筋肥大を目指す者にとって、最も重要なルールのひとつが「オーバーロード(過負荷)の原理」である。例えば、ダンベルプレスで大胸筋を鍛える場合、15回も20回も楽々と持ち上げられる重量を扱うのではなく、8回くらいで限界を迎えるようなきつい負荷を与える方が効果は大きい(もっとも、最近の筋トレ業界では軽い負荷で多くの回数を持ち上げても筋肥大の効果が見込めるとの説もあるらしい)。
しかし、原理に則ったトレーニングよりもさらに大切なのは、三大栄養素の継続的な摂取、なかでも筋肉の主成分となるタンパク質を積極的に摂ることだ。筋肉量を増やしたいのなら、1日当たり100g以上(納豆14パック分)のタンパク質を摂り入れたい。だが、これだけの量のタンパク質を普段の食事だけで摂取するのはかなり難しいだろう。そこで、わたしの場合、DNSの『プロテインホエイ100』(容量3kg/価格1万4,000円。カフェオレ味がお気に入り)を補助的に愛飲している。ひとえにコストパフォーマンスが日本製のプロテインの中では最も良いからだ。ただ、プロテインの追加的な摂取が筋肥大にどのくらいの効果をもたらしているのか疑問を感じないでもないが、飲まないよりは飲んだ方がきっと良いに違いないと自分に言い聞かせてプロテインシェーカーを毎日振り続けている。
さて、ようやく本題だが、ファーマフーズは京都に本社を置く機能性食品の素材メーカーである。代表的な製品が『GABA(ギャバ)』。決して英会話スクールではない。体内にも存在するアミノ酸の一種で、ストレス低減や疲労感軽減、血圧改善や睡眠の質的向上などに効果があるとされる成分だ。ファーマフーズのGABAを使用した商品としては、それこそグリコのチョコ『GABA』が有名であろう。そのほか、即席麺やロースハム、飲料やサプリメントなど、全部で253品にGABAを提供する、この成分においてはトップシェアのメーカーだ。また、食品や飲料のメーカーを主要顧客とするB to B事業だけではなく、 GABA以外の機能性食品素材を使ってサプリメントや化粧品を通販する B to C事業も手がけている。中長期的には創薬事業も収益の柱に育てたい考えだ。
2019年7月期の業績は売上高105億円(前期比+33%)、営業利益5.8億円(同+94%)。創業から22年を数える同社だが、売上成長のペースが加速したのは2016年7月期と決して古くない。「創業から15年くらいは売上10億円前後が続いていた。ところが、B to B事業にB to C事業が加わり、取引先の顔ぶれも増えて成長に弾みがつき、気がついたら売上100億円を簡単に達成できる会社に成長していた」。在日韓国人である金社長の言葉には創業者としての感慨が強くにじむ。決算説明会で社長は話しながら泣き出すのではないかとこちらが心配するほどだ。
ただ、急成長の原動力を同社の自助努力のみに求めることはできない。むしろ、外部環境の追い風が売上水準を一気に押し上げた。その風の正体は、2015年に始まった『機能性表示食品制度』である。「おなかの調子をととのえます」、「脂肪の吸収をおだやかにします」など、食品の機能性(効き目)を表示できるのは、それまで「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」のみであった。トクホは有効性を立証するのに多額の費用がかかるし、栄養機能食品は効き目を表示できる成分に制約がある。そこで、内閣府の規制改革会議などの議論を経て、事業者の責任で科学的根拠に基づいた食品の効き目を表示できる機能性表示食品が新たに追加されることになったらしい。規制緩和のおかげで気軽に手軽に効き目を表記できるようになり、機能性表示食品と書かれた商品がトクホを上回る勢いで発売され、機能性素材メーカーであるファーマフォーズがその恩恵を最大に享受しているというわけだ。
このことは、業種こそ異なるものの、液晶パネル市場の急速な拡大に伴って、機能性フィルムを製造する富士フィルムや日東電工、大日本印刷や凸版印刷などの材料メーカーが揃って売上を大きく伸ばした現象と似ている。ただ、液晶に使われる機能性フィルムの場合、代替する材料が登場したり、そもそもフィルムが使われなくなったりして、材料メーカー間での優勝劣敗が鮮明化する事態がその後に待っていた。
科学的根拠に基づくとはいえ、効き目が今ひとつ実感しづらいと感じるだけに、機能性表示食品に関しても市場成長の持続性や代替材料との競合などに注意を払う必要があると感じた。とはいえ、今は同社に有利な風が吹いている。
さて、プロテインとGABAを一緒に摂取すると、プロテイン単体よりも筋肉量が大幅に増加するとの研究論文が発表されたそうだ。早速に試してみよう。