形づくる研磨技術やレンズを重ねる設計技術などには高度なスキルとノウハウが求められるのだろう。また、過去のレンズ資産も強みと考えられる。カメラを長く愛用する人であればあるほど、これまで集めてきたレンズがスイッチングコストとして意識されるだろう。
これらの強みはニコンにも当てはまる。にもかかわらず、16年連続でキヤノンにわずかの差でトップの座を譲っている理由はどこにあるのか。コスト競争力なのか、マーケティング力なのか、あるいはその両方なのか。
とはいえ、デジタル一眼レフの市場自体が縮小傾向にあるのだから、いくら寡占度が大きいからといっても魅力的とは残念ながら評価できない。市場の成長性と業界内でのポジションの掛け算で常に考えるべきである。
業界内でのポジションというとき、そもそも敵のいない無双状態になることが最高だろう。戦略とは意訳すれば戦いを省くことである。これまで取り上げた中でいえば、まさにキーエンスなどは無双状態に近いのかもしれない。オムロンや三菱電機などFA機器メーカーとは明らかに佇まいを異にする。だからこそ、営業利益率54%、社員の平均年収2,000万円なのだろう。
3つ目の視点はまた別の機会にしよう。
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