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タクシー運転手が体験した、ブラック企業の片鱗。

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  • 與那城(よなしろ)【タクシーエピソードコレクター】
  • 2019/06/04 12:59
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これは、ブラック企業の存在を感じたことがないあなたに贈る記事である。

ブラック企業

この言葉は誰もが聞いたことあるはずだ。

しかし、
本当にそのような存在があるのか知らない人もなかにはいる。
私が実際そうだった。

普通の会社に勤めたことがなく、今現在もタクシー会社に勤めている私は
所謂、世間一般の方が所属していたり認識している会社組織というものを知らない。

ブラック企業という言葉や、ある程度の定義しか知らないのだ。

長時間労働や、過重労働による自殺、ある程度のニュースは耳に入ってくるが本当の実態というのはその場に居なければ掴めない。

この記事はそんなブラック企業というものをよく分かっていないあなただけに読んでもらいたい。

タクシー運転手として勤務する私が実際に見た、
ブラック企業の片鱗をお届けする。

まず、ブラック企業の定義とは何なのか。

新興産業において若者を大量に採用し、過重労働・違法労働・パワハラによって使いつぶし、次々と離職に追い込む成長大企業
または、
従業員の人権を踏みにじるような全ての行為を認識しつつも適切な対応をせずに放置している企業

とWikipediaでは書いている。

(ウィキペディア情報で申し訳ない!)

この定義の中で、私が実際に体験したブラックな部分は

・・・パワハラだ。

 

なんてこともない平日の夜、時刻は20時半ごろを回っていた。
オフィス街にはヒト気がなくなり、飲み屋街が盛り上がっている。

早めに帰るか、二次会に向かう様相の人たちでぽつぽつと人通りがあり
遠くに帰る人がいればと、それを狙って街を彷徨っていた。

すると、スーツを着た四人の集団がタクシーを求めて手を挙げた。

近づくと、
その集団は40代前半~後半らしき男3名と20代後半の男一人。

ほろ酔いで盛り上がった四人のお陰で、車内はお酒の匂いとスーツについたタバコの臭いで埋め尽くされる。

「運転手さん、新橋の方!」

2次会へと向かう様子だ。
新橋へ向かう道中、運転手の私も交えて楽しく話している風だった。
話している風。

内容は、20代後半の後輩の仕事に関すること。

一見、責めてる様子はなくイジリのように繰り出す40代の三人の言葉に、
助手席にいた後輩はめんどくさそうに、しかし声だけは元気に返事をしていた。

これは隣に座る運転手だから気づける、些細な雰囲気だ。。。

その雰囲気とは対照的に、40代の三人は後輩をイジる。
いや、イジるというより、普段は言えない不満を
お酒に任せてイジりと変え部下を貶していた。

イジっているという事実と口実をつくりながら、
部下への攻撃をしていたのだ。

タクシーに乗っていればその空気も伝わってくる。
三人が三人、形を変えて貶す。

一人は直接「使えねーんだよ!」と直接言葉をぶつける。
一人はその言葉に便乗し、言葉を掛けるのではなく別の話を繰り出して
「あれもおかしいですよね!」と共感を楽しむ。
一人はただ、冷静に説教をする。

お酒の入ったその三人は、次第にエスカレートしていった。。。

直接的に声を掛ける男は車内がスピーカーに感じるほど声を荒げだした。
そして、目の前にいる助手席の後輩の肩を掴み、揺する。
前のめりになり揺すりながら後輩の耳元で言葉を発する。
「お前さー、ホント大丈夫?」
便乗する男は、それを楽しんでいる。
もう一人は依然として合間に説教を続ける。
「あれはな、お前が~」

車内はカオスの状態。。

後輩の肩をゆするその手は、次第に肩を叩きはじめた。

ポンポン、ポンポンポン、ポンポン・・パン!

音が大きくなっていく。

便乗する笑い声も響き。

説教も続く。

助手席の後輩は、
「痛いっすよ~」とノリのまま続ける。

後ろの三人はノリで受け取るのを良いことに
その域を越えて後輩を責める。

パンパンと叩く手は肩から頭に変わっていく。

バンバンバンバン!

叩く男「頼むよー木下君」

後輩「すみません、すみません、ちょっと痛いっす」

便乗男「はっはっはっは」

説教男「いやだからさー、あれもね・・」

叩く音と笑い声と説教、
それにお酒とタバコの匂いが交錯し
カオスを越えた筆舌尽くしがたい空気が最高潮に達したところで

目的地へ着いた。

「木下~支払いたのむな~」

支払いを後輩に任せ、ただお酒で盛り上がっているかの如く
三人は飲み屋街へと入っていく。

私は、助手席の後輩とお会計をしながら会話をする。

私「大変ですね~」

後輩「うちホント、ブラックですよ~」

私「えっそうなんですか」

後輩「えぇ、あいつらマジでぶっ殺したい」

私「はっはっは」

後輩「ブラックで働くのはマジで止めたほうがいいですよ」

私「確かに、そうですね」

後輩「タクシーはどうですか」

私「自由だしいいですよ」

後輩「へー、いいなぁ、運転手さんは結構お若いですよね?」

私「僕は25です」

後輩「え!?年下じゃん」

私「あ、そうですか!」

後輩「ちょっと~励ましてよ~」

私「せんぱい!頑張ってください!!」

後輩「おう、頑張るよ!」

扉、バタン。。。

これが、私が体験した話である。

ブラックかブラックで無いかはこれだけでは判断しかねると私は思う。
それは、その四人のここまでに至る出来事や背景、性格を全て把握している訳ではないから。

この後輩がもしかしたら、ただ生意気なのかもしれない。
後輩が仕事で、何度言われても同じ失敗をしているのかもしれない。
弱い立場の人間を責めるのが好きな上司なのかもしれない。
本当にブラックなのかもしれない。

事の真理はあの四人、そしてその四人がいる会社でしか分からない。

しかし、タクシーの車内では

イジリを超えた何かが、人を責めたい何かが存在していた。
立場や受け取り手によってはパワハラにもノリにもなる。
そんな出来事だった。

私は、ブラック企業を知らない。
そのような場所に居たことはないし、体験したこともない。
だが、現実に様々な問題が起きているのは確か。

もっと苦しい思いをしている人もいるかもしれないし、
責める側は押し付けているわけではないのかもしれない。
社会の現実を垣間見たひと時だった。

ただ一つ、私がこの体験をして一番思うのは
「この職場はブラックだ!」
「あいつらぶっ殺してぇ!」
と、感じているのにも関わらず
なぜ、未だその会社に勤めているのか。。。

お金が必要だから、、、
生活が出来なくなるから、、、
という思いが
辞めるという選択を取れない。。。

これも社会の大半が思う現実なのだろうか。
タクシー運転手は何気ない出来事に社会を見る。

今日も安全運転で行こう。

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