コインチェックがNEMを流出させた、いわゆるコインチェック事件。
この事件についていくつかの弁護団がコインチェック社を提訴したことはみなさんご存じかと思います。
ツイッターでこんな声を耳にしました。
*埋め込みができるかわからないので引用。
「着手金2万円は良いとして、経済的利益の10%という金額はバルクで考えると凄い金額になるな。弁護士としてはかなり美味しい案件に見える。」
引用元
https://mobile.twitter.com/somonsism/status/961092249068109824
え、コインチェック弁護団って儲かるの???
お金よりも好奇心とか名声とかそっちの事件類型じゃないかしら?
ほんとうに…儲かる…?
疑問に思ったので、分析してみることにします。
<検討項目>
1 弁護士が通常期待したい報酬水準と弁護団の報酬基準
2 弁護団運営にかかるコスト
3 提訴する際にかかるコスト
4 勝率
5 26万人の被害者?
そもそも弁護士はそんなに儲かりません。
一番大きな理由としては、自分でできる仕事の量に限界があるからです。
仕事があればあるほど儲かるのではなく、できる範囲でしか仕事が受けられません。職人のようなものです。
そのため、ある程度の単価を得られる仕事でないならば、何か特別な理由がない限り受けることはしません。
そうでなければ事務所がつぶれてしまうからです。
弁護士としては、事務所がつぶれないだけの単価の仕事を受けなければなりません。このことを踏まえて、誤解を恐れずにわかりやすいイメージを伝えると、 1つの仕事でトータル60万円くらいは受け取らないとやってられません。
だいたい1つの仕事は1年くらいで終わることを想定しています。
また、時間単位で仕事を受ける時は、通常1時間あたり2万円~3万円程度をいただくことが多いです。
字面だけみると、「1時間あたり2万円~3万円」ってめちゃくちゃ多く見えますが、あまりに時間がかかる場合には単価をディスカウントしたり、○時間以降はいただかないといった措置をとることになったりと、時間制にしない方が儲かることも多いです。
(https://www.ccbengo.jp/report06/)
(https://www.dropbox.com/s/8z2uv3t69syed28/ccbengo_fee.pdf)
上記ツイートの報酬基準はコインチェック被害対策弁護団の報酬基準のようですので、同弁護団の基準をHPで確認しました。
弁護士の報酬は通常、はじめにもらう「着手金」と、おわりにもらう「報酬金」に分かれています。
同弁護団の着手金は「請求額が1000万円までの方は、2万円(消費税別)」とあります。
また、報酬金は「得られた「経済的利益」の10%相当額(税別)」とあります。
確かにツイートの指摘のとおりのようです。
しかしながら、着手金の説明にはクレイジーな一文がありました。
もうこの時点で私ならやりたくなくなります。
詳しくは⇒「3 提訴する際にかかるコスト」
で述べますが、裁判をやるにも裁判所にお金や郵便切手を納めなければなりません。
着手金の2万円に裁判所に納めるお金や切手代が含まれるとすると、ほとんどこれにつかう羽目になります。
そうすると、裁判が終わって報酬をもらうまでは実質無給ではたらくことになります。
うーん。
報酬金10%というのは聞こえはいいです。
1億円勝てば1000万円です。
同弁護団は6人の弁護士で構成されているようなので、一人あたり167万円くらいです。
167万円…
この事件は、下手すると最高裁までいきます。
最高裁まで何年戦うのかわかりません。
その上で167万円…
リップルが年末1000円になることにかけた方がはるかに効率がよさそう。
もちろん、これはあくまでも1億円勝った場合の算定にすぎません。
実際にどれくらいになりそうなのかは、⇒「4 勝率」とか「5 26万人の被害者?」で言及したいと思います。
もし、10億勝てば1億円。6人で割っても1667万円。このあたりまでいくとやる気がでます。でもここまでいくのかしら?
マネックスグループのCEOである松本大さんは、訴訟費用について
「最大でも10億~20億円と見積もっている」
と言及しています。
(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29406400U8A410C1EA5000/)
26万人いるNEM被害者の全体で、あるいは、今回のサービス停止で被害を受けた方々全体で(170万件程度のアカウントがあると言われています)併せて
「10億から20億」との試算。
10億勝つために何人の被害者を集めなければならないのでしょうか。
途方にくれてしまいます。
⇒次回につづきます