こんにちは。
㈱REGATEの金城です。
本日のコラムテーマは不動産の価値~道は非常に重要です~です。
今回の記事は直近で売買契約をした不動産について「接道」が一番の焦点になったので、ケーススタディとして書こうと思います。
「AI」や「5G」など新しいテクノロジーが出てきてどんどん便利になっていく時代ですが、不動産業務は地道な足を使う調査が必要不可欠です。
今後の不動産屋の売りは
「調査能力」=「見落とさない技術」
が必要最低限の技術だと考えているので、どんなに便利な世の中になろうとも地道にしっかりと調査をすることが重要だと肝に銘じています。
今回の記事は「ある程度不動産の知識がある人」に向けての内容なので敢えて噛み砕いて説明することは行いませんのであしからず。
沖縄県内では那覇広域都市計画区域、中部広域都市計画区域、名護都市計画区域、本部都市計画区域、南城都市計画区域、宮古都市計画区域、石垣都市計画区域があります。
それぞれの都市計画区域の中で様々な規制があり、人口や就労者数などを勘案し一体の都市として整備、開発、保全する目的で制定されています。
沖縄県の都市計画区域の概要は下記を参考にご自身で調べてください。
基本的には都市計画区域内では幅員が4m以上の道路に対して、2m以上の接道が無いと建物の建築が許可されません。
いわゆる「接道義務」というものですね。
この接道義務は消防車や救急車が緊急時に通れるようにという人命救助の際の安全性を考慮して定められているらしいです。
極端な例ですが、道もない山奥の住宅でおじいちゃんが倒れた場合と、街中の住宅で倒れてしまった場合。消防署から自宅までの距離は同じものとして考えてください。
これをイメージするとどちらが早く救急車や消防車が到着するかは容易にわかりますよね。
この接道義務などの詳細に関してはググればいくらでも出てきますので、この説明はこれくらいにしておきます。
この記事を書こうと思った最大の要点がこのテーマ「道だけど道じゃない?」です。
なぞなぞや禅問答みたいな内容ですがそうではありません。(笑)
今回売却をした物件の接する道の状態は
・市街化区域内の第一種低層住居専用地域
・この道に接道している建物が5棟ある(どれも築30年程度)
・舗装されたアスファルト敷き
・直線の整備された道で側溝もある
・水道管なども完備されている
・道路幅員は6mで敷地に12m接している
とまあ、一見してみると何の変哲もない「道」だったわけです。
・・・が、この道を行政などの関係各所にて調査してみると
「建築基準法の道ではない」
「接道義務を果たしていない」
という事が判明しました。。。
都市計画区域内の建築基準法の道路として認定されていない道路(無道路)なので建物の建築が不可。。。これはかなり大きなマイナスです、、、
何度かコラムで取り上げましたが不動産の価値は「建物を建てられる」ことで価値が上がります。
市街化調整区域では「建築が可能」というだけで評価額は二倍以上になるケースもあるくらいです。お向かいの土地は坪単価20万だけどここは坪単価1万円とかいうケースもあります。
今回の土地は「市街化区域内」で周辺も住宅が立ち並ぶ一見すると何の変哲もない土地。
恐らく不動産の調査に不慣れな人や惰性で調査を行う人だと完全に見落としてしまったと思います。
たまに首里などの古い街並みが残っているエリアでは
「建築基準法の道路」ですが車が入らないくらい狭く、二項道路のセットバックで解消できるというケースを見受けます。
そういう道路の調査の時は見た目ですぐに「道が問題になりそう」と道の狭さなどを考慮しながら調査を行うんです。。。
ところが今回は幅員も状況も何もかも変哲のない道。
しかも位置指定道路のように行き止まりとかではなく通り抜けもできるし、車のすれ違いも容易にできる幅員もある。
旗竿地などのように私道による接道の確保をしている土地でもない。というか角地で二面道路だし。。。
道の奥には築の浅いアパートもあるし、物件の目の前にも築浅の住宅が建っています。・・・不思議です。
こうなるとなぜそういう「道ではない道」できてしまったのかを調査しないといけません。
査定の結果報告の際に
私「道ではないので価値が下がります」
売主「はいそうですか。わかりました」
という物分かりのいい売主さんはこの世に存在しません。
なぜこの状態になったのか?具体的な調査を行って
「売主にも購入する方にもご納得いただく」ように説明することが私たち業者の使命です。
という事で最終的には沖縄県庁の担当者まで巻き込む大掛かりな調査になってしまいました。
まず、今回のような道の状況や認定に対して役所などの関係各所に調査を行う上で気を付ける点があります。
「この道は基準法の道路ですか?建物は建てられますか?」
と尋ねると
「いいえ、違いますね。建物の建築は認められません」
という答えが返ってきます。
役所の方々は“聞かれたことにだけ”正確に答えるという習性があるので質問の仕方によって引き出せる回答が変わるんです(笑)
という事を踏まえたうえで
「この道、基準法の道路ではないんですがなぜこの一帯は建物が建てられているんですか?」
「基準法上の道路でないならなぜ建築許可が下りたんですか?」
「過去に沖縄県として建築許可を出しているのに今から建築できないっておかしいですよね?なぜ今は建てられないんでしょうか?」
