【第1回】コインチェック弁護団って儲かるの? URL
https://alis.to/me/articles/public/KBXLYV6xdDxB
コインチェック弁護団って儲かるの???
お金よりも好奇心とか名声とかそっちの事件類型じゃないかしら?
ほんとうに…儲かる…?
同じ弁護士として疑問に思ったので、分析してみることにします。
1 弁護士が通常期待したい報酬水準と弁護団の報酬基準→
第1回: https://alis.to/me/articles/public/KBXLYV6xdDxB
2 弁護団運営にかかるコスト→第2回
3 提訴する際にかかるコスト
4 勝率
5 26万人の被害者?
弁護団運営にかかるコストを忘れてはなりません。
弁護団とは、通常弁護士事務所の垣根を超えて、複数の弁護士が共同で受任し、沢山の被害者の対応をするための組織です。もともと存在する組織ではないため、弁護団の活動に必要な人的・物的コストをどうやってねん出するのかが問題となります。
コインチェック弁護団のほかには、原発被害者救済のための弁護団や安愚楽牧場の事件やカネボウの白斑事件などの消費者被害に対応する弁護団など、たくさんの弁護団があります。
この弁護団運営にかかるコストとしては主に以下のものが考えられます。
このうち、1〜3が主なコストで、4の弁護士の人件費については、通常、事件終了までもらえません。
弁護士は勝つかどうかわからない事件についてずっと手弁当ではたらくことが弁護団事件の特徴です。
弁護団は社会的な問題が起きた際に速やかに設置されなければなりません。
被害者に対して救済の途があることを一刻も早く明らかにし、不安な気持ちを和らげることが弁護士の責務です。
そのため、ホームページの開設はとにかく急いでもらう必要があります。
については、急ぎで作っていただき、だいたい30万から40万程度を弁護士たちが自腹を切って支払うことになります。
弁護士は法的な書面を作成したり事件解決に向けた調査・検討をすることが役割です。必要書類のコピーや郵送手続きは事務員さんにお任せすることになります。
については、だいたい1時間あたり1500円くらいの費用がかかります。
弁護団専従の事務員を雇った場合には月額20万円程度、単発で仕事を頼む程度であれば数万円程度の費用が生じます。
また、大規模弁護団の場合には、弁護団事務所を借りるケースもあり、その場合には賃貸物件の家賃が必要となります。
コインチェック被害対策弁護団は個人の事務所の住所が記載されているので、事務所自体は借りていないと思われます。
については、意外とばかになりません。
100人の依頼者がいるとすれば、100人に契約書や委任状を郵送しなければなりません。単純計算をすれば1回何かしらの書面を依頼者に郵送するだけで、92円✖️100で9200円かかります。
この点はネットで依頼者に閲覧してもらう形をとることができれば、費用の節約が可能です。
印刷費はどうしようもありません。裁判所には紙で書面を提出する必要があります。データ提出は認められていません。
弁護団事件では多くの被害者に対応する大量の書面の提出が必要になります。
しかも、裁判では同じ書面を複数提出することが多々求められます。
200枚とか300枚とか、そういったボリュームの書面提出はざらにあります。
また、相手方であるコインチェック社が提出した証拠については、弁護団宛に1部しか提出されないため、弁護団内部の複数の弁護士はそれぞれ自分の分をコピーしなければなりません。
カラーの証拠などもあり、印刷費だけで何万円もかかる場合もあります。
通信費としては電話代、FAX代程度であり、この点はつかっても数千円であり、たいしたことはありません。
コインチェック訴訟は東京地裁に係属されているため、遠方の弁護士が東京地裁に行くとなると交通費の負担も大きいところです。
コインチェック弁護団は滋賀の弁護士や大阪の弁護士がいるので、何回も裁判所に行くとなると、多額の交通費が必要になります。単純計算するために1回あたり往復で2万円だとしても、10回裁判所に行くとすれば、二人の弁護士で40万円かかることになります。
以上をふまえると、
弁護団を開設し維持・運営だけで100万円を超える実費が必要になります。その費用は依頼者からいただくことができなければ、弁護士の自腹です。
もちろん弁護士の人件費はどこからもでません。
弁護士のタイムチャージは1時間あたり2万円〜3万円程度とすることが多いのではないでしょうか。そうすると、弁護士は無給で何時間も何時間も働き続け、勝つかどうかわからない作業に終われます。
弁護団事件は、新たに社会現象となっているような事件に取り組むことが多いため、これまでとは全くことなった議論が必要になることもあり、結論がいまひとつ読めません。
暗闇のなかで勇気を出して一歩を踏み出さなければならない類型の事件です。
弁護士は通常の事件であれば、相談を受けた瞬間にだいたいの結論や落としどころがわかります。そのため逆算して費用をある程度定めることができますが、弁護団事件はそうもいかない面があります。
⇒次回に続きます
【第1回】コインチェック弁護団って儲かるの? URL
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