「この周辺の住宅全てが違法建築という事ですか?全て既存不適格建物という認識であなたは判断するんですね?周辺住民の方みんなに資産価値が下がることを説明できますか?」※これは少し意地悪な質問でした・・・
このように役所の担当者には細かく「なぜ?」を突き付けないと逃げられてしまいます。
彼らの聞かれたことにだけ答えるという性質をしっかりと把握した上で質問しないと答えは導き出せません。
そのためには現地周辺の状況や写真、地図、建築概要書の確認など事前に準備をするものが増えますが、不動産の売買に関する調査をする上では至極当たり前の作業ですし、事前にこちらである程度の知識が無いと役所の方と渡り合うこともできません。
結論として今回の「道ではない道」が生まれてしまった要因は
「開発漏れ」というものらしいです。
一帯の宅地分譲の時に「市町村」「県」「建築屋」「設計士」などがどのような開発を行うかという事を事前に協議を行って、
「開発の許可」を得た後に着工したはずなんですが開発した道路を「建築基準法の道路として認定」することを失念していたとのこと・・・
30年前の当事者のミスで起きてしまったらしいですが、県や市町村が許可を出した事実があるので
「当該地域に今後建築をする時には建築許可を出す」
という結論をもらえました。
建築基準法の道路として認定してくれればいいのに。。。と思いましたが、その手続きも困難だということらしいです。行政の仕事はよくわかりませんが、そういうもんだと諦めるしかないですね。。。
役所から「建築の承諾」を得られたので一安心とはいきません。
彼らの習性よりも少し困った習性の生物が存在します。
そう。銀行です。
我々不動産屋は今回の物件の道の状況を重要事項説明書に記載して、買主様にしっかりとご納得をいただけるように説明する義務があります。
買主様がご納得していざ売買契約&融資申し込みとなったのですが
「保証会社の否認」が発生。。。
物件は立地もよく建物の状態も良好なため多くの方が気に入ってくれたのですが、
銀行の担当者レベルではOKとなっていても「保証会社」が否認してくるんです。
銀行の審査は基本的に書類による審査を重視しており、人的な問題はないけど、物件に問題があると判断されてしまったんですね。
一度否認が出たらそれを覆すのはかなり骨の折れる作業です・・・
この仕事をしていると融通の利かない役所の人間も嫌いですが銀行の審査部の人間の事も嫌いになってしまいますw
彼らの困った習性は融通が効きにくいという頑固親父ばりの頭の硬さを持ち合わせている人物が紛れているということwww
※全部が全部とは言いませんが、融通が効かない担当者に当たったらハズレですね。
しつこく連絡を取り合い、銀行の融資担当者と審査部の関係者も巻き込んで、県の担当者の直筆の書面と県知事のハンコまでもらってきて「道路に問題が無い」という事を説明してようやく今回の成約に至りました。。。。
通常の売買取引よりも数倍のエネルギーを使いましたよ、ええ・・・
毎度言いますがどれだけ手間がかかっても仲介手数料は増えません。
お客様の笑顔が何よりの報酬です・・・ええ・・・
今回は調査の段階で問題点が浮き彫りになりましたし、関係各所の調整も整ったため上手くいったというケースです。
売却をお任せする業者によっては「道ではない道」という点を見落としてしまったと思います。
自分の判断を信じないで常に毎回確認するという事を当たり前にすれば問題ないんですが、どうしても県への確認が面倒だとスルーしてしまう人っているんです。
そうなると売買契約後に「問題がある土地を買わされた」となってしまい、売主さんも巻き込んで大きな問題になっていたことは想像に難くありません。
また、業者さんによっては
「問題がある土地なので評価を下げて売らないといけません」
という風に問題を解決するのではなく売主様に価格を下げてもらうことだけで解決をしようとするでしょう。
もちろん私も見落としをすることもありますし、引き渡し後に問題が発覚したことも多々あります。
でもその経験のおかげで「自分を信じない」ようになりました(笑)
今回のケースは稀なケースですが不動産を売却するときは業者によって価値が大きく変わってきます。
不動産は担当する営業マンによって高くも売れるし、安くもなるし、売れないと言われたりもします。
同じ物件を売るにしても営業の手法や売る努力によって大きく左右されます。
しかも会社の大きさや宅建番号の多さではいい業者かどうかの判断はできません。
残念ながら役所や銀行の担当者よりも高確率で悪い担当にあたってしまうのも不動産屋の特徴です。愛嬌だと思って許してください。え?許せない?・・・ですよね。では担当を変えてもらうか、不動産会社を変えてください。
使えない担当はどんだけクレームしても改善しませんからwww
最後になりますが一つ一つの不動産をしっかりと査定&調査することの重要さが伝わればいいなと思います。
これからもお客様の不動産の価値を適正に評価していく業者の代表として業務に邁進します!
では~
HPでは不動産に関することとか沖縄の不動産あるあるについてのコラムを公開しています!
ご興味がある方はそちらもお読みください♪
沖縄不動産事情など→REGATEコラム
不動産仲介奮闘記→REGATEコラム